(……タイガー、もう家に着いちゃったのかしら? 全然見つからないんだけど………) 一旦虎徹と別れたネイサンだったが、虎徹の事が気になり元来た道を引き返して虎徹の事を捜していた。 すぐに見つかるだろうと思っていたネイサンだったが、虎徹の姿を中々捉える事ができずにいた。 既に自宅に着いているのなら何も問題ないのだが、ネイサンの不安が収まる事はなかった。 (ちょっと、電話でもしてみようかしら……) そう思ったネイサンは一旦車を停車させると携帯電話を取り出して虎徹へと電話を掛けようとした。 その時、車から数メートル離れた建物に人影が見え、それが虎徹である事にネイサンは気付いた。 一安心したのも束の間で虎徹の様子がおかしい事に気付き、ネイサンは青ざめた。 虎徹一人だと思っていたのだが、良く目を凝らしてみるともう一人見知らぬ男の姿があり、しかもその男が虎徹の事を襲っているのだ。 それは、まさにネイサンが想像していた嫌な予感が的中してしまったのだ。 そして、その瞬間、ネイサンは無意識のうちに車から降り、虎徹の許へと駆け出すのだった。 〜神様ゲーム〜 「ファイ……ネイサン……」 絶体絶命の時に突如姿を現した人物の名を虎徹は不思議そうに見つめると呟いた。 正直、彼女が何故ここにいるのか虎徹には理解できなかった。 あの時は、俺がネイサンのところまで走っていく事ができたから遭遇する事ができたのだ。 けど、今回はそれができなかったのに、どうして彼女はここにいるのだろう? 「ちょっと、タイガー! 大丈夫!? 立てる?」 「えっ? あっ、あぁ……」 そんな事を虎徹が考えているとは知らないネイサンは、すぐさま虎徹の許へと駆け寄るとそう言って虎徹へと手をを差し出す。 それに虎徹は少し戸惑いつつもそう答え、その手を取って何とか立ち上がった。 「………悪ぃ。けど……何でここがわかったんだ? もうてっきり帰ったかと………?」 「あんた、気付いてないとは思っていたけど、やっぱりね。……あたし達の後をずっとつけている車がいたのよ。それが、あんたが降りた途端、いなくなったら気にもなるでしょうが?」 「えっ? そっ、そうだったの……?」 (全然……気付かなかった……) そんな前からあの爆弾犯につけられていたなんて……。 いつもだったら、そんなのすぐに気付くのに、そこまで俺は落ち込んでいたのか……。 「とにかく! 話は後! お説教は後でたっぷりしてあげるからっ!!」 「おっ、お説教は勘弁……! あぶねぇ!!」 ネイサンの言葉に引き攣った笑みを浮かべた瞬間、虎徹は表情を一変させた。 それは、自分達とは反対車線からあのパワードスーツが飛び出しきて、車を弾き飛ばしているのが見えたのだった。 そして、虎徹がそう言ってネイサンの車を盾に伏せたのと、パワードスーツがバルカン砲を乱撃させたのはほぼ同時だった。 「! ちょっ、ちょっと、何よ、あれ!?」 それを見たネイサンは驚きのあまり声を上げた。 「あんた、単に暴漢に襲われたんじゃないの!?」 「だあっ! ちげぇよ!! つーか、なんでそうなるんだよ!!」 「だって、あれを見れば誰だってそう思うんじゃない?」 「う゛っ……; まぁ、確かに……そうかもしれねぇけどさぁ……」 ネイサンの言葉に虎徹は返す言葉が見つからなかった。 言われてみれば、確かにあれだけ見られればそうかもしれないと……。 そして、そんなやりとりをしている間にも、ネイサンの車は銃弾によって撃ち抜かれ、どんどんスクラップへと変貌していく。 「あ〜〜。ネイサン、悪ぃ; すっげぇ高そうな車なのにさぁ……;」 「そんなの今はどうでもいいわよ! 車なんてまた買えばすむけど、あんたの命はお金では買えないでしょうがっ!!」 「ネイサン……」 あの時言えなかった事を虎徹は申し訳なさそうに言うとネイサンはそう言って虎徹を一喝した。 その言葉にこんな状況にも関わらず、虎徹は嬉しさからジーンとしてしまった。 そんな間にも車体にはいくつもの銃弾が被弾していた。 カバーが吹っ飛び、右後輪も被弾し、車体がガクンと傾く。 すぐに左後輪も被弾し、さらにその衝撃でボンネットが開いて跳ね上がった。 そして、その嵐のような銃撃は、予報もなく突然止むのだった。 「ん?」 「ん〜……弾切れかしら?」 「! ちょっと、待……」 「!!」 様子を確認しようとネイサンがそっと車から顔を出したところをそう言って虎徹が止めようとした瞬間、車体横から青い炎が吹き抜けた。 それに驚いたネイサンはすぐさま顔を引っ込め、免れた。 「なっ、何よ! あの炎は!! ……もしかして、あの男が一連の焼死事件の犯人じゃないの?」 「えっ? あっ、いや……あいつは……」 「絶対そうよ! とっ捕まえて吐かせてやるわ!!」 「! おっ、おい! 待てって!! ……っ!!」 そう全てを確信したかのように言ったネイサンの言葉に聞いた虎徹は、それを否定しようと口を開いた。 だが、ネイサンはその言葉には耳を貸さずに勢いよく立ち上がるとパワードスーツへと向かって行ってしまった。 ネイサンのその行動に驚き、止めようと虎徹も立ち上がろうとしたが、足に思うように力が入らず、失敗してしまった。 (やべぇぞ……) あのパワードスーツから放たれる炎はネイサンの炎より強いのだ。 このままだと、あの時のように……。 「ファイヤー!!」 まさに虎徹が考えていたその時、ネイサンは指先に炎を宿して、パワードスーツに攻撃を仕掛けたところだった。 そして、ネイサンの赤い炎はあの時と同じようにパワードスーツの青い炎に呑み込まれてしまった。 「うっ、嘘でしょ!!」 「! あっ、あぶねぇ!!」 それに驚いてあの時同様にネイサンは立ち尽くしてしまった。 それを見た虎徹は、何の迷いもなくNEXT能力を発動させると、ネイサンを抱きかかえて炎から逃げた。 「あんな下品な武器が、あたしの炎より強いなんて……やっぱりあいつが犯人なわけ!? ……って、タイガー!!?」 パワードスーツの攻撃に悔しそうにそう言ったネイサンの表情はすぐに一変する。 ネイサンを抱きかかえて逃げ、再び彼女を地に降ろした瞬間、虎徹がそのまま地面へと崩れ落ちたからだった。 その表情は、先程までとは比べ物にならないくらい苦痛で歪んでいた。 「ちょっと、あんた! 一体どうしちゃったのよ!?」 「……っ! ……やっぱ……思ってたより……きついなぁ……これ……」 「やっぱ? ……って、あんたこうなることわかってたの!?」 「あぁ……。前……にも……似たような薬……盛られた事……あったしなぁ……」 「!!」 そう言った虎徹の言葉でネイサンは全てを理解した。 虎徹があの男に盛られたという薬の効果がどんなものかを……。 「あんた馬鹿! こうなることわかっていて、何で能力を使ったのよ!?」 「しゃぁねぇだろ? ……か……身体がさぁ……勝手に……動いちまったん……だから……よ…………」 「っ!!」 怒鳴るネイサンに対して苦笑雑じり虎徹は、途切れ途切れにそう言った。 それを聞いたネイサンは思わず瞠目した。 忘れていた。タイガーは根っからのヒーローであることを……。 タイガーは自分の身に危険が迫ろうとも決してNEXT能力を使わない。 誰かを助ける為だけに彼はその能力を使うのだ。 そう、だからさっきもの何の躊躇いもなくNEXT能力を発動させたのだ。 あたしを助ける為に……。 あたしのせいで、今タイガーはこんなにも苦しんでいるのだ。 「? ……ネイ……サン?」 すると、ネイサンは虎徹を抱きかかえると虎徹を安全な場所まで運んで優しくその場へと降ろした。 そして、そのまま再び何処かへ向かおうとするネイサンの姿に虎徹は不思議そうにそう口にした。 「タイガー。あんたはここにいて。あれは、あたし一人で何とかするから!!」 「一人でって……おい! 待てって! ネイ……っ!!」 そう言い残してネイサンは再びパワードスーツの許へと走り去っていく。 それに驚いた虎徹は、ネイサンを引き留めようとしたが、その途端身体に激痛が走りその手を下してしまった為、ネイサンを止める事は出来なかった。 (くっそぅ……。こいつはぁ……予想以上に……きつい……ぞ……) 爆弾犯の言葉を聞いた瞬間、虎徹なこの事に気付いていた。 己に使われた薬が対パワー系NEXT用の物であることに……。 通常のこういった薬であれば、NEXT能力を発動させて細胞を活性化させて治癒力を高めれば大抵薬の効果を和らげることが出来る。 だが、対パワー系NEXT用は、その力を利用して薬の効能も併せて高められてしまうのだ。 その為か、先程までは酷い眠気と怠さに襲われていただけだったが、それに加えて今は少しでも身体を動かそうものなら激痛が走るようになった。 そして、それは時間が経つにつれてどんどん酷くなっていくのもよくわかる。 正直、今の俺は何の戦力にもならないだろう。 けど、知っているんだ。あのパワードスーツは、ネイサンだけじゃ止められねぇ事を……。 あん時だって、俺と二人がかりでやっと止められたのだ。 このままだと、二人共やられてしまう。 少しでもいい。あのパワードスーツの動きを止められれば……。 『虎徹! 大丈夫かっ!?』 そう虎徹が考えていたその時だった。 虎徹の目に闇に溶け込むような漆黒の髪と藍色と金色のオッドアイが飛び込んできたのは……。 神様シリーズ第3章第7話でした!! きゃああっ!虎徹さんがさらに大変な事態になってしましました!! 本編でもそうでしたが、虎徹さんはあれだけ能力使うのを渋っていたのに、ネイサンがピンチになると何の躊躇いもなく使ってしまうのが印象的だったので、ここでもやらかした結果、こんな展開になってしましましたwwww そして、2番目にやって来たのはクロノスでした♪バニーちゃんはまだかっ!? H.26 2/6 次へ |