「…………なぁ、バニーちゃん。……何か、怒ってない;」 「いえ、怒ってません」 (やっぱ、怒ってんじゃんか!) 翌日、会社へ出勤した虎徹を待ち受けていたのは何とも重苦しい空気だった。 その空気を作り出しているのは、他ならぬバーナビーである。 その為、虎徹は恐る恐るバーナビーに声をかけてみたが、バーナビーは虎徹と目を合わせることなく、冷えきった声でそう言い放った。 それを聞いた虎徹は内心そう叫びつつも、バーナビーが不機嫌な理由を探し始める。 だが、これと言って理由が虎徹には思い当らなかった。 昨日は、出動しても何も壊さなかったし、以前の時のようにバニーのファンの持ち物も壊さなかったはずだ。 (一体、何でそんなに不機嫌なんだよっ、バニー!!) 訳がわからないと言った感じて虎徹は頭を抱えた時、虎徹の目に飛び込んできたものは、デスクに置いてあった卓上カレンダーだった。 (今日って……十月……三十一日…………って、ああっ!) そして、その日付を見て虎徹はある事を確信するのだった。 〜神様ゲーム〜 「バースデーパーティ?」 あの時同様、虎徹はトレーニングセンターに赴き、カリーナ、アントニオ、ネイサンにバーナビーのパースデーサプライズを提案した。 すると、案の定あの時と同じようにカリーナがそう声を上げたので虎徹は頷いた。 「そう! みんなでバニーを祝ってやろうじゃないか?」 「あら、いいじゃない、素敵♪」 「私は嫌!」 「へっ?」 虎徹の言葉に以前と同じような反応を示したネイサンに対して、カリーナは早くも乗り気ではない返事をした。 「別にあいつに事、祝いたくないし。それに私達、一応ライバルなわけだし」 「確かにそうだな」 「でも、ファイヤーエンブレムはやるって言ってくれてるぞ」 「言われてみればそうね……」 「おいっ!!」 カリーナとアントニオから同意が得られなかった虎徹はネイサンに助け舟を出したが、あっさりと裏切られたので思わず虎徹は声を上げた。 「…………それに、よりによってなんであいつなわけ? タイガーならともかく……」 「へっ? 今なんか言ったか? ブルーローズ?」 「っ! なっ、何でもないわよっ////」 (何で、そんなに怒るんだよ;) カリーナが何か言ったみたいだったのでそれを虎徹が聞き返してやると、カリーナは何故か赤面して虎徹に対して怒鳴った。 何故、カリーナに怒鳴られたのかわからず、それに落ち込むのと先程の自分の提案に賛同が得られなかった事に虎徹は溜め息をついた。 「……何だよ、お前ら? 誕生日ぐらいみんなでワイワイ祝ってやってもいいんじゃねぇのか?」 「素晴らしいっ!」 その声に虎徹は振り返るとそこには、あの時と同じようにドリンクを片手にキースがこちらへと近づいてくる姿があった。 そして、その瞳はキラキラと輝いていた。 「実に素晴らしいっ! 誕生日とは、特別な日。そんな日はみんなで祝ってやるのがハッピーだと私は思うっ! なぁ、ワイルド君♪」 「でも、こいつらがさぁ……」 キースはとびっきりの笑顔で虎徹にそう言ったが、それに対して虎徹は少し困ったような表情を浮かべた。 「…………ちょっと、スカイハイ。あんたどういうつもり?」 「? 何がだい?」 すると、ネイサンが静かにキースの許へと歩み寄ると虎徹に聞こえないように心掛けながら、そう小声で言った。 そのネイサンの言葉にキースは不思議そうな表情を浮かべた。 「馬鹿ね! そんなことして、タイガーとハンサムの仲が良くなったら、どうするのよ!?」 「そうよ、スカイハイ! タイガーへの嫌がらせの為に私を使ってあんな賭けをするんだから、きっと仲が良くなったらもっと性質が悪くなるに決まってるじゃないっ!!」 ネイサンがそう言ったことに畳み掛けるようにカリーナが続けて言う。 「だが、このままだとワイルド君は一人でもやってしまうのでは? その方が、ワイルド君とバーナビー君の距離が縮まってしまうと私は思うのだが?」 「「!!」」 キースの言葉にネイサンとカリーナは瞠目した。 確かに、キースの言い分は一理ある。 もし、本当にそうなってしまえば、誰も彼らを邪魔することはできなくなってしまうだろう。 それは、非常にまずい。 「それに、バーナビー君の事は私はどうでもいいが、ワイルド君が困っていたら、手を貸してあげたいと思っているだけなのだがね」 「スカイハイ……」 本当に彼は虎徹の事を一番に考えているのだと改めて思った。 「…………おーい、なーに話してんだ?」 「なんでもないよ、ワイルド君。みんな、バーナビー君のバースデーパーティに参加してくれるそうだぞ」 「! 本当か、お前ら!!」 一人置いてけぼりを喰らっていた虎徹がキース達に近づいてそう訊くと、キースはいつもと変わらない爽やかな笑みを浮かべてそう言った。 それを聞いた虎徹の表情はパッと輝いた。 「何だよ〜。何だかんだ言っても、やっぱお前らは優しいんだなぁ! ありがとうなっ!!」 「まっ、まぁねぇ……」 「しっ、仕方ないからやってあげるわよ……」 「キング・オブ・ヒーローにあぁ言われちゃぁ、やらないわけにもいかないしな;」 虎徹の満面の笑みを浮かべられてそう言わらたら、カリーナ達はもうそう言わざる得なかった。 あと、二人が仲良くなるのを阻止するには最早これしか方法がないのだから……。 「では、諸君! 皆で協力してバーナビー君を祝おうではないかっ!!」 「「「オーーッ!!」」」 (だあっ! まっ、また、スカイハイに仕切られた;) 今度こそ、自ら提案したこの企画を仕切ろうと思っていたのに……。 「……ねぇ、プレゼント何にするの?」 「は? ん〜、このサプライズがプレゼントだけど?」 すると、カリーナはあの時と同じように虎徹にそう問いかけてきたので、虎徹も同じようにそう言葉を返した。 「ダメでしょ、心の籠ったプレゼントを一応用意しなきゃ」 (一応でいいのか、ブルーローズ?) 「う〜ん、そうだな。とりあえず少し考えてみるわ;」 カリーナの言葉を聞いた虎徹は苦笑雑じりでそう言うのだった。 「助けてくれっ!」 「死ね!」 バーナビーのバースデーサプライズの予行練習をしている虎徹は、プレゼントのウサちゃん人形を盾にそう言った。 それ見たキースがそう言うと皆、一斉に中の引き金を引いた。 その瞬間、四丁の銃口から、「HAPPY BIRTHDAY」と書かれた旗と紙吹雪が飛び出した。 「「「「HAPPY BIRTHDAY!」」」」 「はい、OK!」 キース達のに囲まれた虎徹はウサちゃん人形を抱えたままそう言うと、キース達は覆面を外した。 「うん、う〜ん。いいじゃなぁ〜い?」 「うん!」 「俺、カッコよかったろ! 『貴様に名乗る名前などない!』…………くぅー、痺れるねぇ!」 「はいはい……」 自画自賛する虎徹に対してカリーナは適当に相槌を返した。 「だぁっ! 何だよ、そのリアクション!」 「私はどうだった? アドリブを入れてみたんだが……」 「やり過ぎだよ;」 「ん?」 目を輝かせてそう言ったキースに虎徹はそう言った。 それを聞いたキースは不思議そうに首を傾げた。 「『これで終わりだ、そしてジ・エンドだ!』って意味わかんねぇだろ; あと、それ言ったら、バニーにすぐバレるだろ;」 「すまない。アドリブは慎むよ」 キースのモノマネをしながらそう言った虎徹に対してキースは、本当に申し訳なさそうにそう言葉を返した。 「で、プレゼントは決まったの?」 「えっ? え〜〜っと……」 「何? まだ、決まってなかったの!?」 「いっ、いや……そういうわけじゃ……; 一応は決まってるけど……」 「何よ?」 「えっ? え〜〜っと……;」 カリーナの問いに虎徹は口を濁した。 プレゼントなら、もう決まっている。 それは、この後起こるであろう宝石強盗事件で獲得するポイントである。 だが、そんな事を彼女達に言えるはずもない。 他に言える事と言ったら……。 「おっ、俺がプレゼントって事でいいかなぁって♪」 「「「「…………」」」」 そう虎徹が己を指差しておどけてそう言うと、辺りは静まり返った。 「…………やっぱ、ダメか?」 「ダメに決まってるでしょっ!」 「ダメに決まってるでしょうがっ!」 「ダメにきまってるだろうっ!」 ――――絶対に駄目だっ!! (なっ、何でみんなハモってんの!? つーか、何で急にお前まで口挟んでくるんだよ、トキ;) その沈黙に耐え切れず、虎徹が恐る恐るそう訊くとカリーナ、ネイサン、アントニオが見事にハモったと同時に今まで静かだったクロノスまでも叫んだのだった。 ――――お前があまりにも無防備な発言をするからだろうがっ! そんなことして、あの相棒が自覚に芽生えたらどうするんだっ!! (? ……芽生えるって……何に?) ――――……っ! もういいっ! とにかく! それだけは、私が絶対に許さないからなっ!! 不思議そうに問いかける虎徹に対して何故かクロノスは何処かイライラしたようにそう言った。 「………ワイルド君。それは、私の誕生日まで、取っておいてくれないか?」 「へぇ?」 「ちょっと! どさくさに紛れて何言ってるのよ、スカイハイ!」 ポンッと虎徹の肩に手を置いてキースは、爽やかな笑みを浮かべてそう言った。 それを聞いた虎徹が不思議そうに首を傾げているとネイサンがそう叫ぶ。 「と・に・か・く! それは絶対やめた方がいいわよ! バーナビーが喜ぶわけないでしょ!」 「あ゛っ; やっぱそうか;」 カリーナの言葉に虎徹は内心落ち込んだ。 今のバニーに己が思いっきり嫌われている事は虎徹自身よくわかっている。 「…………でも、私だったら嬉しいかも……」 「へっ? 何か言ったか?」 「なっ、何でもないわよっ! バカッ!!」 (何で!? 今の理不尽じゃねぇ!?) ――――…………まぁ、今のは……お前が悪いなぁ。 (何でだよっ!?) つい心の声を呟いてしまったカリーナの言葉に虎徹が聞き返してしまった為、思わずカリーナは逆ギレしてしまった。 その理由がわからない虎徹に対してさらにクロノスがそう言ったものだから、虎徹は頭を抱えたくなった。 「そんなことはないっ! 私なら、ワイルド君がもらえるなら、嬉しいぞ!! そして、ハッピーになるぞっ!!」 「スカイハイ! 余計な事言わないでよっ! 話がややこしくなるでしょっ!!」 「はっ、はい……」 そんな虎徹を励まそうと思ったのか、キースがそう言った事に対してもカリーナはバッサリと切り捨てた。 それを聞いたキースもさすがに口を閉ざした。 ――――……お前、本当にたらしだなぁ; ある意味尊敬するわ; (はあぁっ!? 全然意味わかんねぇよ!!) そんな虎徹達を見ていたクロノスは、大きな溜め息をつくとそう言った。 それを聞いた虎徹は思わず心の中でそう叫ぶのだった。 神様シリーズ第2章第11話でした!! バニーちゃんがご機嫌斜めな理由はもちろん昨日の虎徹さんとのやりとりのせいです。 虎徹さんが自分ではなく、ユーリさんの味方をしたことが気に食わなくて仕方ないバニーちゃん。 そして、今回のヒーローズとの絡みはかなり暴走しております♪ スカイハイの台詞を書くのが楽し過ぎた私vv H.25 8/4 次へ |