見つけた。
私がずっと欲しかったものだ。
必ずアレを手に入れる……。

~愛しき人形~

「おはよう。アッシュ」

朝日に照らされるルークの髪。
それによって、本当に燃えている炎のように見えた。

「おはよう、ルーク」

アッシュがルークの微笑みかける。

「珍しいな。お前が俺より早く起きるなんて。……明日は、雨かもな」

「なっ! それどういう意味だよ!! だったら、一週間前からずっと雨じゃんか」

ルークはふて腐れて言った。

確かに、この一週間ルークはアッシュより早く起きていたが、雨は降っていなかった。

「俺だって、早起きできるように努力しているんだ!」

ルークはそう言っているのを聞きながら、アッシュはさっさと着替えた。

「わかったから、さっさと食事に行くぞ」
「あっ、待てよ! アッシュ」

結局、朝早く起きてもアッシュに置いてかれるルークだった。





* * *





「……ごちそうさま」

食事を食べ終わったルークがナイフとフォークを置く。

「あら? ルーク、まだ残っていますよ? 最近よく残しますね?」
「! えっと……なんか、あまり食欲がなくて;」

心配そうに問いかけるシュザンヌにルークは苦笑した。

「お前この一ヶ月ずっと残してるだろ。好き嫌いしてたら、背伸びないぞ」
「なっ! それは、アッシュだって同じだろ。アッシュだって、タコ食えないくせに」
「……っく、それはそうだが……実際俺のほうがお前より身長は高いぞ」
「う゜っ……」

確かに、最近アッシュは俺より身長が高くなっていた。
完全同位体なのにどうしてだろう?

「これこれ、アッシュ。あまりルークをいじめないの。……ルーク、具合が悪いのだったら、無理して食べなくていいのですよ」

シュザンヌは優しく微笑みルークに言った。

「……いえ、頑張って食べます」

身長のことを言われたからか、ルークは再びナイフとフォークを取り食べ始めるのだった。

「…………」





* * *





「あ~! もうお腹いっぱいだよ」

部屋に戻ると、ルークはベッドに倒れ込んだ。

「……大丈夫か? 無理して食っていたように見えたが?」
「えっ? あっ、大丈夫だよ!! ……それより、アッシュは今日何処で公務なの?」

ルークは苦笑すると、無理矢理話の話題を変えた。

「……今日は、ユリアシティだ。そう言うお前は何処だ?」
「俺は、シェリダンなんだ」
「……そうか。だったら、今日の公務はお前のほうが先に終わりそうだな」

口を動かしながらアッシュは、テキパキと公務の準備をする。
アッシュの準備が完了したと同時に、ノックの音が聞こえメイドが部屋に入ってきた。

「失礼します。アッシュ様、アルビオールが到着しました」
「わかった、今すぐ行く」

アッシュがそう返事をすると、メイドは一礼をし速やかに部屋を出て行った。

「じゃぁ、俺は先に出る」
「うん。……いってらっしゃい、アッシュ」

アッシュの言葉にルークは笑顔で返す。

「……いってくる」

ルークの頭を撫でるとアッシュは部屋を出た。
遠くのほうでメイドたちが「いってらっしゃいませ」の声が聞こえた。
その声を聞いた後、ルークは部屋から飛び出した。
向かう先は、浴槽にある洗面所。
そこに着くと途端、ルークは先程食べたばかりの食事をすべてもどしてしまった。

「ルーク様!!」

近くを通りかかったメイドが悲鳴のような声を上げた。

「奥様! ルーク様が!!」

メイドがシュザンヌを呼びに走る足音が廊下に響く。

「…………やっぱり変だ」

ルークは誰にも聞こえない声で呟いた。





* * *





「ルーク!!」

ルークのことを聞きつけたアッシュは、予定より早く帰ってきた。

「あっ、アッシュ! どうしたんだよ?」

勢いよく部屋に入ると、そこには少し顔色がよくないルークがベッドに座っていた。

「どうしたもない! お前が吐いたと聞いて俺は……」

キョトンとした顔でルークがアッシュを見る。
そんな顔を見ていたら、怒っているのが馬鹿らしくなった。

「……熱はあるのか?」
「えっ? 熱なんてないよ。……ちょっ、アッシュ!?」

アッシュはルークに近づき、ルークの額を触った。

「! ひどい熱じゃねぇか! 寝てろ!!」

そう言うと、アッシュはルークを無理矢理ベッドに押し込んだ。

「いいか! 絶対大人しく寝てろ!!」

アッシュはルークに背を向け、部屋を出ようとした。

「アッシュ、何処に行くんだ?」
「ちょっと、街に薬を買ってくる。……ついでに、何か甘いもんも買ってきてやる」
「いいよ、別に。それに……」
「? なんだ?」
「なっ、なんでもない……」
「……すぐに戻ってきてやる。だから、大人しく待ってろ」

アッシュはそう言い残し、部屋を出て行った。

(なんだろう?)

この胸騒ぎは?
とても嫌な予感がする……。











そのルークの予感が的中したのか、その後アッシュが部屋に戻ってくることはなかった。








人形シリーズ第2話でした!!
ルークとアッシュがなんだかとても微笑ましく書いてしまいました。
しかも、アッシュが行方不明になっちゃいました!!
本当だったら、ルークのほうが行方不明になりそうなのに(笑)


H.18 7/28