アッシュはゆっくりと扉を開けた。
目の前に広がった光景は……。
~silent lapse~
アッシュは部屋を見て絶句した。
(何故だ……?)
何故、この部屋は……。
「驚いたか?」
アッシュは部屋の奥を見た。
開けられた窓のところにガイは立ち、外を眺めていた。
「……この部屋、お前がいたときから全然変わってないだろう」
(そうだ……)
ここは自分が暮らしてた時と少しも変わってなかった。
あいつがここを七年も使っていたのに……。
ここにあるものは、ほとんどが俺のものだった。
「ルークの奴、決して新しいものを欲しがらなかったんだ。自分がレプリカだってわかってから、尚更そうだった」
「…………」
ガイは苦笑していた。
でも、時々見せる苦笑とも違って見えた。
「じゃあ、俺もそろそろ帰るわ」
そう言うと、ガイはアッシュの横を通り、部屋の扉のドアノブに手をかけた。
「…………んだろ」
「うん? なんか言ったか?」
よく聞き取れなかった、ガイはアッシュのほうを向いた。
「……お前は、俺よりあいつが帰ってきたほうがよかったんだろ、と言ったんだ」
「…………」
ガイだけじゃない。
母上も、父上も、あいつの仲間も、ナタリアでさえそれを望んだはずだ。
誰も、心の底から俺を望んではいない。
「……確かに、俺はルークが帰ってくることを望んでた……」
ガイの瞳がさっきより険しいものに変わった。
「けどな、さっきジェイドの話を聞いて思ったんだよ。それは、ルークの命でもあるって」
「…………」
「だから、俺はお前を受け入れる。ルークが守った命だからな」
(そうだ……)
俺は、あいつに二回も命を救われた。
一回目は、預言を覆すために。
二回目は、今回だ。頼んでもないのに……。
「まあ、あんまり深い意味じゃないから。じゃあ、またな」
そう言って、笑ってガイは部屋を出た。
「……あいつが帰ってきて心の底から喜ぶ奴を俺は知ってる」
言葉に出しては言ってなかったが、あいつがアッシュを好きだとわかってた。
その感情をアッシュじゃなくて自分に向けて欲しかったのに……。
今でも、あいつの笑顔が目から離れない……。
「……ルーク」
ガイは、風に掻き消される程の小さな声で言った。
* * *
ガイが部屋から出て行った後、アッシュは再び部屋を見渡した。
何度見渡しても、部屋にあるものはほとんどが自分がこの部屋を使っていたままのものだった。
いくらなんでも、ずっと血の付いた服を着ているわけにはいかないと、思ったアッシュはクローゼットを開けた。
さすがに、ここだけは、自分が使っていた服は残っていたなかった。
アッシュはその中から黒っぽい服を選んで着た。その服は、あまり着られなかったのか、新品同様だった。
どうしても、アッシュは他の白い服を着る気はしなかった。
白い服は、あいつのトレードマークみたいなものだ。
それに黒い服のほうが長年着ていたせいか落ち着くのだ。
着替え終わると、ふとアッシュは机の上を見た。
そこにあったのは、どうも古めかしい本だった。
アッシュはその本を手に取った。
(これは、あいつの日記……?)
この部屋で服以外の唯一あいつのものだ。
アッシュの手は自然と日記を開き、アッシュは彼の日記を読み始めた。
なんか、アッシュが自己嫌悪に陥ってるみたいになっちゃったよ。
今回は、ガイを登場させてみました。
何気にガイもルークが好きだったいいなと、思い書きました。
やっと、アッシュがルークの日記を読み始めましたよ(^-^;)
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