キング・オブ・ヒーローこと、スカイハイは今、非常に怒っていた。 『おぉ〜と! 最初に登場したのは、キング・オブ・ヒーロー・スカイハイ!!』 道路の上空を飛んできたスカイハイがそこに着地すると、オープンカーの前へと立ちはだかった。 「……君達のせいで、ワイルド君の為に練習した芝居が無駄になってしまったんだ…………」 そう言うとスカイハイは台詞の書いてある紙を取り出すと、それをクシャクシャに丸めて投げ捨てた。 「せっかく、覚えたのにっ!!」 せっかくワイルド君が喜んでくれると思って一生懸命覚えたのに! だが、それ以上に許せない事があった。 ブルーローズ君とファイヤーエンブレム君からすべてを聞いた。 彼らがワイルド君に向かって発砲したということを……。 (…………絶対に許さない! そして、許さないっ!!) オープンカーが迫りくる中、スカイハイは気流の塊を作り出す。 「ハアアァァァー。スカァァァイハァァイ!!」 そして、両手を一気に突き出して、スカイハイは風圧弾を放つのだった。 〜神様ゲーム〜 「うわああっ!」 スカイハイの放った竜巻によって、オープンカーは派手に回転し、ひっくり返って停止した。 そこから何とか這い出たポーリー一味は、それぞれジェットパックを背負っていた。 「ん……行くぞ!」 ポーリー――ダイヤモンドマンはそう言うと、上空へと飛び立った。 それに続くかのようにリチャードとウォルターも飛び立つ。 「!? 待ちたまえっ!!」 決めポーズを決めていたスカイハイは、そこでダイヤモンドマン達に逃げられた事に気付き、そう言うと彼らを追いかけ始めた。 スカイハイからの追撃を逃れたダイヤモンドマン達は幹線道路に着地した。 だが、その行く手には、虎徹とバーナビーのサイドカーが止まっている。 「逃がさねぇぞっ!」 「「「!?」」」 虎徹はそう言うとバーナビーと共に能力を発動させた。 それにより、二人のヒーロースーツが緑と赤に発光しだす。 『おおぉぉぉっと! ここで、タイガーとバーナビーが能力を発動! 五分間のハンドレッドパワー開始ですっ!』 「! ……貴方、先程能力使ったばかりじゃ?」 そのことに驚いたバーナビーが虎徹に問いただす。 先程、この男は能力を使って自分の傷を治したばかりだ。 まだ、あれから一時間経ってもいないのに、何故能力が使えるのだろうか? 「あ゛っ、いや、だから……;」 「どういう事か説明してもらえますか?」 「えっ? え〜〜っと……;」 ――――おっ! 揉めてるな、虎徹♪ (誰のせいだよ、誰のっ!!) バーナビーの問いに対して、言葉を濁す虎徹に対してバーナビーがさらに詰め寄る。 そんな二人のやり取りを見てクロノスは、楽しそうに笑ってそう言ったのを聞いて虎徹は思わず心の中でそう叫ぶ。 ――――だったら、正直に言えばいいだろ? この私が、虎徹の怪我を治してやったって♪ (いっ、言えるかっ! そんな事!!) そのことを言ってしまえば、俺がもう一つの能力で時を遡っていることをバニーに言わなくなくてはならなくなる。 そんなことになれば、あのことだって話さなくなるかもしれない。 バニーの両親を殺した本当の犯人が誰かを……。 ――――いいじゃんか、別に。その方が公にお前を口説けるし♪ (…………それも嫌だから、言わないんですけど;) 「いつまで黙っているつもりですかっ! ちゃんと説明してくださいっ!!」 「だあっ! そんな事、別に今はいいだろうがっ!!」 「ですがっ!」 「散らばれっ!」 虎徹から明確な説明が得られないバーナビーは、苛立ったようにそう言った。 それに対して虎徹はそう言って何とかこの場を切り抜けようとするが、尚もバーナビーは食い下がらない。 そんな二人のやり取りを見たダイヤモンドマンとリチャードは、チャンスとばかりにジェットパックを作動させ、左右に飛び立つ。 「! ほらっ! 奴らに逃げられちまうだろうがっ!!」 「それは、ちゃんと説明してくれない、おじさんのせいです」 「だっ! 何でそうなんだよ、お前は! とにかく、この話はもうなしだっ!!」 それを見た虎徹がそう抗議をするとそれを不服とばかりにバーナビーが言い返す。 そんなバーナビーに対して虎徹はそう言い放った。 だが、それでもバーナビーは、食い下がろうとしなかった。 「ですがっ!!」 「お前いい加減しろよっ! 今は、目の前の犯人だけに集中しろっ!!」 「っ!!」 ――――ほんっと、聞き分けのない兎ちゃんだこと♪ (あと、トキ。お前、今日チャーハン抜き決定な) ――――なんで!? 八つ当たりにもほどがあるだろ!? (うっせぇ! 元はと言えば、全部お前のせいだろうがっ!!) ――――むむ……。今日のチャーハン、楽しみしてたのに; 虎徹がそう一喝するとさすがにバーナビーも黙った。 それを見て楽しむクロノスに対しても虎徹はそう告げると、クロノスはそう言って項垂れた。 そんな二人を無視して、虎徹は事件へと集中することを決め、目の前にいるウォルターを捕まえようと走り出した。 虎徹のその動きに気付いたウォルターは、慌ててジェットパックを起動させ、上空へ逃れようとする。 「えっ?」 だが、空から下りてきたスカイハイにウォルターはキャッチされるのだった。 そして、スカイハイはそのままウォルターを掴んだまま飛んでいく。 「! ああ〜〜〜っ!!」 『スカイハイが犯人捕獲だあ〜〜っ!!』 「君達は許さないっ!!」 「すみません……;」 (あ〜〜っ、またスカイハイに持ってかれたよ; それにしてもスカイハイやけに張り切ってるな;) その前回と変わらぬ光景を見た虎徹はふと隣へと視線を向けた。 あの時は、もうバーナビーの姿はなかったのだが、不思議な事にそこにはまだバーナビーの姿があった。 先ほど言ったことがそれほどショックだったのだろうか? 「…………おい、次行くぞ、バ――」 「ワイルド君!!」 「だああっ!?」 「!!」 そう虎徹がバーナビーに声をかけた瞬間、何かが虎徹に向かって突進してきた。 それは、ウォルターを警察に引き渡して猛スピードで戻ってきたスカイハイだった。 突然の出来事に虎徹はよろけたが、その場に何とか踏みとどまった。 「よっ、よぉ、スカイハイ。……何か、戻ってくんの速くねぇ?」 「当たり前ではないかっ! ワイルド君が撃たれたと聞いたので、私は心配で……。怪我は大丈夫なのかい?」 「あぁ、それなら大――」 「そう思うなら、怪我人にいきなり抱きつくのは、どうかと思いますけど?」 苦笑雑じりでそう言った虎徹に対してスカイハイが心配そうにそう訊いた。 それに対して虎徹が問題ないと言おうとしたが、それを遮るようにしてバーナビーが不機嫌そうにそう言いながら、スカイハイを虎徹から引き離した。 「! あぁ、すまない。私としたことがつい……; ワイルド君、大丈夫だったかい?」 「えっ? いや、俺は――」 「大丈夫なわけないでしょう? ついさっきやっと、止血したばかりなんですから」 「! そうだったのかい!? そんな事とは知らずに……。本当にすまない」 「いっ、いや。本当に何ともないから; 頭上げてくれよ、スカイハイ……;」 (つーか、バニーちゃん。何で、こんな事言うんだよ?) 申し訳なそうにするスカイハイに対して虎徹が言葉を紡ごうとするとバーナビーがまたそれを遮ってそう言った。 それを聞いたスカイハイは申し訳なさから思いっきり頭を下げてたので、虎徹は慌ててそう言ってフォローした。 それにしても、俺がもう大丈夫な事をバニーが一番よくわかっているはずなのに、何故こんな事をスカイハイに言うのか、よくわからなかった。 「! ワイルド君! ……なんて優しいんだ、君は!!」 「はい、は〜い。おじさんに抱きつかないでくださいね、スカイハイさん。おじさんの傷に触りますから」 「むむ……」 虎徹の気遣いに感動したのか、スカイハイは頭を上げ明るい声でそう言うと再び虎徹に抱き締めようとしたので、バーナビーがそれを阻止した。 バーナビーの行動にスカイハイは不満そうな声で呻ったが、虎徹の身体の事を思ったのか、それ以上何も言わなかった。 「さぁ、行きますよ、おじさん」 「えっ? えっ? ちょっと、待てよ! バニー! じゃぁな、スカイハイ!!」 そう言って駆け出していくバーナビーに驚きつつ、虎徹はスカイハイにそう言うとバーナビーの後を追いかけるのだった。 その頃、無事に着陸したリチャードは、背後を確認しながら走り出す。 「……ああっ!」 だが、その目の前には、ブルーローズの姿があり、思わず足を止めた。 ブルーローズは、クールに振り向くと氷の柱を両手から噴出した。 「のぉ〜〜っ!」 それによりリチャードは、氷柱で奥の鉄柱に叩きつけられ、情けない声を上げた。 「私の氷はちょっぴりCOLD、あなたの悪事を――」 「遅かったかぁ〜;」 ブルーローズが決め台詞を言い終わろうとした瞬間、ファイヤーエンブレムカーに乗ったファイヤーエンブレムが現れ、それを遮った。 「ちょっと! 決め台詞くらい言わせてよっ!!」 「私だって」 「「ん?」」 それを抗議しようとしたブルーローズが声を上げた時、何処からともなく声が聞こえてきたので、二人は上空を見上げた。 そこには、いつのまにかスカイハイの姿があり、こちらへと降りてくる。 「決め台詞を言いたかった。……ずっと、ワイルド君が来るの待っていたのに…………」 ふと、頭に浮かんだのは、台詞を書いた紙を見ながら、路地裏でブツブツと呟きながら彼が来るのを今か今かと待っていた事。 そして、サプライズが無事に成功して彼が喜ぶ姿を……。 「路地裏で独り佇む私。……とても寂しかった。そして、悔しかった」 寂しかった。だが、それ以上に悔しくも思えた。 もし、私があの場にいたら、ワイルド君を怪我させずに済んだのではないかと思うと、悔しくて仕方なかったのだ。 「…………じゃぁ、お詫びに残りの犯人譲ってあげるわ。捕まえて来たら?」 「……いや。遠慮しておくよ」 そんなスカイハイの様子を見て少し困惑するようにファイヤーエンブレムはそう言った。 だが、それに対してスカイハイははっきりと断った。 「ここは、彼らに任せてみようじゃないか?」 「「えっ?」」 そして、そう言ったスカイハイの言葉を聞いたブルーローズとファイヤーエンブレムは不思議そうな表情を浮かべた。 「だって今日は、特別な日だろ……」 ヒーロースーツの中でスカイハイはマスク越しに優しい表情を浮かべてそう言った。 今日は特別な日だから彼に任せてみようじゃないか。 だが、明日になれば話は別だ。 覚悟したまえよ、バーナビー君……。 そんな事を思いながらスカイハイは、虎徹とバーナビーが走り去っていった方向を静かに眺めるのだった。 神様シリーズ第2章第14話でした!! スカイハイがポーリー一味に対してご立腹です♪ まぁ、大好きな虎徹さんを傷付けられたら仕方ないよねぇ♪ そして、そんなスカイハイを苛めているのがバニーちゃんでしたvv 無自覚ですが、虎徹さんがスカイハイに触られることがバニーちゃんは嫌で仕方ないのです。 H.25 9/3 次へ |