マーベリックの部屋を後にしたバーナビーは自宅へと足を急がせる。 マーベリックさんには早く休むように言われたが、そんな時間は勿体ないと思った。 それでも自宅へと急いでいるのは、少しでもウロボロスの情報集めをしたかったからだ。 そうすれば、あの男のことを考えずに済むだろう。 僕の目的の為にあの男と深く関わる必要なんてないのだから。 会社のエントランスを出て階段を下りだした直後、携帯電話が鳴ったので、バーナビーはそれを手にした。 携帯の着信画面に映る《KOTETSU・T・KABURAGI》という表示があった。 考えているそばからあの男から連絡が来るなんて……。 無視しよう、そう思ったのに着信画面から目が離せなかった。 僕の目的の為、もうあの男とは深く関わらないと思っていたのに、もっとあの男のことを知りたいという思いが何処からともなく込み上げて来る。 「……もしもし?」 気付いた時には、僕は通話ボタンを押して携帯電話を耳に当ててそう口にしていたのだった。 〜神様ゲーム〜 (よし、時間ピッタリだ!) 虎徹はあの時と同じようにビルのエントランスへと上がる階段脇に建てられているグリフォン像の陰に隠れた。 すると、ちょうどバニーがエントランスから現れ、階段を下りてくるのが見えた。 (……かけてもどうせ、また出ないだろうなぁ;) 既に結果がわかっていたが、虎徹はバーナビーに電話をかけた。 すると、バーナビーは着信に気付いたのかポケットから携帯電話を取り出し、着信表示をジッと見つめている。 そして、虎徹の予想に反してバーナビーは通話ボタンを押し、携帯電話を耳に近づけた。 『……もしもし?』 「へぇっ!?」 電話を無視すると思っていた虎徹は携帯電話から聞こえてきたバニーの声に思わず声を上げてしまった。 その声にさすがのバーナビーも虎徹が近くにいることに気付き、グリフォン像へと目を向けて虎徹を見つけると、電話を切った。 「……何なんですか、その間抜けな声は? ……って言うか、近くにいるならこんな手間のかかることしないでください」 「あはは; バレちまったか;」 虎徹の姿を捉えたバーナビーは呆れたようにそう言った。 それに対して虎徹は苦笑いを浮かべるとグリフォン像から飛び降りた。 「だって、バニーちゃんが俺の電話出てくれないだろうなあって思ったんだもん」 「だから、その呼び方辞めてもらえませんか」 拗ねる虎徹に対してバニーと呼ばれたバーナビーの眉間に皺が寄る。 そんなバーナビーの様子など気にすることなく、虎徹は本題を切り出す。 どうせ、一度は断られるだろうと内心思いつつ……。 「なぁ、バニー。……今から飯にでも行かねぇか?」 「!!」 恐る恐る虎徹がそう話を持ちかけると、何故かバーナビーが驚きの表情を浮かべた。 (あっ、あれ? なんか思ってた反応と違うんだけど……?) あの時のバーナビーだったら、こんな誘いすぐに断るはずなのに……? 今、目の前にいる彼は何故か石像のように固まっている。 俺の誘いに呆れて返す言葉もないということだろうか? 「ばっ、バニーちゃん……;」 「…………いいですよ」 「へぇ?」 次の瞬間、バーナビーの口から発せられた言葉に虎徹は耳を疑った。 虎徹の反応にバーナビーは不機嫌そうに眉を顰めた。 「何なんですか、さっきから? 誘ったのは貴方ですよね?」 「いっ、いやそうだけど; バニーちゃんなら、てっきり断るかと思って……」 「断ろうかと思いましたよ、初めは。……ですが、この機会に貴方のことを知るのも悪くないかと思っただけです。嫌なら、別にいいですよ?」 「いやいやいや! 全然嫌じゃないからっ! むしろOKだからっ!!」 バーナビーの言葉に虎徹は慌ててそう言った。 あの時とは違ったが、何とかバニーが誘いにのってくれたことに虎徹はホッとした。 「でも、よかった。これでみんなも喜ぶぞぉ♪」 「みんな?」 ふと、何気なくそう言った言葉にバーナビーの表情が変わった。 そんなことには気付かず虎徹は嬉しそうに頷く。 「おう! 他のヒーロー達とお前の歓迎会をやろうと思ってさ!」 「……帰ります」 「ええっ!?」 虎徹の言葉を聞いたバーナビーは突如踵を返すと歩き出した。 バーナビーの思ってもみない行動に虎徹は驚き、慌ててそれを制止する。 「ちょっ、待てって! なんだよ、突然! 俺、今、みんな待ってるって言ったばっかだぞっ!!」 「僕は貴方と二人で食事に行くと思ったから誘いにのったんです。なのに他のヒーロー達と一緒にだなんて……」 「そんなこと言うなよ、バニーちゃん; この機にみんなとも仲良くなっておいたほうが……」 「僕にそんなもの必要ありませんから。行くなら、おじさん一人で行ってください」 (困ったなぁ……;) こうなったらバニーは絶対自分の意思を変えないだろう。 仕方ない。バニーをあの場に呼ぶのは諦めよう。 あれだけのヒーローが近くに揃っていれば多分問題ないだろう。 そう思い直した虎徹は急遽作戦を変更することにした。 「…………はぁ。わかったよ。バニーちゃんが来ないなら俺一人でも行くわ」 そう言うと虎徹は踵を返すと彼らの待ち合わせ場所であるバーへと向かうとした。 が――。 「ちょっと待ってください」 「だっ!」 バーナビーが虎徹の肩を掴み、何故かそれを阻止する。 「なっ、何すんだよっ! いきなり!!」 「……貴方、僕を誘っておいて、まさか本当にあちらに行くつもりですか?」 「はぁ? 俺が誘ったのはバニーの歓迎会を誘ったんだろ? それ以外何も……」 「僕は、歓迎会は断りましたが、貴方と食事に行くことは断っていません」 「はあっ!?」 バーナビーの言葉に虎徹は目を丸くした。 つまり、バーナビーは虎徹が自分ではなく彼らの方を優先するのが許せないようだ。 「お前が一人でも行けつったから、そうするんだろうが!」 「そんなの言葉の綾じゃないですか」 「綾に全然なってねぇよ!」 虎徹の言葉に平然とバーナビーがそう言いのけたので、思わず虎徹は声を上げる。 「じゃっ、じゃぁ何か? バニーちゃんは俺とデートでもしたいってでも言いたいのか?」 「っ!」 虎徹が冗談でそう言うと何故かバーナビーが固まった。 その反応を見た虎徹は首を傾げた。 「……あれ? マジなの、バニーちゃん?」 「そっ、そんな訳ないでしょうがっ! 誰が、おじさんなんかと!!」 「あっそう。バニーが少しでもみんなのところに顔出すんだったら、その後に付き合ってやってもいいと思ったんだけどなぁ〜」 「…………今の言葉本当ですか?」 (なっ、何で真顔なの!? バニーちゃん;) 冗談混じりでそう言った虎徹に対してバーナビーが真顔でそう言葉を返す。 この反応に少しだけビビりつつも虎徹は頷いた。 「おっ、おう……。まぁ、無理にとは言わないが……」 「行きます」 虎徹の言葉にバーナビーが即答した。 「ですが、少しだけですよ。何度も言いますが、僕は彼らと馴れ合う気なんてないんですから」 「おっ、おう……」 バーナビーの言葉にとりあえず、虎徹は頷く。 条件付きだが、何とかバニーを誘い出すことに今度こそ成功した。 でも、その条件が何で俺と二人っきりの食事なのかがよくわからないが。 今のバニーは俺のことなんてこれっぽっちも信用していないだろうし、むしろ嫌われているはずなんだが……。 でも、俺としては嬉しかった。 どんな形であっても、バニーと二人で食事に行けることが……。 それをバニー本人に伝えることは決してないが……。 「…………何してるんですか? さっさと、行きますよ」 「! ちょっ。ちょっと待てよ! バニー!!」 そんなことを考えている間にバーナビーがスタスタと歩き出していることに気付いた虎徹は慌ててバーナビーを追いかける。 そして、二人は他のヒーロー達が待っているであろうバーへと向かうのだった。 神様シリーズ第1章第12話でした!! 本当はヒーロー達と合流した話まで書きたかったのですが、途中で力尽きました; バニーちゃんがかなり自分勝手な感じになっちゃいました; でも、それがバニーちゃんらしいというか、なんというか面白い感じがします。 次回、ヒーロー達と合流して波乱の幕開けです!! H.25 3/7 次へ |