最近、ルークは同じ夢ばかり見る。
その夢で、ルークは必ず誰かと約束をする。
約束を交わして、ルークは誰かと別れる。
そして、その誰かは必ず最後に死んでしまう。
交わされた約束は果たせずに……。
それは、俺にとって哀しい夢だ……。

~愛しき人形~

「ご主人様、朝ですの! 起きるですの!」

ミュウはルークの腹に乗ってぴょんぴょん飛び跳ねた。

「うっ……」

ルークの瞼がゆっくりと上がる。
朝日が急に目に入り、眩しい。

「……おはよう、ミュウ」
「おはようございますですの! ご主人様!」

ルークが挨拶をすると、それに元気よくミュウは答えた。
最近、ミュウには全然会ってなかったが、数日前から屋敷に来てずっとルークの傍にいた。
ルークはベッドから降りると、着替えを始めた。
ふと、隣にあるベッドに視線をやる。
そのベッドを使っている彼はもう起きているのかこの部屋にはいなかった。

「ルーク、起きたか?」

着替え終わると同時に、部屋の扉が開きアッシュが現れた。

「アッシュさん、おはよう!」
「ああ、おはよう」

ルークは挨拶をすると、彼はそれに優しく返してくれた。

「お前は本当に朝が弱いな……」
「わっ、悪かったな! 早起きが出来なくて///」

屋敷に戻ってきたルークの身体は元通りになり、前のように朝が弱くなった。
食事は、今まで食べなかった分を取り戻すかのように、よく食べるようになった。

「準備が出来たなら、さっさと食事に行くぞ」
「えっ? アッシュさんは、もう食べたんじゃないの?」
「いや、まだだ。お前が起きるのを待っていたからな」

俺が起きるのを待っててくれたんだ。
そんな、些細なことなのに妙に嬉しい。

「ほら、さっさと行くぞ」
「うっ、うん!」

ルークはアッシュに駆け寄り、応接間へと向かった。





* * *





「ルーク、準備は出来たか?」
「うん、こっちはOKだよ」

食事を終えると二人はすぐに部屋に戻り、公務の準備を進めていた。

「……俺初めてだなぁ。アッシュさんと一緒に公務に行くなんて」

そう、今日は二人揃って同じ公務を行うのだ。

「ねぇ? 今までに俺とアッシュさんが一緒に公務をしたことあったの?」
「ああ、一度だけな」
「……そっか」

きっと、そのときの公務は楽しかったのだろうなぁ、とルークは思った。
今、そのときの記憶はないが、彼と公務に行けるのが嬉しくて仕方がないのだから。
少しでも、長く彼の傍にいられて嬉しい。
でも、それはなんでだろう。
自分はどうして、彼の傍にいるとこんな気持ちになるのだろうか?

「……どうかしたのか、ルーク?」
「えっ? あっ、ううん。なんでもないよ///」

心配そうな顔でアッシュがルークの顔を覗き込むと、ルークの顔は赤くなった。
自分と同じ顔なのに、彼の方が綺麗に整った顔だ。
時々、その顔に見惚れてしまう。

「たっ、ただちょっと考え事をしてただけだよ」
「そうか。お前でも考え事をするんだな」
「ひどいなぁ、それどういう意味だよ!」
「言葉通りの意味だ」

アッシュはルークの言葉に笑って返す。
不思議な気がする。
俺は彼のことを忘れてしまったのに、彼は俺に優しく接してくれる。
俺は彼に責められてもいいはずなのに、彼は決してそれをしなかった。
むしろ、俺に笑いかけてくれた。
その笑みは優しくて、ずっと見ていたいものだ。
それに見る度に、もっと彼のことを知りたいと思った。
彼の全てを知りたいと……。

「ご主人様。アッシュさんが外に出て行っちゃいましたけど、一緒に行かなくていいんですの?」
「えっ?」

ミュウの問いかけにルークは初めて、彼がこの部屋からいなくなっていることに気が付いた。
ルークは慌てて部屋から出た。
すると、部屋を出るとすぐ近くに彼が立っていた。
彼は少し不機嫌そうな表情をしていた。

「遅い! 一体、いつまで待たせる気だ、お前は!!」
「ご、ごめん。つい、ぼ~っとしてて;」

ルークは苦笑を浮かべながら、アッシュに謝った。

「……もういい。さっさと行くぞ!」
「えっ? あっ、ちょっと、アッシュさん!?」

アッシュはルークの手を握り、そのまま歩き出した。

(あれ……?)

なんだろう……?
俺はこれを前にも体験したような気がする。
彼が俺の手を握るなんてことは初めてのはずなのに。
それに、どうしてだろう?
彼がただ俺の手を握っているだけなのに、すごくドキドキしてしまう。
自分の顔がどんどん赤くなっていくのがわかる。
彼がこっちを振り向くことはないと思うが、ルークは彼に顔を見られないように俯いて歩いた。
そして、その状態はアルビオールに乗るまでずっと続いたのだった。








人形シリーズ第20話でした!!
気が付いたら、もう20話ですねvv正直、驚いています!!
これから、アッシュはどういう行動にとるのだろうか?(ものすごく、他人事みたい;)


H.18 11/29