『待ってたぞ。アッシュ』

自分と同じ紅の長髪の彼が言う。
アッシュは自分と同じ存在である彼の名を呼ぶ。

「ローレライ」

~silent lapse~

永遠に続く純白に世界にアッシュとローレライがいた。

『ずっと前から呼びかけてたのに、気付くのが遅いぞ。アッシュ』
「ルークは何処だ」

ローレライの小言を無視し、アッシュは言う。

『……こっちだ』

ローレライはアッシュに背を向けると歩き出した。
アッシュは、その後について歩いた。
暫くすると、突然ローレライが止まった。
だが、そこにルークの姿は何処にもない。

「ルークは何処にいる?」

少しイラつきながらアッシュはローレライに問いかける。

『……ここにいるぞ』

ローレライは振り向くと腕を何かを抱きかかえるような形にした。
すると、夕焼けのような赤い光がそこに集まってきた。
赤い光が人の形へと変わっていく。
光が消えると、ローレライの腕の中には、あいつがいた。
夕焼けのような赤い長髪が静かに揺れている。

「ルーク……」
アッシュはルークに手を伸ばし頬をに触れる。
ルークの頬はとても柔らかく、暖かかった。

『本当だったら、今頃ルークは間違いなく死んでいた』

ローレライは静かに言う。

『だが、ルークの魂が消える寸前に何とか私の中に取り込むことが出来たのだ』
「何でルークの髪が長くなっているんだ?」

俺がルークと最後に別れたときは、確かにルークの髪は短かった。
だが、今のルークは俺と同じ位の髪に長さになっていた。

『……ルークの新しい身体を作るのに、アッシュの情報を使ったからだ』

だからか。アッシュは再びルークを見る。
長髪のルークもいいが、短髪のルークのほうが似合うとアッシュは思った。

「てか、いつまでルークを抱いているつもりだ?早くルークを返せ」
『それはいいが、ひとつ言っておきたいことがある』
「なんだ?」

アッシュは不機嫌な顔で言った。
一刻も早くルークを連れて帰りたい。
そう思っていたアッシュだった。





* * *





『もしかしたら、このままルークは目を覚まさないかもしれない』
「!!」

ローレライが発した言葉に、アッシュは耳を疑った。

「ルークが目を覚まさないだと! それはどういう意味だ!?」

やっと、ルークを見つけたのに……。
そんなことあってたまるか。

『ルークの身体は私の一部で作ったから、もう音素乖離(フォニムカイリ)を起こすことはない。だが、まだ新しい身体とルークの魂が調和していない。ルークの魂は私の一部とは少し異なっているからな』
「だったら、俺はどうすれば……」
『そなたは何もしなくていい。ただ、ルークの身体と魂が完全に調和するのを待てばいい。それがいつになるかは、わからない。……そなたは、待つことは出来るか?』
「…………」

ルークはいつ目を覚ますか、わからない。
その間俺はずっと待つことが出来るだろうか。

「正直、俺はルークが目覚めるまで待っている自信はあまりない……」
『…………』
「だが、俺はそれ以上にあいつと共に生きたいと思っている。だから、俺はルークが目を覚ますまで待ち続ける」

もう、二度とルークを失いたくない。
アッシュの翡翠の瞳は、それを強く物語っていた。

『……それを聞いて、安心した』

ローレライは優しく微笑むと、ルークをアッシュに手渡した。
アッシュはルークを受け取ると、ルークの重さをグッとかみしめた。

『あと少し、来るのが遅かったら、私はルークを連れて音符帯に行くつもりだった』
「…………」
『……ルークの願いを叶えることが出来て、よかった』
「? 今、何か言ったか?」

ローレライが言ったことを聞き取れなかったアッシュが聞き返してきた。
だが、ローレライはその問いには答えず、音符帯へと上っていった。

「……ったく、なんなんだ」

ふと、アッシュはルークへと視線を向ける。
ルークは自分の腕の中で気持ちよさそうに眠っている。
やっと、ルークを捕まえた。
もう、何があっても離すものか。
そう思いながら、アッシュは地上に戻っていった。








ルークとアッシュが再会しました!!
でも、ただ再会させるのはつまらないのであんな風に書きました。(^-^;)
第七音素(セブンスフォニム)が異なるはずないのに……。


H.18 7/7