「おい、アニエス! ロ……犯人は今何処にいる?」

遊園地へとバイクを走らせる中、マスクに内蔵された回線を使って虎徹はアニエスに連絡を取った。

『タイガー! あんたこそ何処いるのよ!!』
「いいから、さっさと犯人の位置を言えよ!」

そこから聞こえてきたアニエスの声は明らかに怒っていたがそれを黙らせるように虎徹はそう言葉を続けた。

『……シュテルンビルト市街にある遊園地に逃げ込んだみたいよ。もうすぐ、ロックバイソン達が現場に到着するわ』
(……くそっ! もう着いてやがるのか!)

あの時より早く遊園地へと向かっていたが、ロビンとは違い虎徹は目的地に向かうのにどうしても回り道しなければならなかった。

「……そうか。なら、今すぐ遊園地を封鎖して、市民を避難させてくれ!」
『何言ってんのよ! こんなオイシイ場面……』
「いいから早くしろっ! 市民の安全が懸ってるんだぞ!」
『!!』

そう虎徹が声を上げるとアニエスが息を呑んだのがわかった。

「……説明は現場に着いたら必ずする。頼むから今は俺の言うことを聞いてくれ!」
『……わかったわよ。後でちゃんと説明しなさいよね!』
「頼むぜ、アニエス」

虎徹の頼みにアニエスは仕方なく応じた。
それを聞いた虎徹はアニエスに礼を言うと回線を切ってバイクを遊園地に向かわせることだけに集中させるのだった。






〜神様ゲーム〜








(……どうなってるんだ、こりゃ?)

遊園地内を逃走するロビンはジェットコースターのレーンから辺りを見渡し、周囲の変化に違和感を覚えた。
数分前に園内にNEXT能力を持つ強盗犯が侵入したというアナウンスが流れ、それに従って来場者がスタッフの誘導に従って避難を開始した為だ。
アナウンスの内容もスタッフの来場者への対応も別に問題ない。
寧ろ、それが当たり前の対応だとロビンは思う。
だが、問題なのはその対応の早さだ。
自分がここへ逃げ込んでからあのマヌケな牛と子供で遊んでやってからまだそんなに時間は経っていないのにだ。
まさか、もう自分の能力がバレてしまったのか?
いや、そんなはずはないだろう。
現にあのマヌケなヒーロー達の前で能力を使った後も自分達の身に一体何が起きたのかわからないといったような表情を浮かべていたのをはっきり覚えている。
彼らには間違いなくバレていないのだ。
なら、何故こんなにも遊園地側の対応は早いのだ?
こんなにも迅速に対応できるのは、自分の能力を知っている人間。
そして、自分がここへ逃げ込むことを予知できた人間のみだ。
だが、そんな人間はこの世に存在するはずはない……。

(まさか……!)

様々な思考を頭の中で巡らせたロビンは一つの答えに辿り着く。
現実的にありえないその答えの先にあるものはまさしく自分が捜し求めてきた人物。
やはり、その人物はこの街にいたのだ。
しかも、それはどうやらヒーローTVの関係者の中にいるようだ。
今まで途方もないものを追い続けていたのが、一気に自分の手に届くところまでにやって来たことにロビンは笑いを堪える。
本当は大声で笑ってしまいたい。
でも、そうしてしまってまたマヌケなヒーロー達に囲まれて厄介なことになりかねない。
自分のお目当ての人物は間違いなくヒーローTVの関係者の中にいるのだから少しでもリスクを考えて、一人ずつ接触する方が無難だろう。
とりあえず、現時点ではマヌケな牛と子供はシロだ。
残るヒーローは後六人。
さて、誰から接触すべきか……。

「そこまでだ!」

そんなことを考えている中、一つの声がそれを遮るかのように辺りに響いた。
その声が聞こえた方にロビンが視線を向けると、そこには中世の騎士のような白銀のマスクに白いマントを靡かせて、自分目掛けてビシッと指を指している男が空中にいた。

『おっと、ここで登場! スカァァァイハァァイ!』

すると、このTVの実況をしている男の声が辺りに響く。
スカイハイに指を指されたロビンは少しイラッとしたが、その顔には笑みを浮かべていた。
丁度いい、まずはコイツから試してみるか……。

「ふっ、指を指すな!」

そう言うとロビンはスカイハイに背を向けて、ジェットコースターのレーンを滑走しだす。
それを見たスカイハイはロビンを逃がすまいと狙いを定め、NEXT能力を発動させてロビン目掛けて突風を飛ばす。

「スカアァァァイハアァァァイ!」

スカイハイの手から放たれた突風は猛スピードでロビンを捉える。
普通の人間ならこの攻撃を避けるのは不可能だろう。
だが、ロビンにはそれは通じないことであった。
ロビンはNEXT能力を発動させ、己とスカイハイの位置を入れ替える。

「ぐわぁ!」

自ら放った突風に全身を受け、スカイハイは声を上げる。
スカイハイと位置を入れ替わったロビンは優雅にジェットコースターのレーンの上に着地すると再び滑走する。

(……なーんだ、こいつもハズレかよ)

だったらもう、こいつに用はない。
この男はハズレだったのだから……。

『おおっと! これは一体何が起こったのでしょうか? 今、スカイハイは確かに風の攻撃で犯人を捉えるかに見えました! しかし、何故か攻撃を喰らったのはスカイハイ本人だぁ!』
(バーカ、お前らには一生わかんねぇよ)

マリオの実況を聞きながら、ロビンは軽快に飛ばしていき、巨大な怪獣を檻に閉じ込めるアトラクションの天秤を伝ってそのままケーキを食べようとしている巨大な怪獣のオブジェの上に飛び乗った。
さて、次のターゲットはどのヒーローにするか……。
そんなことを考えていると何処からともなくスカイハイが現れた。

「逃がすものか! ハァーイ! ハイッ!!」

そう言いながら突進するスカイハイの先には、アトラクションのオブジェを吊り上げている装置。
そして次の瞬間、スカイハイはその装置の接合部を破壊し、吊り上げられていたアトラクション用の巨大な檻が落下する。
それによりロビンは怪獣のオブジェ諸共、檻の中に入ることになった。

「あら〜」

ロビンは自分を閉じ込めた檻を叩いてみる。
それはかなり頑強な造りになっているようで、力ずくで檻を破壊することはおろか、人が抜け出す隙間もない造りとなっていることがよくわかった。
まぁ、自分には何の意味もないことであるが……。

「よし!」
『さすが、キング・オブ・ヒーロー! 今季の風も彼に吹いているようです!!』
(こいつが、キング・オブ・ヒーローかよ;)

そんなこととは知らないスカイハイの声とマリオの実況が辺りに響く。
そんなマリオの実況を聞いてロビンは目の前にいる男がキング・オブ・ヒーローであることにガッカリした。
こんなにもマヌケなのにヒーローが務まっているのが不思議である。

「さぁ、大人しくスタチュー・オブ・ジャスティスを渡してもらおうか!」
「……そんなに欲しけりゃ、奪ってみな♪」

檻の中にいるロビンに対してスカイハイはビシッと指を指してそう告げた。
それに対してロビンは余裕の笑みを浮かべてそう言うと再びNEXT能力を発動させる。
その瞬間、ロビンとスカイハイの位置が入れ替わり、ロビンは見事に檻から脱出を果たした。

「えっ……?」

自分の身に何が起きたのかわからないようで、ただただスカイハイは呆気にとられていた。

「悪いけど、ハズレのお前には興味ないんだ。じゃぁね〜♪」
「! まっ、待て!!」

そんなスカイハイに吐き捨てるようにそう言うとロビンはスカイハイの制止を耳に傾けることなくその場を後にする。
遊園地のスタッフが来場者の避難を進めているようだが、突如現れた自分とヒーローにこのエリアの来場者が軽いパニックを起こしだす。
その混乱に乗じて、ロビンは人混みの中を悠然と逃走する。

(あのマヌケなキングもハズレかよ。残りは後五人……)

その中に必ずいる。自分が長年捜し求め続けていた人物がいるのだ。
必ず見つけ出してやる。
ロビンは口元を緩めると次のターゲットを求めてインラインスケートで滑り続けるのだった。
























神様シリーズ第1章第15話でした!!
ヤバイ、ロビンさん書いているのめっちゃ楽しいww
そして、ロビンさんが狙っている人物って皆さんならすぐにわかっちゃいますよね♪
虎鉄さん、ロビンに狙われてるよ!!早く気付いて!!
次回、虎鉄さんが遊園地に到着します!!


H.25 3/13



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