「……もし、そんな日が仮に来てしまった時は……彼に――風柱である、不死川実弥さんの手で俺の事を斬首していただきたいと思います」

その炭治郎の言葉を聞いた全員がその内容に耳を疑うのだった。


~どんなにうちのめされても守るものがある~


(おっ、お兄ちゃん……一体……何を言ってるの?)

どうして、お兄ちゃんがそんな事を言うのかがわからなかった。
お兄ちゃんが人を襲うなんてあり得ない事なのに、どうしてそんなお願いをしているの?
しかも、斬首して欲しい相手として、どうしてあの人を指名したの?
私や冨岡さんじゃなくて、どうして……。

「…………炭治郎。今の言葉で、君の覚悟と想いが私には痛いくらい伝わって来たよ」

だが、その炭治郎の言葉の真意を産屋敷は理解できたのか、とても哀しそうな表情を浮かべてそう言った。

「でもね、炭治郎。だからこそ、私たちは君のそのお願いを叶えてあげる事は出来ないんだよ。きっと……この場にいる者には誰も……」
「! でっ、ですが、それでは――――」
「だから、こうしよう」

産屋敷の言葉に戸惑い、そう声を上げようとした炭治郎に対して、産屋敷が言葉を続けた。

「暫くの間、君たち二人は、柱の誰かの監視下に必ずいてもらう事にする。そして、何かあった場合は、その対処をどうするかは、その柱に一任する。期間や担当にについては、またこの後、じっくり話し合ってから決定する。……それでは……ダメかな?」
「…………わかりました。それで……お願いし――」
『たっ、炭治郎!?』
「お兄ちゃん……っ!?」

産屋敷の妥協案を聞いた炭治郎は、一度庭先へと視線を向けた後、何処か申し訳なさそうにそう言葉を紡ごうとした。
だが、その途中で炭治郎が大きく体勢を崩した為、飛鳥が誰よりも早く炭治郎の身体を支えた。
その飛鳥の動きは、ここにいる他の人物に炭治郎を触られるのを嫌がるような、そんな動きだった。
そんな炭治郎の様子に驚いた禰豆子も傍に駆け寄ろうとしたが、上手く動くことが出来なかった。
先程、飛鳥が炭治郎の血鬼術を途中で止めさせた為か、禰豆子の身体は完全には治りきっていなかったようだった。

『……ばっ! 炭治郎、お前! やはり、無理をしていたな!!』
「……だっ、大丈……夫だよ。これ、くらい――」
『いい加減強がるのは、もうよせっ! もう、この体格を維持しているのもやっとなくせにっ!!』
「うっ……そっ、それは……」

そして、炭治郎の状態を再確認した飛鳥が怒鳴ると、炭治郎は言葉を詰まらせた。
事実、炭治郎の額には、脂汗がうっすらと滲んでおり、さっき見た時よりも明らかに顔色が悪くなっていた。
その原因は、間違いなくさっき使った血鬼術のせいだ。
血鬼術を使うという事は、炭治郎の血を消耗する事になるので、使用する血鬼術が強力な程、炭治郎の体力も削られるのだ。
いつもだったら、もう眠って体力を回復させていただろう。
にも拘らず、今は産屋敷たちと対話をする為にこの体格を維持した上で起き続けているのだ。
やはり、あの時もっと早く止めるべきだったと、飛鳥は後悔した。
その為、少しでも早く炭治郎の事を休ませたいと思った飛鳥は、炭治郎の代わりに産屋敷と話すべく、彼の事を一瞥した。

『…………現鬼殺隊ご当主よ。見ての通り、炭治郎は真面に話せる状態ではない。これ以上、こんな馬鹿げた事を続けるという事は、それはただの拷問と同じだ』
「! あっ、飛鳥! いっ……いくら何でも……そんな言い方――」
『炭治郎。お前は、少し黙っていろ。……もう、無視して喋るな』
「…………」

その飛鳥のあまりの言い方に炭治郎が非難するように声を上げたが、それでも飛鳥は気にする事なく話し続けた。
相手が鬼殺隊の現当主だろうが関係ない。
今の飛鳥は、この産屋敷に仕えているわけではないのだから……。
そして、今の飛鳥にとって、一番大事なものは、炭治郎だから……。
そんな飛鳥の気持ちが伝わったのか、産屋敷もコクリと頷いた。

「そうだね。炭治郎が人を襲わないという事は今ので充分証明出来たし……私も出来る事なら、体調が良くなった炭治郎と色々話をしてみたいと思っているからね。この件に関しては、今日はこれで終わりにしよう」
『やはり、ご当主様は、どの方々も聡明でらっしゃって助かる』
「ありがとう。君の名前は……飛鳥だったかな? ……何だか、君にそう言ってもらえると、昔からの古い友人に褒めてもらえているようで、私は嬉しく思うよ」
『! ……かっ、勘違いするな。わっ、私は……あくまでも炭治郎の身を案じているだけだ』

だが、そう言った飛鳥の声は、酷く動揺しているように禰豆子には何故か聞こえた。
そんな飛鳥の事は余所に産屋敷は、今度は禰豆子の事を見つけた。

「……禰豆子。それでもまだ、君たちの事を快く思わない者もいるかもしれない」

その産屋敷の言葉を聞いた禰豆子は、自然と居住まいを正していた。
辺りに穏やかで不思議な声が禰豆子の耳に染み込んできた。

「だからこそ、君も証明しなければならないよ。……これから、二人が鬼殺隊として本当に戦える事、役に立つ事を……」

その声を聞いていると不思議とふわふわとした気持にもなり、奇妙に心が高ぶっていくのも感じた。
これが鬼殺隊をまとめる当主の力なのだろうか?

「十二鬼月を倒しておいで。そうしたら、みんなに認められる。禰豆子の言葉の重みが変わって来るから」
「! …………私は……私とお兄ちゃんは、鬼舞辻無惨を絶対に倒しますっ!!」

そして、気が付いた時には、禰豆子はそう叫んでいた。
私の為に、鱗滝さん、冨岡さん、そして、お兄ちゃんまでもが命を懸けてくれているのだ。
だったら、私もそれに応えないといけない。
そして、私とお兄ちゃんと同じように鬼という存在のせいで苦しんだ、全ての人々の為にも……。

「私とお兄ちゃんが必ず! 哀しみの連鎖を断ち切る刃を振ってみせますっ!!」
「…………」

その禰豆子の言葉に対して、辺りは何故か静まり返った。
ただその中でも産屋敷と炭治郎だけは、優しい笑みを浮かべていた。

「……今の禰豆子には出来ないから、まずば十二鬼月を一人倒そうね」
「あっ、はっ、はい……」

そして、産屋敷にそう言われた途端、禰豆子は急に恥ずかしくなって顔が真っ赤になってしまった。
そんな禰豆子の様子を見た蜜璃は、まだ堪えているようだったが、何時吹き出してもおかしくない状態だった。
また、しのぶや、宇髄、悲鳴嶼までもが小刻みに肩を震わせている。
そんなにもおかしな事を言ってしまったのだろうか?
でも、そのおかげか、さっきまで張り詰めていた空気は緩み、初夏の爽やかな風が藤の花の香りを運んで来てくれた。

「……ここにいる鬼殺隊の柱たちは、当然抜きん出た才能がある。血を吐くような鍛錬で自らを叩き上げて死線を潜り、十二鬼月を倒している。……だからこそ、柱は尊敬され、優遇されてるんだよ。禰豆子も、口の聞き方には、気を付けるように」
「あっ……はっ、はい……」

産屋敷が微笑みながら、そう諭すように言った言葉に禰豆子は、素直に頷いた。
それを確認した産屋敷は、今度は、実弥と伊黒に向かって言った。

「それから、実弥。小芭内。あまり、下の子に意地悪をしない事」
「……御意」

実弥は、未だに目の前で起こった事に信じられないといった感じだったが、静かに日輪刀を鞘へと納めて片膝を付いた。
伊黒と言えば、俯いてそれ以上は何も言わなかった。

「…………よかった。これでもう……安心――」
「! おっ、お兄ちゃん!?」
『大丈夫だ。眠っただけだ』

そして、炭治郎が心底安心したようにそう言いかけたが、途端途切れた。
突然、目を閉じてしまったのだ。
それに驚いて声を上げる禰豆子に対して、そう飛鳥は諭した。

『……漸く、緊張の糸が切れたのだろう。暫くは、起きない』
「そっ、そう……」
(やっ、やだ! 可愛いっ!! 炭治郎くんのあの姿、可愛いわっ!!)

そう言った飛鳥の言葉は、炭治郎へと視線を向けた。
その言葉通り、炭治郎は本格的に眠りに入ったのか、飛鳥に預けていたその身体は、見る見るうちに縮んでいき、幼児体型になった。
スヤスヤと眠るその姿は、とても愛らしく、ほっぺは餅のように柔らかそうに見えた。
それを見た禰豆子も思わず触ってしまいと思ってしまうくらいで、蜜璃もその姿にときめいていた。

「……では、この話はこれで一旦終わり。禰豆子たちは下がっていいよ。……そうそう、柱合会議を始めようか。あと、二人の最初の預け先だけど……」
「でしたら、禰豆子さんたちは、私の――――」
「俺の屋敷で面倒をみようっ!!!!」
「!?」

産屋敷の言葉を聞いて、手を挙げてそう提案しようとしたしのぶの声を他の誰かが掻き消した。
それは、炎柱である、煉獄杏寿郎の馬鹿でかい声だった。

「そして、問題がなければ、竈門少年を俺の継子にしたいっ! そして、あわよくば俺の嫁にしたいっ!!」
「えっ? えっ!?」
「煉獄!? お前、正気か!? 何考えているんだよ!? 相手は、鬼だぞっ!?」

その突然の煉獄の言葉に禰豆子は、言われて意味がすぐには理解出来ずに躊躇い、宇髄が心底驚いたような声を上げた。
だが、それに対して、煉獄は不思議そうに首を傾げて見せた。

「ん? お館様がお認めになったのだから、別に何も問題ないと思うが?」
「そっ、それは、そうだけどよ……」
「それに! 俺は、竈門少年の言動に感動したっ! 俺は、今まであんな美しい血気術を見た事がないっ!」
「それは、俺様もだって!」
「では、他に何が問題がある!?」
「俺様もあいつの面倒がみたいんだよっ!!」
(えっ? そっちなの!?)

そして、予想外の宇髄の言葉を聞いた禰豆子は、さらに驚いた。
そんな禰豆子の事など置き去りにし、煉獄と宇髄の言い合いはさらに激しくなっていく。

「あんな派手な血気術を見せられたら、俺様が面倒を見ないわけには行かねぇだろ? 俺様の手でもっとド派手にしてやるぜっ! あと、こんだけ可愛かったら、俺様だけじゃなく、嫁たちもきっと喜ぶと思うしな♪」
「それを言うなら、千寿郎も負けてないっ! きっと、竈門少年とも仲良くなるし、愛でてくれるぞっ! その姿を想像しただけでも愛いっ!!」
『…………言っておくが、この姿であっても炭治郎の精神年齢は変わらないぞ』

そんな宇髄と煉獄のやり取りを見ていて何かを感じ取ったのか、そう飛鳥は釘を刺した。

『あと、炭治郎を嫁に出す気はない』
(ちょっと。飛鳥は、何を言ってるの!?)
「! ……そうか! 君が竈門少年の父親なのか! 挨拶が出来ておらず、すまないっ!!」
『っ!?』
「……そうか。……炭治郎と禰豆子は……飛鳥の子……だったのか……」
「そんなわけないですよっ!!」

そして、飛鳥の言葉を聞いて何を勘違いしたのか、煉獄がまた予想外の発言をした為、流石の飛鳥も固まってしまった。
また、そんな飛鳥の様子がよくなかったのか、同様に勘違いをしてしまった義勇がそうポツリと呟いた為、今度に禰豆子が声を上げた。

「他の柱の人たちはともかく! 冨岡さんは私たちと一緒に過ごしていた時期もあったんですから、変に納得しないでくださいっ!!」
「! すっ、すまない……」
「…………とりあえずなのですが、竈門くんと禰豆子さんは、私の屋敷で預かるという事でどうでしょうか?」

義勇が禰豆子に怒られているのを尻目に、しのぶは何とか話を戻そうと試みる。

「竈門くんもですが、禰豆子さんの身体の状態もまだ完治はしているとは言えないです。ですので、私の屋敷でちゃんと治療するのが、最善かと思います」
「……うん、そうだね。仮に二人が元気な状態だったら、炭治郎が希望していた実弥に任せようかと思ったけど……しのぶ。頼めるかな?」
「!?」
「はい。お任せください」

しのぶの提案に産屋敷は頷くとそう言った。
その言葉に彼に名指しされた実弥を含め、煉獄と宇髄、そして、義勇も驚いていた。
だが、お館様である産屋敷が決めた事に対して、誰も反論する事は出来なかった。
それをしのぶもよくわかっていたのか、彼女は嬉しそうにそう言うと、パンパンと両手を打ち鳴らして隠たちを呼んだ。

「彼らを私の屋敷まで連れて行ってください」
「はい! ……少し、失礼します!!」

しのぶの言葉を聞いた隠の二人がそう答えるとそのうちの一人は、禰豆子の事を背負った。
そして、もう一人が炭治郎を運び出す為、木箱と炭治郎の身体に触れようとした。

『! 触るなぁっ!!』
「ヒィ!!」

だが、その事に気付いた飛鳥が、威嚇とばかりに火の粉を放った。
それに驚いた隠は、思わず声を上げた。

「ちょっと、飛鳥! 危ないじゃない!?」
『うるさい。こやつらのせいで、炭治郎はこうなったも同じなのだ! こやつらは、信用出来ないっ!!』

その飛鳥の行動に対して、禰豆子が非難の声を上げると、そう飛鳥は反論した。
どうやら、先程の炭治郎が入った木箱を意図も簡単に実弥に奪われた事をまだ根に持っているようだった。

『炭治郎に触れていいのは、禰豆子と冨岡義勇だけだ! それ以外は、断じて私は認めないっ!!』
「それは、困りましたね。禰豆子さんはそんな状態でとても木箱を運べそうにもありませんし、私たちもこれから柱合会議がありますので……」
「そっ、そうだよ、飛鳥。……ここは、大人しく運んでもらって、早くお兄ちゃんを安全な所で休ませてあげようよ」

飛鳥のその気持ちは、よくわかったが、それ以上に早くここから離れて、炭治郎の事を休ませてあげたいという気持ちの方が、禰豆子は勝っていた。
だが、そんな禰豆子の言葉を聞いても折れないのか、飛鳥は首を縦には振らなかった。

『いや、絶対に駄目だ』
「じゃぁ、どうするのよ?」
『…………仕方ない。私が、炭治郎とお前を運ぶとしよう』
「えっ? でも、どうや――――!?」

そして、何処か観念したかのように溜息をついた飛鳥は、そう言った。
だが、禰豆子にはその言葉に意味がわからず、さらに口を開こうとした途端、目を疑った。
ついさっきまでそこにいたはずの飛鳥の姿は何処にもなく、一人の青年が立っていたから……。
炭治郎によく似た赤みがかった癖にある長髪の青年が……。

『……この姿なら、炭治郎もお前も問題なく、私が運べる。……禰豆子を私に渡せ』
「えっ? あっ、はい……」

そんな飛鳥の姿を見た全員が驚く中、飛鳥は特に気にした様子もなく、炭治郎を木箱の中へと優しくしまうと、そのままそれを背負った。
そして、そのまま禰豆子の事を背負っていた隠へと近づくと、禰豆子を自分に渡すように催促した。
その突然の出来事に隠は、飛鳥に言われるがまま禰豆子を飛鳥へと受け渡した。

『うむ……。では、屋敷までの案内を頼んだぞ』
「あっ、はい……」
『そして、現鬼殺隊ご当主よ』

そして、飛鳥は再び産屋敷へと視線を向けて口を開いた。

『まだ、どうしても炭治郎と直接話をしたいと言うのなら、少なくともあと一週間は待て。そしたら、炭治郎も目を覚ましているだろうから、屋敷まで来い』
「! おっ、お前! お館様に向かって!!」
「小芭内、構わないよ。私もある程度は運動する必要もあるから、それくらいを見計らって、しのぶの屋敷まで足を運ぶとしよう」
『あぁ……それで頼む。……ほら、行くぞ。さっさと案内しろ』
「あっ、はっ、はい!! こちらですっ!!」

その産屋敷の返事に飛鳥は満足したのか、そう言って再び隠に指示を出した。
飛鳥のその堂々した振舞を見た隠たちは、思わず居住まいを正すと、禰豆子をお姫様抱っこした飛鳥を案内し始めた。

「あっ、あの! 私は、あなたの事! 絶対に許しませんからね!!」

そして、飛鳥が移動し始めたのとほぼ同じくらいの時に禰豆子は、少しだけ身体を動かしてそう声を張った。
その視線の先には、実弥がいた。

「お兄ちゃんが許したとしても、私はあなたがお兄ちゃんにした事を許しませんからっ! また、いつか、必ず、あなたに回し蹴りをお見舞いしますから、覚悟しておいてくださいっ!!」
『……禰豆子。お前は、馬鹿か?』

そう言った禰豆子に対して、飛鳥は呆れたように息を吐いた。

『そんなものでは、まだ生温い。……お前がそれをやる時は、私の炎も付けてやるから安心しろ』
「…………」

だが、次に瞬間、真顔で飛鳥がそう言った為、実弥は暫くの間は彼らには近づかない方がいいと、静かに心の中でそう決めた。
こうして、柱合裁判は無事に終了し、禰豆子たちはしのぶの屋敷――蝶屋敷へと向かうのだった。









守るものシリーズの第44話でした!
ちょっと、煉獄さんたちの絡みが楽しすぎて、何処まで書くか悩みましたwww
初めに思いついた時は、煉獄さんも宇髄さんも特に乱入する事なく、蝶屋敷に言ってもらおうかと思いましたが、こっちの方が面白いかと思って書いてみましたwww
一番初めに浮かんだのは、煉獄さんが冨岡さんに「彼は鬼ではない。天使だ!」的な事を言ってもらう感じでした。
飛鳥は、何だかんだ言っても炭治郎くんと禰豆子ちゃんに対して、過保護だなぁwww
これにて、漸く柱合裁判のお話が終わりとなります!そして、次回からは、蝶屋敷でのお話となります。

【大正コソコソ噂話】
その一
本当だったら、冨岡さんも蜜璃ちゃんも炭治郎くんたちの世話に名乗りに出たかったのですが、煉獄さんと宇髄さんのやり取りが白熱しすぎたせいで、入る隙がありませんでした。

(……俺も……炭治郎の世話、したかった……)
(炭治郎くん、とっても可愛かったから、私もお世話したかったなぁ。けど、言い出せなかったわ……)

その二
スヤスヤと眠っている炭治郎くんの姿を見た悲鳴嶼さんは、猫みたいで可愛いと思ってました。
炭治郎くんのほっぺを見て「肉球みたいに柔らかそうだ」と思って、ずっと眺めてました。

その三
今回の柱合裁判のやり取りの結果、煉獄さん、宇髄さん、蜜璃ちゃんに至っては、炭治郎くんは完全に陥落させています。

「……思っていたが、やっぱり、敵が増えてしまった……」
「敵? 冨岡さん、やっぱり嫌われているんですか?」
『炭治郎。そこは、触れてやるな……』
「えっ? 飛鳥、どういう事?」


R.3 8/6