「好きだよ、アッシュ」
「俺もだ、ルーク」

二人は見つめ合い、そして優しい口付けを交わした。

~愛しき人形~

「? ……どうしたの? アッシュ?」

突然アッシュがルークの唇から離れたので、ルークは不思議に思ってアッシュに聞いた。

「……なんか……嫌な予感がする」
「? それって、どういう――」

ルークの言葉が言い終わる前にアッシュはルークを抱えてベッドから離れた。
すると、さっきまでアッシュがいた位置に凄まじい水流が現れた。
アッシュが気付かなければ、きっと俺もそれを喰らっていただろう。

(でも、なんでいきなりこんなものが?)


「いきなり、何しやがるんだ! このクソ眼鏡が!!」

アッシュが怒鳴る方向を見ると、そこにはジェイドの姿があった。
その隣には驚いたような顔をしたガイの姿もあった。

「いや~♪ 病室に入った途端、お二人のラブラブさを見せ付けられたのでね~♪」

アッシュに対してジェイドはさわやかに笑みを浮かべてそう言った。

「それに、あなたが目を覚ましたら、一発譜術(ふじゅつ)をブチかまそうと決めてましたので~♪」
「だっ、旦那! あっ、あれは冗談じゃなかったのか!?」

ジェイドの言葉にガイは驚いたような顔を浮かべながらそう言った。

「いやですね~♪ 私がそんな冗談を言うとでも思ってたんですか?」

そんなガイに対してジェイドはまたもさわやかな笑みでそう言った。
このとき、ガイはジェイドの恐ろしさを再認識した。

「とっ、まあ。それだけ動ければ、もう心配はいらないようですね~♪」
「ふざけるな! 大体、俺が気付かなかったら、ルークにも当たってたかもしれないんだぞ!!」

あくまでも、悪びれることなく言うジェイドのアッシュは怒鳴った。

「それは、ご心配なく♪ ルークには当たっても効果がないようにしてありますから♪」
「…………」

あまりにもジェイドが爽やかにそう言ったので、さすがのアッシュも怒鳴るのをやめた。

「どうやら、目が覚めたようだな」
「!!」

突然、聞こえた声に全員が驚き、声が聞こえたほうに視線を向けた。
そこには、漆黒の髪に藍色の瞳を持った彼。

「ヴァリアス!」

アッシュはヴァリアスの姿を見ると、自分の背中にルークを庇うように立った。

「何しに来た!」
「……何しにって、人聞きが悪いなぁ。今日は約束した日じゃないか」

ヴァリアスの言葉に、アッシュは正直驚いた。
じゃあ、自分はあれから一週間も眠っていたのか。
ルークが不安になるのも無理はないか。

「どうやら、このゲームはお前の勝ちのようだな、アッシュ」
「ゲーム……?」

ヴァリアスの言葉にルークは不思議そうに首を傾げた。
そんなルークにアッシュは「なんでもない」と優しく言った。
すると、ヴァリアスはルークたちにゆっくりと歩み寄った。

「……ルーク、すまなかった」
「えっ……?」

いきなり、ヴァリアスたルークに謝ったので、ルークとアッシュは驚いた表情を浮かべた。

「そなたには、辛い思いをさせてしまった。……許して欲しい」
「ヴァリアス……」

ヴァリアスは本当に申し訳なさそうにそう言った。
その声はルークにはとても哀しそうにも聞こえた。

「……おい。俺には謝罪はねえのか?」
「ああ、そうだったな。すまなかった」
「って、なんでそんなに投げやりな言い方なんだ!!」
「いいじゃねぇか、ちゃんと謝ったんだし♪」
「ふざけるな!!」

病室に再びアッシュの怒鳴り声が響き渡った。

「では、お邪魔にならないうちに、私は戻ろう」
「あっ……! 待って!!」

ヴァリアスが光に包まれた瞬間、ルークはとっさにヴァリアスの手を掴んだ。
その行動にアッシュとヴァリアスは驚いた。
ヴァリアスの身を包んでいた光が消える。

「えっと……なんて言ったらいいかわかんないけど……」

彼に何か言わなければいけないのに、言葉がうまく見つからない。

「……寂しくなったら、いつでも俺のとこに来て。俺、話し相手くらいにはなれるから!」
「!!」

ヴァリアスはルークの言葉に驚いた。

「……ありがとう、ルーク」

ヴァリアスは俯き、とても小さな声で呟いた。
ルークが手を離すと、ヴァリアスは再び光に包まれ、消えた。
消える寸前、ヴァリアスの瞳から一粒の涙が零れ落ちたことには誰も気付かなかった。

「では、私たちもおいとましますね♪」
「えっ? ちょっ、ちょっと旦那!?」

ジェイドはガイの腕を掴むと、さっさと病室を後にした。
その為、この病室にはルークとアッシュだけとなった。

「……なんで、あんなこと言った」
「えっ?」

ルークはアッシュの顔を見た。
アッシュは少し不機嫌そうな顔をしていた。

「あいつに、話し相手になってやるってなんで言った?」

アッシュの声も少し不機嫌そうに聞こえた。

「……だって、ヴァリアスはずっと独りで寂しかったんだと思ったから」
「寂しい?」

アッシュの言葉にルークは頷いた。
きっと、彼はずっと寂しかったんだと思う。
ずっと、独りで音符帯にいたのだから。
だから、こんなことをしてしまったのだろう。
だから、俺が話し相手になってあげたら、寂しく無くなるんじゃないかと思ったのだ。

「だからって、それはお前じゃなくてもいいじゃねぇか!」
「…………もしかして、アッシュ。……妬いてるのか?」
「なっ!?」

ルークの突然の質問にアッシュは何も言えなくなった。
どうやら、図星だったらしい。
「大丈夫だよ。俺はアッシュが一番好きだから♪」
「だっ、誰が、お前なんかに////」

ルークの言葉にアッシュの顔が赤くなっていった。
それをルークはただ嬉しそうに見ていた。








人形シリーズ第27話でした!!
さすが、ジェイドさん!ちゃんとアッシュに譜術をブチかましましたよwwww(おい!!)
そして、ヴァリアスがルークに謝りましたよ!
アッシュには投げやりなヴァリアスが何気に好きです(えっ?)
そして、次回がいよいよ最終話になります。お楽しみに!!


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