「はぁ〜。ロイズさん、あそこまで言わなくていいだろ;」 石像事件から会社に戻ってきた虎徹はすぐさま上司のロイズに呼び出され、説教を受けた。 何故バーナビーを置いて行ったのか?バーナビーのセカンドとして立場をもっと考えろっといったことをずっとロイズに説教されたのだった。 それができないのなら、経験だけが取り柄の俺を雇っている意味がないと言われた時はさすがに反論しようかと思ったが、何とかそれを抑えて部屋を後にした。 「さてっと、これからどーすっか……」 あの時は、トレーニングセンターに向かって他社のヒーロー達にバニーの歓迎会に参加をお願いしに行ったのだった。 バニーがみんなと仲良くなりたいという嘘をついて……。 正直、その後の展開を考えると同じ手を使って彼らを誘うのは気が引けるがどうしても彼らを集める必要があるのだ。 この後に待ち受ける事件に早急に対応する為にも……。 そう考えながら虎徹はジャスティスタワーの内部にあるトレーニングっセンターへ向かうのだった。 〜神様ゲーム〜 「たのむよぅ〜、みんなぁ〜;」 「いやよ!」 トレーニングセンターにて虎徹がそう頼むと、ブルーローズことカリーナがはっきりと断った。 アイドルヒーローをやっている彼女だが、亜麻色の長髪の仕上がり具合やネイルなんかを気にするその姿が何処にでもいそうな普通の高校生と変わらなかった。 この頃は、誰に対しても不機嫌そうな表情ばかり浮かべているが、笑うと可愛いことを虎徹は知っている。 「なんであのルーキーの歓迎会なんてわざわざしないといけないわけ? 今までだってやったことなんてないのに」 「だっ、だから! これを機にみんなで仲良くできればよくねぇかなぁって思ってさぁ;」 「仲良く?」 苦笑いを浮かべてそう言った虎徹にカリーナは眉を顰めた。 「馬鹿じゃない! 私達はライバルなのよ!!」 「違うだろ? 俺達は一緒に戦う仲間だ」 「っ///」 カリーナの言葉に虎徹は首を振ると満面の笑みをカリーナへと向けた。 それを見たカリーナは思わず赤面すると、虎徹は背を向けた。 (なっ、なっ、なに、赤くなってるの!? 私っ///) 「おっ、おい; ブルーローズ?ど うかしたか?」 「! なっ、なんでもないわよっ! 歓迎会だっけ? ……行けばいいんでしょ! 行けばっ!!」 「ホントかっ! ありがとうな、ブルーローズ!!」 「っ////」 虎徹の笑みにブルーローズはさらに赤面し、フリーズする。 「な、お前らも来るよな?」 「ん〜、そうは言われてもねぇ」 「いいではないか」 虎徹の言葉に少し渋るファイヤーエンブレムことネイサンがそう首を傾げる。 彼、いや……彼女は、褐色の肌にショッキングピンク短髪ヘアという少しショッキングな出で立ちである。 こう見えても七大企業の一つ、ヘリオスエナジーのオーナーを務めているというのだから、かなりやり手である。 そんな、彼女の言葉を打ち消すかのように爽やかな声が聞こえてきた。 その声の持ち主は、スカイハイことキースであった。 金髪に真っ白な肌と歯、笑顔がよく似合う好青年である。 「私も前々からみんなと交流してみたいと思っていたので、ワイルド君の提案は実にいい案だと私は思う。みんなで楽しもうではないか! そして、レッツエンジョイしようではないか!」 「さっすが、スカイハイ! わかってるじゃねぇか♪」 思わぬキースからの助言に虎徹は嬉しくなり、肘で彼を軽く突いた。 「……まぁ、キングがそう言うのなら仕方ないわね」 キースの言葉を聞いたネイサン達は何に納得したのかよくわからないが、とりあえず承諾してくれたのだった。 「サンキューな、みんな! じゃぁ、俺はバニーを連れてくるから、ここで待ち合わせな!」 虎徹はそう言うとキースに会場となる店の名前と場所、そして待ち合わせ時間を記したメモを手渡すとすぐさまトレーニングセンターを後にするのだった。 「タイガーさん、バーナビーを連れて来られるのかなぁ?」 それを静かに見送ったドラゴンキッドことホァンが首を傾げた。 若草色の髪に全身イエローのトラックスーツに身を包んだ小柄な少女である。 「そうねぇ。あのハンサムを連れてくるのは……」 「無理だな、絶対」 ネイサンの言葉に屈強な身体にオールバックの男が溜め息をつくとそう言った。 「あっ! やっぱり〜?」 それは、ロックバイソンことアントニオであった。 それを見たホァンも同意するように頷く。 「じゃぁ、集まっても意味がないんじゃないの?」 「いや。意味はある」 ホァンの問いにキースがそう口を開く。 「もし、バーナビー君が来られなかったら、別のことで会を開けばいいじゃないか」 「別の会……でござるか?」 キースの言葉に折紙サイクロンことイワンが首を傾げた。 プラチナブロンドの癖のある髪に紫の瞳が印象的な少年は何処かいつも自信なさげな表情を浮かべている。 イワンが疑問に感じたことは、彼だけでなくカリーナ達も同じであった。 キースの言う別の会というのが何なのかよくわからなかった。 「忘れていないかい? ワイルド君がアポロンメディアに移籍したことを」 「「「「「あっ……」」」」」 キースの言葉でカリーナ達はその事実を思い出す。 つまり、バーナビーが来なければ、虎徹の移籍祝いをすればいいというのがキースの考えのようだ。 「もちろん、バーナビー君が来たらそれを含めてやるべきだろうね♪」 それを聞いた彼らは納得するしかなかった。 「……寧ろ、バーナビーが来ない方がいいなぁ」 そう小さくカリーナが無意識に呟いたのは誰の耳にも届かなかったのだった。 「もうあんな男とは組めません。あんな甘い人間……」 その頃バーナビーは社長室でマーベリックに会っていた。 マーベリックは初めからバーナビーが何を言いに来たのかわかっていたようで特に驚く様子もなくバーナビーの話を聞いている。 あの男の考えがわからない。 あの男は僕に「人を助けるのが先決」というようなことを言った。 にも拘らず、たった一人の少年の心を救う為に能力が切れたフリをして解決することができたであろうことを野放しにしてその少年に手柄を譲った。 もしもあの時、あの少年が動かなかったら大惨事を招き、多くの人々の命が犠牲になっていたかもしれないというのに……。 何よりも気に入らないのが、あの楽観的な結末を前提に動くことだ。 そして、それを他人まで押し付ける。 僕が好む論理性や効率性とはまるで対極的なのだ。 そんな男とコンビを組むことなど現実的ではないし、長続きするはずがないのだ。 あの時だって、本当は能力を発動させるつもりなんてなかった。 だが、ふとあの男の言葉を思い出してしまい、気が付いた時には僕の腕の中に少女がいたのだ。 そして、気が付くと次から次へとあの男のことばかり考えてしまっていることにも腹が立つ。 「……まだ、始まったばかりだ」 「しかし……」 そんなバーナビーの気持ちを断ち切るかのようにマーベリックが告げる。 「ヒーロー初のコンビということで、注目されているのは確かだよ。名前を売るチャンスだ」 それにバーナビーは黙ったまま視線を落とした。 「このチャンスを掴まなければ、君が敢えて本名を明かしている意味もなくなる。……違うか?」 「……はい」 「君が追うマークの真相。……君が活躍することで解き明かすきっかけになるんじゃないのかね?」 「!!」 マーベリックの言葉を聞いた瞬間、バーナビーの脳裏にあの忌まわしい光景が浮かんだ。 「……安心しなさい。いつか、きっと両親の仇は――」 「…………はい。わかりました」 バーナビーにそう優しくマーベリックが告げる。 それにバーナビーはそう言うしかなかった。 「さぁ、今日は疲れただろう。ゆっくり休みなさい」 「はい……」 そうマーベリックに促されたバーナビーは席を立つと、そのまま部屋を後にした。 それを見送るとマーベリックは自分のデスクの椅子に着くと溜め息をついた。 「……まったく、バーナビーには困ったものだね」 彼とバーナビーの反りが合わないことは初めからわかっていた。 わかっていて、私は敢えて彼とバーナビーとコンビを組ませたのだから。 あのバーナビーなら彼に好意を持つことはないと確信していたからだ。 だが、その考えをバーナビーに伝える気なんてない。 何故なら、バーナビーは私にとって可愛い操り人形でしかないのだから……。 神様シリーズ第1章第11話でした!! 今回は虎徹とヒーローズの絡みとバニーちゃんとマーベリックの会話となりました。 いや〜、ブルーローズは既に虎徹の笑みにやられてますねvvしかも無意識なところが可愛いなぁ バニーちゃんとマーベリックの会話はただ最後の一文が書きたかったために書きました! 次回、とにかく張っちゃけると思います!(なんだそれ!!) H.25 3/7 次へ |