アッシュとの初めての公務。
それは、嬉しさとドキドキで胸がいっぱいになってしまった。
~愛しき人形~
アルビオール搭乗中、ルークはずっと目が泳いでいた。
その原因はアッシュにあった。
屋敷を出てからずっとアッシュはルークの手を握ったままだった。
そして、それは今も続いて、まったく手を放す気配はないようだ。
だから、ルークはずっとドキドキしていた。
ふと、ルークは視線を横に移す。
そこにあるのは、彼の横顔。
自分に手を握っていないほうの手は肘掛に肘を置き、顎に添えていた。
その姿はとても綺麗で……。
見ているとさらに、ドキドキしてきたので、ルークは視線を逸らした。
「ご主人様、顔が真っ赤ですの! 熱でもあるんですの?」
そんなルークを見てミュウは心配そうに、ルークに問いかけた。
「……本当だな。大丈夫か、ルーク?」
ミュウの声にアッシュはルークのほうを見て、心配そうに言った。
「う、ううん/// だっ、大丈夫///」
それに、ルークは慌てて答えた。
「? そうか、ならいいんだが……」
そう言うと、アッシュはルークから視線を離した。
(なっ、何なんだろう……?)
この気持ちは何なんだろうか。
一体、俺にとって彼はどんな存在なんだろう。
* * *
「よう、ルーク! 元気だったか?」
アルビオールは、コーラル城付近の海岸線に上陸した。
アルビオールから降りると、そこには見慣れた金髪と青い瞳の彼がいた。
「ガイ!」
ルークはガイへと駆け寄った。
「ガイ、久しぶり! ガイも同じ公務だったんだ!」
「ああ、マルクトでのレプリカ施設の責任者は俺だからな」
ルークの言葉にガイは嬉しそうに笑って答えた。
そう、今日の公務は、レプリカ施設の建設の状況確認だ。
ルークたちが戻ってくる前から話は挙がっていたが、戻ってきてから話は急速に進み、建設が出来るまでになった。
それまでキムラスカ側の責任者はナタリアだったが、今はルークとアッシュになったのだ。
すると、突然ガイはルークの腕を引っ張り、ルークを抱き締めた。
「ガ、ガイ!?」
「ほんと、よかった! ルークが元気そうで……」
ガイが言葉を言い終わる前にガイに剣が飛んできた。
それをガイは間一髪のところで避けた。
「あっ、危ないじゃないか! 何するんだ、アッシュ!!」
「やかましい! それが会って最初にすることか!!」
ガイは剣を投げた張本人、アッシュに怒鳴るがアッシュも負けじと怒鳴った。
「いいじゃないか! 久しぶりに俺の可愛いルークと再会したんだから!!」
「ふざけるな! 誰がお前の可愛いルークだ!!」
二人は火花を散らしながら睨み合った。
その様子をルークはあたふたしながら見ているしか出来なかった。
「あっ、あの。俺、先に見てくるな;」
たぶん、二人にルークの声は届かないと思いながらも、ルークはそう言って二人から離れた。
* * *
「はあ~。何なんだろう二人とも」
どうして、二人はあんなに仲が悪いのだろう。
二人が仲良くしてくれたら、もっと楽しいのに……。
「ご主人様! 海がとてもキレイですの!」
隣にいるミュウが海を見て嬉しそうに飛び跳ねた。
「……そうだな」
ルークは瞳を閉じて耳を澄ました。
すると、波の音が心地よく聞こえ、海から吹く風がルークの髪を優しく揺らした。
「……なぁ、ミュウ」
「みゅう? なんですの、ご主人様?」
ミュウを見ると、不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
「……俺とアッシュさんってどんな関係だったんだ?」
「みゅう?」
ずっと、疑問だった。
他のみんなに聞いても必ず口を濁した。
そして、決まって「ルーク自身が思い出さないと意味がない」と言うのだ。
それは、自分でもわかっている。
けれど、知りたいのだ。
俺と彼の関係を……。
「ご主人様とアッシュさんは、レプリカと被験者の関係ですの!」
ミュウは自分が聞きたいこととは違うことを言った。
それは、もう知っている。
俺が聞きたいのは……。
「アッシュさんの隣にいるご主人様はいつも笑ってたですの! アッシュさんも笑ってたですの! きっと、ご主人様はアッシュさんのことが大好きだったんですの!」
「えっ……?」
ミュウの言葉にルークは驚いた。
俺は彼のことを……。
「ミュウもご主人様を笑顔にしてくれる、アッシュさんが大好きですの!」
ミュウは笑ってそう言った。
「……そうか」
やっと、わかった。
自分が彼に対する気持ちが何なのか。
ルークは足を彼のところへ動かす。
伝えたい。
記憶は戻ってはないけれど、この気持ちを彼に伝えたい。
人形シリーズ第22話でした!!
ルークがアッシュに対する気持ちに気付きました!
次あたりに、アッシュに告白か!?
それにしても、今回はちょっとガイとアッシュで遊び過ぎたかな?
なんかルークに対してだけ、仲が悪くなったら面白いと思いますvv
にっしても、アッシュも鈍感だよ;
H.18 12/19