(何なのこの違和感……)

アニエスはモニターを見つめ、考え込んだ。
ここに映し出されいるのは、間違いなくタイガーの今いる位置なのだ。
だが、どうしても違和感を感じて仕方なかった。
先程までどう頑張ってもなかなか特定できたなかった位置が今は意図も簡単に表示されている。
ロビンは幾度となく転移を繰り返していたロビンがこうも一定の場所に留まっていること自体おかしい。

(まさか……!)

その違和感の原因がわかったアニエスは、すぐさまヒーロー達と回線を繋ぐ。

「みんな! 大変よっ!!」

そして、すぐさまそう声を上げるのだった。






〜神様ゲーム〜








「……そう言えばさぁ、ロビンは何でタイガーを狙ったのかなぁ?」

そう何気なく呟いたのは、ドラゴンキッドだった。

「……確かに、そうですよね。僕には全然わかんないです。逆恨みとかじゃなさそうですし……」

ドラゴンキッドの言葉に折紙サイクロンはそう言った、


初めはロビンが逆恨みで犯行に及んだのかと思った。
だが、それにしてはロビンの行動がどうもおかしい気がする。

「でしょ? タイガーを攫って、スタチュー・オブ・ジャスティスを置いて行くなんて変だよね?」

この事件はもともとロビンがスタチュー・オブ・ジャスティスを強奪したことにより起こったものだ。
この街の平和のシンボルである女神像。
その価値は時価数億シュテルンドルにもなる。
それをあっさりと手放し、タイガーを攫って行ったのだ。

「……タイガーにそんな価値あるのかなぁ?」
「! 何を言ってるんだい!? ドラゴンキッド君!!」

首を傾げて何気なくそう言ったドラゴンキッドの言葉に食いついたのはスカイハイだった。

「ワイルド君にはそれくらいの価値があるに決まってるではないかっ! いくら、ドラゴンキッド君でもワイルド君を悪く言うことは私が許さないぞ!」
「ボッ、ボクはそんなつもりじゃ……」
「はいは〜い。子供相手にそんなにムキにならないの、スカイハイ」
「むむ……」

そんな状況を見兼ねたファイヤーエンブレムが仲介に入る。

「あんたも、ロビンの狙いなんて本人にしかわかんないんだから、変に考えないの」
「……はーい」

ファイヤーエンブレムの言葉にドラゴンキッドは素直に応じた。

「いや。ロビンの狙いなら、私にはわかる! おそらく……」

指を立ててそう言ったスカイハイの言葉に皆が注目する。

「ロビンは……ワイルド君に一目惚れしたんじゃないかと私は思う!」
「「「「「…………」」」」」
「…………あれ?」

彼らの予想外の反応にスカイハイは首を傾げた。

「そんなわけないでしょ! 大体、マスク付けてるタイガーにどうやって一目惚れするのよ!!」
「ああ、そうか! そうだね。でも、自信はあったんだが……」

そうはっきりと言ったブルーローズの言葉にドラゴンキッドとロックバイソンはうんうんと頷く。
それに対してスカイハイは苦笑混じりでそう言った。

(ホント、変わったわね。スカイハイ……)

そんなやりとりをファイヤーエンブレムは見つめてそう思った。
今までの彼だったら、そんな事を思っていても絶対言わなかっただろうに。
タイガーの事をただ遠くから見ているだけだったスカイハイがこうも一日で変わるとは正直驚きである。
それほどまでにハンサムという存在がスカイハイに影響を与えたという事なのだろう。

『みんな! 大変よっ!!』

何処か少し和やかだった空気がアニエスの声により一気に張り詰める。

『ロビンにタイガーのPDAがバレて外された可能性が高いわ! おそらく、ロビンはもう現場へと向かって――』
「その通り〜♪」
「「「「「「!?」」」」」」

アニエスの言葉を遮るように聞こえたふざけたようなその声にヒーロー達は一斉に振り返る。
そこには、不敵に笑うロビンの姿。
そして、彼の肩に担がれている虎徹の姿があった。
彼は気を失っているのか、ピクリとも反応しなかった。

「「「「「「ロビン!」」」」」」
不意を突かれたヒーロー達に隙が生まれる。
そこを見逃すことなくロビンは己のNEXT能力を発動させ、ライジングコースターのエントランスに一番近くにいたブルーローズと位置を入れ替えた。

「ほんっと、ヒーローって奴はどいつもマヌケだなぁ。まぁ、そのおかげで助かったけどなぁ」

ロビンはヒーロー達を見るとそう小馬鹿にしたようにそう言った。

「……貴様っ! ワイルド君を放せっ!!」
「やーだよ。……やっと、手に入れたんだ。だーれが渡すかよ。そんな返して欲しけりゃ、奪ってみなよ」

スカイハイの言葉でロビンは鼻で嗤うと彼らを挑発する。

「貴様っ!!」
「ちょっと!少し落ち着きなさいよ! 今、攻撃したらタイガーに当たるでしょうがっ!!」
「っ!!」

その挑発にスカイハイはNEXT能力を発動させ、ロビンへと攻撃を繰り出そうとする。
それを見たファイヤーエンブレムが慌ててスカイハイとロビンの間に立つとスカイハイを制止させた。
ファイヤーエンブレムの言葉にスカイハイは我に返ると能力で出現させた風をすぐさま消した。

「じゃ、そういうことで! ワイルドタイガーは戴いて行くぜぇ♪」
「! まっ、待て!!」

スカイハイの制止に耳を傾けるはずもなく、ロビンはそのままライジングコースターのエントランスへと消えて行った。

『もうっ! 何やってんのよ、みんな!!』

その光景を一部始終見ていたアニエスがそう怒鳴った。

「…………早く、追いかけなくちゃ……」
我を忘れたかのようにブルーローズがそう呟くとライジングコースターのエントランスへと歩きだす。

「ブルーローズさん、ダメです!」

それを折紙サイクロンが慌ててブルーローズの腕を掴んで止める。

「放してよ! 早くしないとタイガーがっ!!」
「このまま、ロビンを追いかけても僕達ではロビンを捕まえられません」
「けどっ!!」
「後は、バーナビーさんに任せましょう。その為の作戦だったんですから」
「…………っ!」

折紙サイクロンの言葉にブルーローズは返す言葉がなくなる。
わかっている。このままロビンを追いかけてもあいつを捕まえられないことなんて。
それだけじゃなくて、既に中で待機しているバーナビーの足を引っ張りかねないことだって……。
だけどそれも、もし失敗したら?
そうなったら、もうタイガーに会えなくなるんじゃないの?
もうあの笑顔を自分に向けてもらえなくなるんじゃないの?
それを考えただけで、不安で、怖くて堪らなくなる。

「大丈夫ですよ。アカデミーにいた時の彼はとても優秀だったことを僕は知っています。……バーナビーさんを信じましょう?」
「折紙……。うん……わかったわ」

ブルーローズの様子を見て何とか安心させようとそう折紙サイクロンは言葉を紡いだ。
だが、そう言った彼の声も微かに震えていた事にブルーローズも気付いていた。
不安なのは自分だけじゃない。ここにいる全員が同じ気持ちなのだ。
みんなタイガーを助けたいという気持ちを押し殺してすべてをバーナビーに託したのだ。
もう私達にできることはタイガーの無事を祈る事だけなのだ。

「無事に戻ってこいよ、虎徹……」

そう静かに呟いたロックバイソンの声が辺りに響く。
そして、皆ライジングコースターのエントランスから虎徹とバーナビーが現れることを信じて見つめるのだった。
























神様シリーズ第1章第22話でした!!
もう第1章だけで22話も書いていますが、全然終わんないなぁ;
今回はヒーローズのやり取りがメインとなっています!
何となく書いた折紙君が何気にカッコいいと思ったのは私だけでしょうか?
ちなみに「…………あれ?」と言ったスカイハイが可愛いと思ったのも私だけだったりしてww


H.25 4/14



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