これからは、ずっとお前の傍にいる。
お前がそれを望むなら……。

~愛しき人形~

アッシュが退院してから、一ヶ月が経った。

「よお! ルーク!」
「あっ! ガイ!!」

自分の部屋にルークがいると、ガイが部屋に入ってきた。
部屋の様子を見る限り、アッシュは外出中のようだ。

「どうしたんだよ、ガイ?」
「いや~。今日、ルークが休みだって聞いたからデートのお誘いに――」
「なりませんわ!」

そう叫びながら、ナタリアが部屋に入ってきた。

「ガイ! また、あなたは一人抜け駆けをして! 今日はわたくしとルークが一緒に過ごすんですわよ!!」
「ぬっ、抜け駆けとは、人聞きが悪いぞ、ナタリア!」
「ルーク♪」
「うわぁ!」

声と共にアニスがルークの胸に飛び込んできた。
ルークは倒れないように何とか、アニスを支えた。

「ビックリした~。危ないだろ、アニス;」
「へへっ、ごめんなさ~い♪でも、ルークったら受け止めてくれると思ったから♪ルーク、今日こそアニスちゃんと遊ぼう~♪」
「アニス! ずるいぞ!! 俺だって、ルークに抱きつきたいのに!!」
「ガイ! あなたはもう少し言葉を慎みなさい!!」
「そうだ、そうだ♪」

そんな三人のやり取りをルークは苦笑してみていた。

「おやおや、ここに来るといつも賑やかですね~♪」
「ルーク、おはよう」
「ティア、ジェイド」

ティアとジェイドが一緒に部屋へと入ってきた。

「まあ、どうしてティアはジェイドと一緒なんですの?」
「さっき、ちょうど入り口のところでティアとあったので」
「あ、あの、ルーク……」
「? ……なに、ティア?」
「あの……その……もし、よかったら今日の休みは……///」

ジェイドが他の三人と話している間にティアは何とかルークに話し掛けていた。

「あ~~っ!! ティア、ずるい!!」

それに気付いたアニスが叫ぶ。

「そうだぞ! ティア! 抜け駆けは許さないぞ!!」
「ガイ! それはあなたが言う資格はないじゃなくて!!」
「いや~本当に、賑やかですね~♪」

ジェイドはどこか楽しげにそう言った。
確かに、さっきまで静かだったのに、今はとても賑やかになっていた。

「で、ルーク。今日は誰と一緒に過ごしますか?」
「えっ?」

ジェイドの言葉にティアたちは一斉にルークを見た。

「俺と過ごすよな、ルーク?」
「わたくしとですわよね、ルーク」
「違うよ~アニスちゃんとでしょ☆ルーク♪」
「……私と過ごしてほしいな///」
「私はいつでも構いませんよ♪」
「えっと、その……」

ティアたちに一斉に言われて、ルークは困った顔をした。

「ルーク♪」
「えっ……?」

誰かの声が聞こえたかと思った瞬間、ルークは身体が浮いているような感覚に陥った。

「ヴァ、ヴァリアス!?」
「久しぶりに、遊びに来たぞ、ルーク♪」

それはヴァリアスがルークを抱きかかえたからであった。

「ずるいぞ! ヴァリアス!!」
「うるさいなぁ~。何か文句あるの?」

ヴァリアスが笑顔でそう言ったが、明らかに目は笑っていなかった。
その笑みはジェイドが時折見せる笑みより遥に怖い。

「……いえ、ありません」
「だよな~。よって、ルークは私と過ごしことに決定だな♪」

本当は文句があるが、言ったら殺されそうな気がしたのはここにいる誰もが感じた。

「あっ、あのさぁ、ヴァリアス」
「う? 何だ、ルーク?」

ルークが何か言いにくそうな表情を浮かべた。

「あのね、もう今日は約束があるんだ」
「「「「「「えっ?」」」」」」

ルークの言葉に全員が見事にハモッた。

「その通りだ!!」

声が聞こえたかと思うと、ヴァリアスの手の中にいたルークの姿が一瞬のうちに消えてなくなった。

「アッシュ~。なにするんだよ~;」
「やましい! ルークが優しいからといってつけあがりやがって!!」

消えたと思ったルークの姿はアッシュの手の中に移っていた。

「大体、もうルークには手を出さないと約束したはずだ!」
「確かに、手を出さないとは約束したが、ルークのことを諦めると言った覚えはないぞ」

アッシュの言葉に対して、ヴァリアスはケロッとした顔でそう言った。

「ちっ! ……もういい。いくぞ、ルーク」
「えっ? ちょっ、ちょっと、アッシュ!?」

アッシュはルークを抱えたまま、部屋を出て行った。

「あ~あ。またルークをアッシュに取られちゃった~」
「さすが、アッシュですね。私たちの行動を完全に読んでいますよ」
「だあぁ! 俺は一体、いつになったらルークとデートできるんだぁ!!」





* * *





「うわぁ! 綺麗だなぁ~」

ルークとアッシュはタタル渓谷に訪れていた。

「……お前は本当にここが好きだな」
「うん、俺ここの景色が好きなんだ。それに、ここは始まりの場所だから」

ここから全てが始まったのだ。
世界と俺たちの運命を賭けた旅が……。

「ねぇ、アッシュ」
「? ……なんだ?」

アッシュの綺麗な翡翠の瞳が自分へと向けられる。

「……夜になるまで、ここにいてもいい?」
「ダメだ」

ルークの言葉に、アッシュはキッパリと言った。

「なっ、なんでだよ!」
「そんな時間までここにいたら、魔物が出現するだろ」

いくら、ここにいる魔物が弱いからと言っても、魔物には変わりないのだ。

「だって……」

アッシュの言葉に、ルークは暗い表情を浮かべる。

「? ……なんだ?」
「だって、俺アッシュと一緒にセレニアの花が見たかっただもん」
「…………」

セレニアの花は月の光の下じゃないと咲かない花だ。

「あと、それに……」
「なんだ、はっきり言え」

ルークの態度に少しじれったさを感じたアッシュはそうルークに言った。

「それに、魔物が出ても、アッシュと一緒だったら、アッシュが守ってくれるだろ?」
「なっ!! なに恥ずかしいこと言ってやがるんだ!! お前は///」

ルークの言葉に、アッシュの顔は赤くなった。

「なんだよ! アッシュがはっきり言えって言ったから言ったんだろ///」
「だっ、誰もそこまで言えとは言ってない!!」
「わっ、わかったよ;もう、諦めるから……」

セレニアの花が咲くまでここにいたかったけど仕方がない。
アッシュがダメだって言うのだから。
そんなルークを見たアッシュは溜息をついた。

「……仕方ないな。セレニアの花が咲くまでだぞ」
「…本当? ありがとう! アッシュ!!」

アッシュの言葉が嬉しくて、ルークは笑顔でそう言った。
こいつは、すぐにコロコロと表情が変わる。
俺の言葉一つで、こいつを傷つけることも、笑わせることも出来る。
それは、俺だけの特権だ。

「ルーク……」

アッシュは、思わずルークを抱き締めた。

「アッシュ……?」

ルークは突然のアッシュの行動に驚いたような声を出す。
「ルーク。この前、お前のことを好きだといったがあれは嘘だ」
「えっ!?」

アッシュの言葉に、ルークは傷付いたような表情を浮かべた。

「俺は、お前のことが好きじゃない。……お前を愛してる」

お前の姿が、声が全てが……。
愛おしくてたまらない。

「アッシュ……。へへっ、嬉しいなぁ」

嬉しい。
アッシュに好きと言われたときよりも。
今の方がずっと……。

「俺も、アッシュのこと愛してるよ」

ルークは笑顔で答えた。
たぶん、今まで一番言い笑顔だろう。

「ルーク……」

アッシュはさっきより少し強くルークを抱き締めた。
ルークもそれに答え、アッシュを抱き返す。
二人はずっと、そのままでいた。
セレニアの花が咲くまでずっと……。






Fin...


人形シリーズこれにて完結です!!
なんか、うまくまとめっているよな、いないような。まとまったことにしよう。うん。
なにやら、ガイさんが少しヒステリーを起こしていましたが、気にしないでください(えっ?)
そして、ヴァリアスは結局ルークのこと諦めなかったよ。ダメじゃん!!ヴァリアス!!
えっ?なんで、ローレライはこれに参加してないかって??それは私にもわかりません!!(おい!!)
ただでさけ、ルークはみんなに愛されてるのにまた1人ライバルが増えたよ。頑張れ!アッシュ!!
そして、やってしまいました!ルークへの愛の告白!!パソコンで打ち込んでいるから、もうダメでした///
ここまで、付き合ってくださって本当にありがとうございました!!
次回作もどうぞよろしく!!


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