……ク。ルー……ク。
誰かが俺の名前を呼んでいる。
ガイ? ジェイド?


それとも……。

~愛しき人形~

『ルーク』

ルークはゆっくりと瞳を開けた。

「アッシュ……?」
『ルーク、そなたは寝ぼけているのか?』

ルークは声の持ち主をよく見た。
アッシュと同じ燃えるような紅の長髪に翡翠の瞳。
アッシュに似ているけど、どこか大人びた顔つきだった。

「ローレライ?」
『そうだ』

ローレライは優しく頷いた。

(傷は……)

ルークは腹を触った。
だが、腹にあった傷は綺麗になくなっていた。

『安心しろ。傷は、完全に治しておいた』

ローレライがそう言ったが、ルークの表情は晴れなかった。

『? ……どうかしたのか、ルーク?』

ローレライはルークに問いかけた。

「……最近、俺の身体がおかしいんだよ」
『…………』
「なぁ、ローレライ。あんたなら、知ってるんだろ! 俺の身体に何が起こっているのか……」

ルークの声は震えていた。

『ルーク、これから話すことを目を逸らさないで聞いて欲しい』

ローレライは優しく言った。
その声はどこまでもルークを気遣っている声だった。

「……うん、わかった」

ルークは力強く頷いた。
それを聞いてローレライは重い口を開いた。





* * *





「そっ、そんな……」

ローレライの話を聞き終わったルークは愕然とした。
自分の身体にそんなことが起こっているだなんて……。

『……すまなかった』
「えっ?」

突然ローレライが謝ったので、ルークは驚いた。

『我がもっと早く気付いていれば……』

ローレライはとても哀しそうな顔でルークを言った。

「別にいいよ。気付かなかった俺もバカだし……。それより、ローレライ。早く地上に戻りたいんだけど?」
『…………』

ルークの頼みにローレライは暗い表情になった。

「? どうかしたのか?」

不思議そうにルークはローレライを見る。

『……ルーク、我と共に音符帯(ここ)にいないか?』
「えっ?」
音符帯(ここ)にいれば、少しは症状の進行を抑えることが出来る』
「ありがとう、ローレライ。でも、今の俺の身体の状態を知ったら、少しでも長くアッシュといたいんだよ」

ローレライが自分のことを心配してくれているのは本当に嬉しい。
でも、俺はアッシュの傍にいたい。
少しでも、長く傍にいたい。
そんなルークに対して、ローレライは溜息をついた。

『……わかった。なら、一つ条件がある』
「条件?」
『アッシュたちに、今のルークの身体について話すこと』
「そっ、それは……」
『ルークから話せないなら、我が話してもいい』

アッシュにこのことを話す。
このことを知ったら、アッシュはきっと怒るだろうなと、ルークは思った。

『それがダメなら音符帯(ここ)にいなさい』
「……わかった、だから早く戻して」

ルークはローレライの条件を呑むことにした。

『……わかった。では、行こうかルーク』

そう言うと、ローレライはルークに手を差し伸べた。
ルークはその手を取った。
すると、二人は光に包まれて音符帯から消えていった。

















「ルーク!!」

応接間に入るとまず目に飛び込んできたのは、アッシュだった。
そして、この部屋にティアたちがいることに気付いた。

「ただいま、みんな」

アッシュたちはルークの近くにやってきた。

「まぁ、ルーク。もう、大丈夫なんですか?」
「うん、もう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、ナタリア」

心配そうに尋ねるナタリアにルークは笑ってみせた。

「たくっ、俺がどれだけお前を心配したと思ってやがるんだ!!」
「うん。ごめんな、アッシュ」

ルークはアッシュに微笑んでみせた。

「…………」
「? ……どうしたの、アッシュ?」
「いや……なんでもない」
「なんだ? アッシュ、お前ルークに微笑まれて照れてるのか?」
「バッ//そんなわけねぇだろ///」

ガイにからかわれたアッシュは顔が赤くなった。

「ごめん、俺ちょっと疲れたみたいだから、もう休むわ」
「えっ~! これから、ルークと遊びたいと思ってたのに~~!」
「アニス、ダメよ。ルークに無理させたら」
「ぶ~~! わかってるよ~~!!」

ティアに注意されたアニスは少し不機嫌そうな顔をした。

「だったら、俺も行く」
『それは出来ぬ』

ルークについていこうとしたアッシュをローレライが止めた。

『そなたたちに話がある。ルーク以外はここに残れ』
「…………」
「そう言うことらしいし、俺一人で行くね」
「お、おい! ルーク!!」

アッシュが声をかけたときにはすでにルークは応接間から出て行った後だった。

「……で、話はなんだ?」

不機嫌そうにアッシュはローレライに言った。

『話は長くなる。だから、座れ』

ローレライにそう言われてアッシュたちは椅子に座った。

「で、一体何なんだ?」
『……お前は、我に対していつも喧嘩腰だな』

ローレライは呆れたように言った。

(当たり前だ!!)

俺はルークの傍にいたかったのに。
ルークに聞きたいことがあったのに。
アッシュはローレライを思いっきり睨みつけてやったが、ローレライはそれを無視した。

『話は……ルークのことだ』
「!!」

ローレライの言葉にここにいる誰もが固い表情になった。
そして、ローレライは重い口を開いた。

『説論から先に言う。ルークはもう長くは生きられない』








人形シリーズ第11話でした!!
ローレライあっさりとルークにフラれましたvv
ローレライはどちらかと言うとアッシュに近い存在だと、私は思っています。
そう考えると、アッシュに負けたローレライはいったいどんな気持ちなんだろう??
きっとかなり、複雑ですよねvv
後、アッシュがローレライに喧嘩腰に話すのを何気に気にしてますよvvローレライさんはvv


H.18 10/14