ルークが消えてしまい、アッシュが立ちは悲しみにくれていた。

『久しぶりだな、アッシュ』

そんな重い空気だと知らずに、ローレライがアッシュたちの前に現れた。

~愛しき人形~

『何かあったのか?』

アッシュたちの只ならぬ様子を見たローレライが問いかけた。

「……たった今、ルークは光となって消えました」

この中で一番冷静なジェイドがローレライの問いに答えた。
ジェイドの言葉にローレライは驚いた顔をした。

『! ルークが消えた。そんなバカな……』
「バカなだと? 実際、さっきまであいつはここにいたんだ! 俺の目の前で消えたんだぞ!!」

ローレライの言葉にアッシュは吼えるように言った。
さっきまで、ルークの手を包んでいた感触は、まだ残っている。
あれは決して幻なんかではない。

『……いや、そういう意味ではない。あまりにも、ルークが消えるのが早すぎる』
「……それはどういうことですか?」

ローレライの言ったことに疑問を感じたジェイドがローレライに問いかけた。

『我がこの症状に陥ったときは、今の姿になるまでには一年以上もかかった』

ジェイドの質問にローレライは淡々と答える。

『だが、ルークはそれを半年が経つか経たないくらいで終わらせた。これは、あまりにも異常すぎる』

ローレライが驚いた理由がやっとわかった。
ローレライだけがルークと同じ体験をしていた。
ローレライのときとルークのときでは期間があまりにも違いすぎるのだ。
まるで……。

『まるで、その音素(フォニム)が誰かに操られているみたいだ』
「! そんなことが出来る奴がいるのかよ!?」

ガイはローレライの言葉に驚きながら言う。

「……たぶん、奴だ」
「? ……奴って?」

アッシュの言葉にアニスは首を傾げた。

「ヴァンだ」

ヴァン以外、他に思い浮かばなかった。
ヴァンなら、こんなことも出来るだろう。

『残念だが、それはきっと違うだろう』
「! 何故だ!!」
『《栄光を掴む者》の魂はこの世界から完全に消滅しているからだ』
「だったら、一体誰がルークを!」
『それがわかれば、苦労はしない』
「…………」

部屋の中に再び重い空気が漂いだした。

「……思ったのですが……」

そんな空気を取り払うかのようにジェイドが話を切り出した。

「フェレス島で戦ったあの少年は何も関係ないのでしょうか?」
『少年?』
「はい。漆黒の髪に藍色の瞳の少年です。私たちの譜術(ふじゅつ)攻撃も通常攻撃も彼には効きませんでした。ですが、何故かルークの攻撃だけは通用したんです」

それに、レプリカだからといって、あんな能力が身につくだろうか。
ジェイドは彼に会ってからずっと疑問に思っていた。

『……漆黒の髪に藍色の瞳………まさか!!』

ローレライは何かを思い出したかのように言った。

『アッシュ! 我と共に来い!!』

ローレライはアッシュの手を強引に掴んだ。

「な、なんだ! 行き成り! 何処へ行くんだ!!」

アッシュはローレライの手を振り解こうとしたが、思った以上に強く握られていて、解けなかった。

『ルークのところだ』
「何?」

ローレライから思っても見ない言葉が返ってきた。
だって、もうルークは……。

『我の予想が当たっていれば、まだルークは生きている』
「……本当か?」

ルークはまだ生きている。
それが真実だったらどれだけ嬉しいか。

『ああ。だが、時間がない。早くしないとルークは……』

ルークは死ぬと、ローレライは言いたいのだろう。

『……時間がない。さっさと行くぞ』

ローレライがそう言うと、ローレライとアッシュは光に包まれて消えた。

「な、何だよ、ローレライの奴。アッシュだけを連れて行って」

自分も行きたかったのにと、ガイは不満を言う。

「仕方ないでしょ。あの二人しか行けない場所だということでしょ」

そんなガイを見てジェイドは呆れたように言った。

「あの二人しか行けない場所って、つまり……」
「ええ。おそらく、ルークがいる場所は音符帯だということですよ」





* * *





やっと、手に入れた。
男の手の中には、次第に夕焼けのような赤い光が集まってきた。
そして、それは見る見るうちに人の形へと変わっていく。
今、男の腕の中で眠っているのは、名を《聖なる焔の光》と称す者。
このときが来る頃を、男はどれだけ待ち望んでいたか。
ルーク、もうそなたは私のものだ。
誰にも、そなたを渡さない……。








人形シリーズ第15話でした!!
今回、いつも余裕たっぷりのローレライが焦っていますねvv
やっぱり、ルークが絡むと、変わっちゃうんですよ~^^
さて、やっとルークを狙ってた黒幕の登場です!!


H.18 10/30