「……で、どうするつもりです」
「は? 何が?」

虎徹の言葉にバーナビーが不満そうな表情を浮かべる。

「貴方、まさか本当にスカイハイさんにポイント譲るわけじゃないでしょうね」
「俺は別にポイントなんてどうでもいいけど」
「貴方がよくても僕は困ります。……一応、コンビなんですから」
(相変わらずだね、バニーちゃんは;)

バーナビーの言葉に虎徹は苦笑した。

「ポイントどうでもいいけど、ロビンを捕まえることはスカイハイには無理だろうなぁ」
いくらロビンのNEXT能力がわかったといっても厄介な能力であることにはかわらない。
キング・オブ・ヒーローであるスカイハイでも困難であろうと虎徹は思う。

「……バニーちゃん。ロビンを捕まえるのに、俺と協力する気あるか?」
「その言い方、何か考えがあっての事ですか?」
「おっ! 何だ、興味あるのか? 俺の作戦に♪」

バーナビーの反応に虎徹は嬉しそうに笑う。
それに対してバーナビーは、何処か面倒くさそうな表情を浮かべた。

「貴方に協力するかどうかは、話を聞いてからにします。尤も、貴方の考えた作戦には期待できませんが」
「なっ、何だよ、その言い方は!そういう事は内容を聞いてから言えよ!!」

溜め息をついてそう言ったバーナビーに対して侵害とばかりに虎徹は声を上げた。
そして、ロビンを捕まえる為の作戦をバーナビーに話し出すのだった。






〜神様ゲーム〜








「……ってな感じだ! ……どうだ?」
「…………」

虎徹が作戦について内容を全て話終わっても何故かバーナビーは暫く無言だった。

「バッ、バニーちゃん? 何か言って欲しいんですけど;」
「…………この作戦、本当におじさん一人で考えたんですか?」

そう言ったバーナビーの声は明らかに驚いているようだった。

「当ったり前だろ! 失礼な奴だなぁ!!」
「……すみません。貴方の考えた作戦でしたら、勢いだけで突っ込んでいくものを想像していたので」
「それが失礼だって言ってんだろ!」

バーナビーの言葉に虎徹は、思わずそう声を上げた。

「そうですか。では、言い方を変えてみます。貴方にしてはこの作戦、よく考えられていると思います」
「バニーちゃん。……それ、褒めてくれるのはわかるけど、何で上から目線なの;」

さらりとそう言ったバーナビーの言葉に虎徹は呆れるしかなかった。
今のバニーならこういう言い方しかできないのだろうから仕方ないのだが……。

「で、どうする? 言っとくけど、これに失敗したらロビンを捕まえるチャンスは無くなるぞ」
「僕が失敗すると思いますか? 必ず、確保してみせますよ」
「おおっ!やる気満々だなぁ、バニーちゃん! じゃ、期待してるぜぇ!!」

バーナビーの言葉にバーナビーが作戦に協力してくれることがわかり、虎徹は嬉しさから笑った。
これで、前回のようにロビンを捕まえることができるだろう。

「……ですが、どうしてですか? 作戦を考えたのは貴方ですよね? この作戦だと、僕がポイントを獲得してしまいますけどいいんですか?」

僕だったら、己が得するような作戦を考える。
しかし、この男が考えた作戦は彼自身何も得しないものだった。

「何回も言ってるけど俺はポイントには興味ねぇんだよ。ただ、市民を守れれば俺はそれでいい。後、昼間の事件のこともあったしなぁ……」
「?」
「折角のデビュー戦、俺の我儘に付き合わせてあんま活躍できなかっただろ? それの詫びだよ」

虎徹の言葉に何を言っているのわからないと言っているような表情をするバーナビーに対してそう虎徹は言葉を続けた。
そして、あの時もここでロビンを捕まえたことでバーナビーの注目度と人気はさらに上がるのだ。
そのきっかけをバディである俺が奪うわけにはいかない。

「……それにさぁ……お前だったら、ロビンを必ず捕まえられるって、俺は信じてるからなぁ!」

信じてる。
あの時もそうやったように今回もロビンをバーナビーが華麗に捕まえることを。
お前だから信じて任せることができるんだよ、バニー。

「っ!!」

虎徹の言葉にバーナビーな息を呑んだ。
それと同時に自分の中に熱いものが込み上げて来るのが感じる。
それが何なのかバーナビーにはわからなかったが、彼の口元は自然と笑みを浮かべていた。

「……言っておきますけど、そんなこと言われても僕は感謝しませんから」
「ほんっと、可愛げがねぇなぁ;」

虎徹の言葉を背で聞きながら、バーナビーは回線を繋ぎ、アニエスと連絡を取る。

「アニエスさん、バーナビーです。ロビン確保の為、あるアトラクションの非常口を今すぐ閉鎖していただきたいのですが……」
『わかったわ。で、そのアトラクションは……?』
「……ライジングコースターという、ジェットコースターです」

アニエスの問いにそうバーナビーは言った。





















(くそっ、何処にいるんだ? 残りのヒーローは……)

逃走経路がどんどん狭まっていく中、人気のない狭い通路にいたロビンは徐々に焦りをみせだした。
マヌケなヒーロー達を掻い潜りながら、自分のお目当ての人物をこの巨大な遊園地内を捜し出すのは一苦労である。
さっきまでは実況を行っていたヘリもいたが、スカイハイの風により園内へと追いやられてしまった。
あのヘリが捉えるところには必ずヒーローがいる。
あのヘリを目印にしてヒーロー達を捜していた自分にとって、キングのあの行動は余計な事でしかなかった。
自分とまだ接触していないヒーロー五人の中に必ずいるということがわかっているのに、未だに彼らの許へ辿り着けないことに腹が立つ。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。
必ずこの人物を特定してみせる。

「そこまでよ」

すると、背後から声が聞こえてきたので、ロビンは視線を変える。
そこには肌の露出度の高いセクシーな衣装を身に纏った少女が銃らしきものを構えて立っていた。

「……そろそろ追いかけっこも終わりね」
「本当に終わるかな?」

ブルーローズの言葉にロビンは笑って言った。
丁度いいタイミングでまだ遭遇していないヒーローと出会えた。
それも彼女一人だ。
彼女がお目当ての人物なのだろうか……。

「言っておくけど、あんたの能力はもうヒーロー全員にバレてるんだから! ……それにここは私しかいない。能力を使っても無駄よ!!」
「!!」

ブルーローズの言葉にロビンは瞠目した。
既にヒーロー達全員が自分の能力を知っている。
それは、自分にとって喜ばしい知らせではないが、同時に有力な情報を得られた。

「あちゃ〜バレちまったか……。でも、その口ぶりだとお前が俺の能力を見抜いたわけじゃぁなさそうだなぁ」
「!!」

ロビンの言葉にブルーローズは瞠目した。
鎌をかけたつもりだったが、どうやら当たりだったようだ。
これで、彼女もシロであることが確定し、残りは四人だ。

「……ねぇ、教えてくんない? 俺の能力を見抜いたのは……誰?」
「っ! …………教えない」

ロビンの問いにブルーローズは静かに言った。
ロビンの笑みを見て直感的に感じた。
こいつにタイガーのことを教えてはいけない。
教えてしまったら、確実にこいつはタイガーを狙うような気がしたからだ。
だから、絶対に教えない!

「仲間が危険な目に遭うかもしれないのに、それを見す見す教えるバカがいると思うわけ?」

タイガーは仲間じゃない、ライバルだ。
そう今でも思っていることには変わらない。
でも、あの時私のことを仲間だと笑って言ってくれたあいつの顔が目に焼き付いて離れない。
そう私に笑って言ってくれた事が内心嬉しかったのかもしれない。
だからなのか、自分が思っている以上に必死になっていることにブルーローズは気付いていなかった。
だが、その隙をロビンは決して見逃さなかった。

「健気だねぇ〜、君は。……よっぽど、そいつの事が好きなんだぁ〜」
「っ! だっ、誰がタイガーの事なんて! ……あっ……」

やってしまった。
ロビンの言葉に乗せられて、タイガーの名を口に出してしまった。

「……そうか。ワイルドタイガー、あいつか……」

だが、後悔してももう遅かった。
ブルーローズの言葉を聞いたロビンは笑みを浮かべた。
その笑みはブルーローズには歪んだ笑みに見えた。

「……あんたをここで捕まえる! タイガーの所には行かせないんだからっ!!」

ここでロビンを捕まえる。
それが、自分が犯してしまったミスを取り返す唯一の方法なのだ。
だが、それは簡単な事ではない。
いつもだったら、すぐさまフリージングリキッドガンを撃って氷の柱で犯人を捕まえている。
だが、今回それをやってしまったら、ロビンは自分と位置を入れ替えて自分がその餌食になってしまう恐れがあった為、銃口の引き金をすぐには引けなかった。
絶対にここでロビンを捕まえないといけないのに、その行動を思うようにできないことが歯痒く感じる。

「ちょっと! あんた、何ここでサボってんのよ!!」
「!!」

その刹那に響いた声にブルーローズは瞠目する。
自分とロビンしかいない狭い通路に突如現れたのは、ファイヤーエンブレムだった。

「ちょっ、こっち来ないで……!」

そうブルーローズが忠告した時にはもう遅かった。
ロビンは己のNEXT能力を発動させ、己と通路の入り口付近にいたファイヤーエンブレムの位置を入れ替えた。

「じゃぁねぇ〜。情報ありがとう♪」
「! まっ、待ちなさいよ!!」

必死にロビンをその場から逃がすまいと、フリージングリキッドガンを構えたが、ロビンは再びNEXT能力を発動させ、来場者と入れ替わってその場から離れてしまった。
まずい、ロビンは間違いなくタイガーの許へ向かっている。
早くこの事をタイガーに知らせないと……。
ブルーローズは回線を繋ごうと己の左腕に嵌められたPDAを操作しだす。
焦ってはいけないとわかっているのにその手は震えて、うまくタイガーに回線を繋げられない。

「ちょっと、一体何がどうなってるわけ?」
「少しだけ黙ってて! 早くこの事を伝えないとタイガーが……」
「! それどういう意味? タイガーに何が……!」

そうファイヤーエンブレムが口を開いた時、二人のPDAが一斉に鳴った。
そして、そこから現れたのはアニエスだった。

『みんな! 緊急遺体発生よ! ついさっき、タイガーとバーナビーの手によってロビンからスタチュー・オブ・ジャスティスを奪還したわ!』
(よかった……)

アニエスの言葉にブルーローズは安堵からその場に座り込んだ。
アニエスの話を聞く限り、タイガーは無事のようだ。
ロビンにタイガーが狙われているとわかった時には心臓が止まりそうな思いになったが、全ては杞憂だったようだ。
でも、どうしたろう?
スタチュー・オブ・ジャスティスを奪還したのに、それを言ったアニエスの顔からそれを喜んでいるようには見えなかった。
それに何処か彼女の声は震えているようだった。
そして、それは次の彼女から発せられた言葉ですべてを理解した。

『……それと、バッドニュースが一つ。……タイガーが……ロビン・バクスターに……攫われたわ』

その言葉を聞いた時、ブルーローズの目の前が真っ暗になるのだった。
























神様シリーズ第1章第17話でした!!
今回はタイガーとバーナビーサイドとブルーローズとロビンサイドのやり取りになってます。
もう虎徹さんにあんなこと言われて嬉しいはずなのに素直に喜べないバニーちゃんが可愛すぎるなぁvv
そして、虎徹が知らないところで頑張るブルーローズも可愛すぎるvv
次回、虎徹さんがどうやってロビンに攫われるかを書いていきま〜す♪


H.25 3/20



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