俺にとって、一番心残りなこと……。
それは……。

~silent lapse~

(ここは、静かだな……)

ルークの目の前に広がっているのは、何処までも続く純白、
音も何も聞こえない静かな世界だった。
ふと、ルークは視線を下に向ける。
自分の腕の中にいる彼に目を向ける。
(アッシュ……)

俺と完全同位体であり、俺の元になった人。
アッシュはまるで眠っているように見えた。
しかし、アッシュの体は冷たかった。
もう、あの綺麗な翡翠の双眸を自分には向けられないことをルークは知っていた。

(なんで……)

なんで、あの時俺はアッシュを残して行ってしまったんだろう。
俺が残って神託の盾(オラクル)騎士団のレプリカ兵と戦っていればアッシュは……。

「っ!」 急に足に力が入らなくなり、ルークは膝をついた。
咄嗟に、アッシュを落とさないようにアッシュを強く抱きしめた為、アッシュを落とさずにすんだ。
ふと、ルークは自分の手を見る。
すると、ルークの手は微かに透けて見えた。
それは、手だけでなく、体の至る所で透けて見えた。

「……そろそろ、限界かな?」

ルークは、ゆっくりとアッシュを地面に降ろした。

「もう少し、アッシュの傍にいたかったな……」

もう、ルークはアッシュの傍にいることは出来ない。
もうすぐ、自分は消えてなくなるからだ。
だが、不思議とそれに対して、怖くはなかった。
自分が消えることで、アッシュが生きることが出来るとわかっているからかも知れない。
アッシュが生きていられるだけで嬉しかった。

「……アッシュ、俺ひとつだけ心残りがあるんだ」

自分にとって、一番心残りなこと……。
それは……。

「アッシュに、まだ好きって言ってないこと」

ずっと、アッシュに言いたかったのに……。
決して、言うことが出来なかった。
あの時に、なんで言わなかったのだろう。
ちゃんと、伝えられたら、もう何も思い残すことはなかったのに…。

「だから、今言うな……。アッシュ、好きだよ」

ルークは笑顔で言った。
だが、ルークの目に自然と涙が溜まり、そして流れ落ちた。

「……もっと、アッシュと一緒にいたかったな……」

ルークは、アッシュに触れようとした。
しかし、ルークの手はアッシュに触れることなく、通り抜けてしまった。
もう、アッシュに触ることも出来なくなってしまった。
少しだけ、悲しい気持ちになった。

「……アッシュ、みんなのこと……よろしくな……」

もう、ルークは声を出すもの難しくなっていた。
何一つ、痛みは感じないのに声にならなくなっていた。

(アッシュ……、さよなら……)

そう思った瞬間、ルークは消えてしまった。
そして、その場所はまた静かな世界へと戻った。
まるで、初めからルークがいなかったみたいに……。








音素乖離(フォニムカイリ)の現象があまりわかりません!!
こんなカンジかな、と想像しつつ書きました。
今回はルークばっかり(アッシュもいるけど)になってしまった。


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