『犯人は未だ逃走中! あのスタチュー・オブ・ジャスティスを奪ってね!』
「おい、それって……」

あの時同様、虎徹とバーナビーはトランスポーターに乗り込んでヒーロースーツを装着するとマスクに内蔵された回線そうアニエスの声が聞こえてきた。

『そう。昔Mr.レジェンドが身を挺して取り戻した平和のシンボル。それが盗まれたってことは何を意味するかお分かり? ヒーローに対する市民の信頼が失われたって事よ。だから、必ず取り戻して! 必ずよ!!』

アニエスに言われるまでもなく虎徹はそう思った。
あの神聖な像を今回もヒーローの面子にかけてロビンから取り戻して見せる!
そう心の中で決意した虎徹はトランスポーター後方にスタンバイされたサイドカーに乗り込んだ。
それに続くようにバーナビーもシートに跨るとトランスポーターの扉が開く。
バイクのアクセルを一気に回し、サイドカーは勢いよく幹線道路へと飛び出していくのだった。






〜神様ゲーム〜








バーナビーがアクセルを全開にし、幹線道路を猛スピードで疾走させる。

『おおっと! ここで新コンビ、タイガー&バーナビーが登場! 息の合った連携プレーで犯人捕獲なるか!!』

すると、ロビンをマークしていたと思われるヘリに乗っていたマリオが声を上げた。
虎徹はマスク側面の耳部分に備え付けられている操作盤を弄り、マスク内臓のモニターカメラをズームさせた。
すると、前方にインラインスケートで逃走しているロビンの姿を捉えた。

「おっ、見えた!」

だが、このままロビンを追いかけても奴を捕まえることができないことを虎徹は知っている。
それをどうバニーに伝えるべきか……。

「余計なことはしないでください」

そんなことを考えていると隣からバーナビーがそう言った。
その声は明らかに冷たかった。

「……お前、まださっきの事、怒ってんのか?」
「怒ってません」
「怒ってんじゃんか; ……って、うわあっ!」

< 虎徹の問いに即答したバーナビーにそう言った途端、虎徹は後方に仰け反った。
虎徹の言葉が癪に障ったのか、バーナビーがアクセルを一気に回し、バイクのスピードを上げたからだった。

「いっ、いきなりスピード上げんなよっ!」
「工事用バリケードがあります。分離しますよ」
「へっ? ちょっ、待て――」

虎徹の言葉に一切耳を貸さないバーナビーはサイドカーのスイッチを操作し、連結していたバイクを二つに分離させた。
虎徹は慌ててバイクのハンドルを掴んで、走行を安定させようと微調整をする。
そして、工事用バリケードにぶつかるギリギリのタイミングで勢いよく飛び越え、無事に着地させる。

(あっ、危ねぇ;)

この操作はこれで二度目になるが、何度やってもこれは冷や冷やする。
すると、何処からともなく同じ幹線道路に一台のバイクが乱入してきた。
そのバイクを運転しているのは、あの時と同じブルーローズだ。

「邪魔!」

ブルーローズは虎徹とバーナビーを一瞥し、そう冷たく吐き捨てるとスピードを上げてロビンとの距離を縮めだす。

「まずい、ポイントが!」
「おい、バニー! このまま追いかけても奴は捕まえられねぇぞ!」

小さく舌打ちするバーナビーに虎徹はそう告げた。
このまま追いかけても、ロビンはNEXT能力を使って反対側の幹線道路へ移動してしまう。
ロビンを迅速に捕まえる為には一刻も早く遊園地へと向かう必要があるのだ。

「何言ってるんですか? このままだと、彼女がポイントを獲得してしまいますよ。先に行きます!」
「おっ、おい! 待てって、バニー!!」

だが、ロビンの能力を知らないバーナビーは虎徹の言葉に耳を傾けず、アクセルを回して虎徹の制止も聞かずにバイクを加速させてしまった。

「……あぁ、そうかよ! 勝手にしろっ!!」

虎徹はそうバーナビーの背中に向かって告げると、バイクの向きを百八十度変え、来た道を逆走する。
虎徹が目指す場所はただ一つ。
ロビンとの本格的な逃走劇の舞台となる遊園地目指してバイクを走らせるのだった。





















(何なんだ、あの男は!)

このままバイクを加速させれば、間違いなく犯人を捕まえることは可能なのだ。
なのに、あの男は無理だと言ったのだ。
ありえないことを口走ったあの男に対して腹が立った。

『ブルーローズ、バーナビー・ブルックスJr.一番早く犯人に辿り着くのはどっちだ!!』
(どういうことだ……?)

マリオの実況にバーナビーは耳を疑った。
実況の内容からあの男が犯人を追いかけていないことがわかった為である。
では、一体あの男は何をしているのか……。

『そして、ワイルドタイガーは来た道を逆走中! 一体何を考えているんだ!?』

バーナビーの疑問に対してまるで答えるかのようにマリオの実況が続き、バーナビーはさらに驚いた。
犯人が目の前にいてポイントを獲得するチャンスなのに、何故それに背を向ける行動をあの男は取る?
市民を守るというあの言葉はやはり、でまかせだったのか?
そんなことを頭では考えながら、バーナビーはブルーローズとバイクチェイスを繰り広げる。
だが、それは突如終わりを告げた。
幹線道路が途中で途切れていることに気付き、二人はバイクのブレーキをかけスピードを落とした。

「……なんでよ?」

そして、その場の違和感にブルーローズが呟く。
彼女がそう呟いたのも無理はない。
僕たちは強盗犯を追いかけていたはずなのに、今目の前にいるのは一人の老婆だったのだ。
肝心の犯人の姿は何処にもなかった。

『あっと! 犯人の姿がない! 一体何処に行ったのでしょうか?』

謎の事態にマリオを思わず声を上げた。

(どういうことだ……?)

僕は間違いなく犯人を追いつめていたはずなのに……。

「あんたのせいで見失ったでしょ!」
「……すみませんが、八つ当たりはやめてもらえませんか」
「なんですって!」

すると、背後からブルーローズが迫り、怒鳴り散らしている。
それをバーナビーは軽くあしらうとさらにブルーローズは声を上げる。
そんなブルーローズを完全に無視してバーナビーは考えに耽る。
この幹線道路でスタチュー・オブ・ジャスティスを盗んだ犯人を発見し、確保すべく追跡していた。
途中、道路は一本道となり、犯人が逃げられる脇道など一つも存在しなかった。
また、この幹線道路はかなり高所に建設されている為、飛び降りたらまず助からないだろう。
何処にも逃げ場のない場で犯人は忽然と姿を消したのだ。
普通の人間ではありえない。NEXT能力者でもない限りは……。
では、犯人は一体どんな能力を持っているのだろうか?

――――おい、バニー! このまま追いかけても奴は捕まえられねぇぞ!

ふと、頭に過ったのはさっきのあの男の言葉だった。
あの男が言っていたのは、この事ではなかったのか?
あの男はあの時点で犯人がNEXT能力であることを見抜いてああ言ったとでも言うのか?
いや、そんなことはありえない。あの男がああ言ったのは単なる偶然だ。
そう思い直したバーナビーはマスク内臓のモニターへと目を向けた。
すると、他のヒーロー達が犯人の姿を捉えたのを見て目を疑った。
その場所とは、僕が立ち往生している建設途中の幹線道路の切れ目とは正反対の方向にある巨大遊園地であった。
この場所からあそこに行くには大きく迂回しなければまず辿り着けない。
一体どうやってあそこまで行ったんだ?
犯人のNEXT能力とは一体何なんだ?
そんなことを考えながら、バーナビーはすぐさまバイクに乗り込むと遊園地目指してバイクを発進させた。
























神様シリーズ第1章第14話でした!!
ついにロビン事件へ突入です!!
バニーちゃんは相変わらず大人げないですww
そんなバニーちゃんをいったん放置して虎徹さんはいち早く遊園地に向かいます!!
次回は何処まで書こうかなぁ……。


H.25 3/13



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