「ぬおおぉぉぉっ!」 ダイヤモンドマンに向かって虎徹はワイヤーを飛ばすと、それを見事に引っ掛けた。 「よっと! もうこっちのもんだっ!!」 そう言うと虎徹は一気にワイヤーを手繰り寄せようとしたが、空中でダイヤモンドマンが手刀でワイヤーを切断した。 「ああっ!?」 「じゃぁな!」 ワイヤーが切れた反動で虎徹はその場に尻餅をついた。 そんな虎徹を見てダイヤモンドマンは飛び去ろうとしたが、ジャンプしてきたバーナビーによって右足を掴まれた。 「!!」 「てやああぁぁぁ!」 続いて虎徹もジャンプし、ダイヤモンドマンの左足にぶら下がった。 「やめろ! 放せ!!」 虎徹とバーナビーが両足にぶら下がれたダイヤモンドマンは二人を振り落とそうと、蛇行しながら飛行する。 「逃がすかよぉっ!!」 それに振り落とされないようにしっかり掴まって、虎徹がそう叫んだその時だった。 『能力終了、三十秒前』 マスク内にデジタル数字が表示され、能力終了のカウントダウンが始まったのだった。 〜神様ゲーム〜 「おい、ヤバいぞっ! もうすぐ能力が切れるぞっ!!」 そう虎徹は、わざとバーナビーに向かって言った。 そう言えば、犯人であるダイヤモンドマンが地上に降りる事を虎徹はわかっていたからである。 「わかってますよっ! ……どうしてわざわざ敵の前で…………」 そんな虎徹の考えを知らないバーナビーは、イラついたようにそう言葉を返す。 すると、ダイヤモンドマンは虎徹の予想通り、地上へと降り立ち虎徹達へと向き合った。 「お前ら能力切れちゃうのか? じゃぁ、最後に遊んでやるよ!」 「…………なら、お言葉に甘えてっ!」 虎徹はそう言うとダイヤモンドマンに向かって、拳を思いっきり振るった。 だが、あの時と同様、ダイヤモンドでできたその身体は、ビクともしなかった。 「! かたっ……」 「ヘヘン♪」 そんな虎徹の様子を見たダイヤモンドマンは、ニヤリと笑った。 「ハアアァァッ!」 その隙をバーナビーが逃すわけもなく、上空からキックを放つ。 キックは見事にダイヤモンドマンに命中するが、やはり微動だにしなかった。 「ふふっ♪」 「「!?」」 「誰も僕には勝てないんだよ!!」 虎徹とバーナビーの攻撃を受けても微動だにしなかったことにダイヤモンドマンは得意げにそう言った。 『ちょっと! 何とかしなさいよっ!!』 「言われなくても、わかってるよっ!!」 マスクから聞こえてくるアニエスの声にそう虎徹は答えると、ダイヤモンドマンに目にも止まらぬ速さでパンチを繰り出していく。 そして、バーナビーも同じくキックを繰り出していくが、それでも尚ビクともしなかった。 『あぁっと! タイガーとバーナビーの力でもダイヤモンドの硬さにはお手上げかっ!?』 「ヒーローでも無理なんだ! 僕は世界一強いんだっ!!」 ――――お〜い、虎徹。やっぱ、こいつ絞めていいか? (だあっ! 駄目に決まってるだろうがっ!?) ――――ちぇ……。 (舌打ちすんなっ! トキ!!) マリオの実況を聞き、満足そうにそう言ったダイヤモンドマンの言葉にクロノスが笑ってそう言ったのが虎徹には聞こえてきた。 それに対して虎徹は慌ててそう言うと、クロノスが不満そうに舌打ちをしたので、さらに虎徹はツッコミを入れる。 (……落ち着け、鏑木虎徹。バニーの攻撃に合わせるんだっ!) こいつを倒すには、バニーと同時に攻撃しなければ、あのダイヤモンドを砕けないのだ。 能力が切れる時間が刻々と迫り、タイマーの数字が赤く点滅しだす。 『五秒前、四、三……』 (そろそろだ……) スーツから流れるアナウンスを聞いた虎徹は、自らヒーロースーツを操作し、《GOOD LUCK MODE》を発動させる。 『GOOD LUCK MODE』 『GOOD LUCK MODE』 「!?」 虎徹のヒーロースーツの右腕が変形を始めたとほぼ同時にバーナビーの右足も変形しだす。 『三、二、一……』 「今だ、バニー! うおおぉぉぉりゃゃゃゃ!!」 「はあああぁぁぁ!!」 アナウンスを聞き、虎徹はそう叫ぶと一気にダイヤモンドマン目掛けて拳を繰り出す。 虎徹の声にバーナビーもダイヤモンドマンに突撃する。 虎徹のパンチとバーナビーのキックは、同じタイミングで繰り出され、ダイヤモンドマンは両者に挟まれた。 「「はあああぁぁぁぁっ!」」 虎徹とバーナビーの咆哮と共に二人の能力の最後の輝きを放つ。 その眩い光の中にダイヤモンドマンが包まれる。 『TIGER & BUNNY OVER AND OUT!』 「!!」 そうヒーロースーツからのアナウンスが響いた直後、ダイヤモンドマンの顔面に罅が入った。 そして、その罅が徐々に大きくなり、ダイヤモンドの破片が辺りに飛び散って素顔を露出させながらポーリーは倒れた。 「…………よしっ!」 『いいぞ! お二人さん!!』 虎徹とバーナビーの能力が切れ、身体の発光が消えた時、斎藤から大音量の内線が響いた。 「凄い機能ですね、これ! パワーがアップするんだ」 『いや! パワーは何も変わらない』 「えっ!?」 フェイスシールドを上げ、変形した足を見てそう言ったバーナビーに対して斎藤はそう言った。 『それは、戦闘を派手にする為に、見た目をカッコ良くしただけだ』 「じゃぁ、今の力って……」 『君達の素晴らしい連携プレーの賜物だ』 「はっ?」 斎藤の言葉にバーナビーは虎徹へと顔を向ける。 『二人の力を同時に加えてダイヤモンドを砕くとはね』 「かっ、勘違いしないでくださいよ! 今のは偶然――」 『またまたぁ! バッチリ息が合ってたぞ。漸くコンビらしくなってきたんじゃないか?』 「…………」 斎藤の言葉を否定しようとするバーナビーに対して、斎藤はバーナビーが照れているのだろうと思ったのか、笑ってそう言った。 それを聞いたバーナビー無言で虎徹を見つめると、すぐに目を逸らした。 「ん……?」 すると、虎徹はあの時と同じように這いつくばってその場から逃げようとしているポーリーに近づくと、首根っこを捕まえた。 「…………ほら。お前にやるよ」 「?」 ポーリーの首根っこを掴んだまま、虎徹がバーナビーにそのまま差し出した。 その虎徹の行動の意味がわからないといった表情をバーナビーは浮かべた。 「バースデープレゼントだ。こいつはお前が捕まえた事にしろ」 「は?」 「お前が欲しいのはポイントだろ? ハッピーバースデー♪」 「っ!!」 ニッと笑ってそう言った虎徹に対して、バーナビーは思わず息を呑んだ。 まただ。また、この表情を見ただけなのに、鼓動が速くなる。 一体なんだというのだ……? 「バッ、バニーちゃん? ……どうかしたか?」 「! なっ、なんでもないですよ。…………あと、別に喜びませんから」 「へっ?」 固まっているバーナビーに虎徹はそう問いかけるとバーナビーは冷たくそう返事した。 その以前と変わらない言葉に虎徹はキョトンとした。 「お節介はもう、うんざりだって言ったでしょ!」 「けど……」 「何が『ハッピーバースデー』ですか、恥ずかしい」 そう言いつつ、バーナビーは、虎徹が持っていたポーリーの首根っこを掴んで連行していく。 「あぁ、そうかよっ!」 やっぱり、今のバニーは可愛くねぇ! そんなバーナビーの背中に虎徹はそう声をかけると《GOOD LUCK MODE》を解除した。 でも、まぁ、今日はこれで良しとしよう。 バニーにちゃんとプレセントを渡せられたのだから……。 「…………誕生日、おめでとう。バニー……」 もうバーナビーの耳には届かないだろうけど、虎徹は静かにそう優しく呟いた。 俺は、後何回バニーにこの言葉を言ってやる事ができるのだろうか……。 また、バニーの誕生日をみんなで祝ってやりたいなぁ……。 あの日を生き抜いて必ず……。 そう虎徹は己の運命を変える事をバーナビーの背中を見て、改めて決意するのだった。 神様シリーズ第2章第15話でした!! ついに発動、《GOOD LUCK MODE》♪二人の見事な初連携プレーをかけて満足です♪ そして、バニーちゃんは虎徹さんの笑顔にまたまたノックアウトされそうになってます! いい加減、自分の気持ちに自覚しろよ!バニーちゃん!! っと言った感じで、これにて第二章は完結となりますっ H.25 9/3 第三章へ |