「ちょっと、待ってください! まさか、このまま出動するつもりなんですか?」 「そうだけど…………悪ぃか?」 トランスポーターに乗り込んだ虎徹にバーナビーがそう言った事に対して、虎徹は不思議そうにそう言った。 「当たり前じゃないですか!? 貴方、銃で撃たれたんですよ。ちゃんと手当しないと……」 「大丈夫だよ。バニーちゃんが処置してくれたおかげで、止血もできてるし、痛くもねぇし……」 「僕はそう言う事を言っているんじゃないっ!!」 苦笑してそう言う虎徹に対してバーナビーは怒鳴った。 「あんなの簡単な応急処置に過ぎないんですっ! ちゃんとした手当てをしないと取り返しのつかない事になりますよ」 「なっ、何? バニーちゃん、俺の事心配してくれてるの? やっさしいねぇ♪」 「こんな時にふざけないでくださいっ! 斎藤さん!!」 茶化す虎徹に対してバーナビーは、そう言うと斎藤を呼んだ。 「彼、ここに来るまでに銃弾を受けたんです。すみませんが、手当てをお願いします」 「(! 本当なのか、タイガー?)」 「えっ? あっ、いや……」 バーナビーの言葉を聞いた斎藤は、驚いたように虎徹に問いかけた。 それに対して虎徹は、何故か曖昧な返事しか返さなかった。 「いいですから、さっさと治療を受けてくださいっ! 子供じゃないんですから!」 「ぎゃああぁ! 何すんだよっ!! バニーちゃんのエッチ!!」 「もうゴチャゴチャとうるさいですよ、おじさんっ!!」 あくまでも治療を拒む虎徹に対してバーナビーは実力行使とばかり、虎徹のシャツのボタンへと手をかける。 それに対して虎徹は喚くが、バーナビーはそんな事は一切気にすることなく、ボタンを外していく。 「まっ、待てって、バニーちゃん! 俺なら、本当に大丈夫だからっ!!」 「そんな事、信じられるわけないでしょうがっ! いい加減、観念してくださいっ!!」 必死に頼む虎徹の言葉には一切耳を貸さないバーナビーはそう言いながら、虎徹の腕に巻かれた止血帯を外し、虎徹のシャツを一気に脱がすのだった。 〜神様ゲーム〜 「! ……どういう事ですか……これ!?」 虎徹のシャツを脱がし、左腕を見たバーナビーは絶句した。 それは、バーナビーが想像していた光景とは明らかに違うものが広がっていたからだ。 「(…………なんだ。そんな大した怪我じゃないじゃないか)」 ひょっこりと二人の間から斎藤が覗き込んでそれを見ると、ホッとしたようにそう言った。 そう、斎藤さんの言う通り、この男の左腕は完全に血が止まっていた。 まるで銃弾を真面に受けたとは思えないような、ほんの掠り傷程度の傷しかそこにはなかったのだ。 (そんなはずないっ!?) だって、僕は確かに見たのだ。 この男の左腕に銃弾を受けたところを……。 流血が止まらないあの痛々しいあの腕を僕が手当てしたのだ。 「どういう事ですか! 説明してくださいっ!!」 「あ゛っ、いや……その…………;」 バーナビーの問いに虎徹は、ただただ困ったような表情を浮かべ、顔を掻くだけだった。 「! ……もしかして……貴方、まさか能力を使ったんですか!?」 「へっ? いや……ちが――」 「貴方、何考えているんですか!? これから、犯人を確保しないといけないというのにっ!! そのせいでポイントを逃したらどうするつもりですかっ!?」 バーナビーの言葉を聞いた虎徹は、それを否定しようとしたが、それを遮ってバーナビーは怒鳴った。 「だっ、だから、違うって言ってるだろっ!」 「もう結構です! これからは、コンビだと考えず、僕一人で何とかしますからっ!!」 バーナビーは、そう虎徹に吐き捨てるとトランスポーターの奥へと消えていった。 そんなバーナビーの言動に虎徹は深い溜め息をついた。 ――――どうした、虎徹? 溜め息なんてついて? まだ、傷が痛むのか? (うっせぇ! 誰のせいでこうなったと思ってるんだよ! だ・れ・の!!) ――――何だ? 人が折角、怪我を治してやってるのに、そんな言い方はないだろう? (誰もトキに治してくれって頼んでねぇだろっ! 寧ろ断っただろ、俺!!) そう、虎徹の怪我を治したのは、他ならぬクロノスであった。 虎徹がそれを拒んだというのに、結局クロノスはそれを無視して勝手に治しているのだ。 その行為が目に見えなくても先程まであった痛みが突如無くなれば、それは虎徹にだってわかる。 (おかげで、バニーをまた怒らせちまったじゃねぇかよっ!) ――――……そのくらい、別にいいだろ? 相棒が勝手に勘違いしただけなんだしさぁ。 あの兎は、一度思い込むと人の話をまるで聞かないのだ。 一度思い込むと、周りが見えなくなる。 そのせいで何度虎徹が傷ついたことか……。 だが、今回はそれを逆手にとって利用させてもらっただけのことだ。 どうしてもあのまま虎徹を放っておく事ができなかったから……。 (と・に・か・く! 勝手に怪我治すのは今後は禁止! 次やったら、口もきいてやんねぇし、チャーハンも作ってやんねぇからなっ!!) ――――! そっ、それはいくらなんでもないだろっ!! (うっせぇ! とにかく、ダメなものはダメだっ!!) 文句を言うクロノスに対して虎徹は、はっきりとそう言った。 今後、クロノスに傷を癒してもらう度に、力を使ったとバニーに思われるなんて堪ったもんじゃない。 これ以上、バニーに嫌われるわけにはいかないのだ。 「(…………タイガー。とりあえず、事件解決したら、私のところに来い。身体検査するから)」 「えっ? でも、何処も悪いところなんて……」 「(返事は?)」 「はい……;」 斎藤の有無を言わせない言葉に虎徹はそう言うしかなく、再び溜め息をつくのだった。 『準備はいいか! タイガー&バーナビー!!』 トランスポーター内の所定位置に虎徹とバーナビーが付くと、マイクを通して斎藤のガナリ声が聞こえてきた。 「マイク通すと声でかいなぁ;」 その声に虎徹がボソリとそう呟くと、両手を広げた。 すると、ヒーロースーツの足部が一気に虎徹の足を包む。 「おわっ!」 虎徹は思わず、顰め声を上げたが、隣にいるバーナビーは顔色一つ変えなかった。 それから、手と胸体も次々と身体を包み、無事にヒーロースーツの装着が完了する。 「…………?」 着心地を確認していた時に、バーナビーはそれに気付いた。 左胸にウサギのようなマークがついている事に……。 『それはオマケだよ』 「は?」 斎藤の言葉に意味がわからず、バーナビーは思わずそう声を上げた。 『バーナビーが誕生日だと聞いてスーツを改造しておいた。ついでに、タイガーもな』 「さっすが、斎藤さん! ……で、何処だったかなぁ…………」 「…………」 斎藤の言葉を聞いた虎徹はニッと笑うと、ヒーロースーツを見回して何が変わったかを探し始める。 それとは、対照的にバーナビーは、ただ静かにマークを見つめるだけだった。 神様シリーズ第2章第13話でした!! 前半の虎徹さんとバニーちゃんのやり取りを書くのが面白かった♪ 折角、虎徹さんの服をバニーちゃんが脱がせているのに、虎徹さん全然ムードないしww そして、トキは虎徹さんの言いつけを無視して虎徹さんの怪我治しているしww バニーちゃんの性格をうまく利用するトキはさすがですね♪ H.25 9/3 次へ |