「しいな! 外部の者を里に招き入れるとはどういうことだ!」

しいなの案内の許、ルークたちはミズホの里へとやってくると一人の男が現れた。
くちなわとは色違いの青い覆面で顔を隠し、目つきも鋭い。

「ああ、処罰は覚悟の上サ。副頭領に伝えとくれ。シルヴァラントの仲間を連れて来たって」
「シルヴァラントの……。貴公らは衰退世界シルヴァラントの人間か?」
「俺様は違うけどな」
「俺とルークも違う」

男の言葉にゼロスとアッシュはそう言った。

「…………わかった。しいな、おまえは俺と来い。貴公らは頭領の家の前で待たれよ」

男はそう言うと里の奥へと消えていった。

「じゃぁ、行って来るよ」

そして、しいなはそう言うと男の後を追うように走っていった。






〜Symphony The World〜








「事情は、しいなから聞いた」

先程の男、おろちという若者に促され、ルークたちは頭領の家の中に入った。
この村では、家に入るときには靴を脱ぐしきたりがある為、その通りにして上がると草を編んだ絨毯のような床、畳というものの上に正座した男としいなの姿があった。
ルークたちは、しいなに倣って正座すると男はそう話を始めた。

「我らの頭領イガグリ老は病の為、この副頭領タイガがお相手仕る。しいなが、おぬしらを殺せなんだことによって、我らミズホの民はテセアラ王家とマーテル教会から追われる立場となった。これはご理解頂こう」
「そんな……本当なのか?」
「間違いない。そのような話になっていた」

驚いたようにそう言ったロイドの言葉に囚人の男はコクリと頷いてそう言った。
頭領の家の前で待っていたとき、アッシュに気絶されていた男は目を覚まし、そのまま大人しくルークたちといたのだ。

「そこで問いたい。シルヴァラントの民よ。おぬしらは敵地であるテセアラで何をするというのか?」
「…………俺もずっと考えていた。ある人に……テセアラまで来て何をしてるのかって訊かれて俺はどうしたいのかって」

タイガの言葉にロイドはそう言った。
目を閉じれば、あの鳶色の瞳が浮かぶ。

「……俺は、皆が普通に暮らせる世界があればいいって思う。誰かが生贄にならなきゃいけなかったり、誰かが差別されたり、誰かが犠牲になったり、そんなのは……いやだ」
「おぬしは理想論者だな。テセアラとシルヴァラントは互いを犠牲にして繁栄する世界だ。その仕組みが変わらぬ限り、何を言っても詭弁になろう」
「だったら仕組みを変えればいい! この世界はユグドラシルって奴が創ったんだろ! 人やエルフが創れたものなら俺たちの手で変えられるはずだ!!」
「はははは! まるで、英雄ミトスだな」

思わず立ち上がってそう言ったロイドの言葉にタイガは声を上げて笑った。

「決して相容れなかった二つの国に生きていく方法があると諭し、古代大戦を終結させた気高き理想主義者。おぬしはミトスのようになれるというのか?」
「俺はミトスじゃない。俺は俺のやり方で仲間と一緒に二つの世界を救いたいんだ」

ロイドは、真っ直ぐタイガを見つめてそう言い切った。

「…………なるほどな。古いやり方には拘らないという訳か。では、我らも新たな道を模索しよう」
「! 副頭領、まさか……」

タイガの言葉にしいなは、ハッとした表情になった。
それにタイガは深く頷く。

「うむ。我らは我らの情報網でおぬしらに仕えよう。その代わり、二つの世界が共に繁栄するその道筋が出来上がったとき、我らは我らの住処をシルヴァラントに要求する」
「要求するって言ったって、俺に決定権があるわけじゃ;」
「何、我らはミズホの小さな引越しをおぬしらが手伝えばそれでいいのだ」

ロイドが困ったような表情を浮かべると、タイガは笑みを浮かべてそう言った。

「……みんな、いいか? ミズホの民を組んでも」
「それで二つの世界の関係が変わるなら」
「まぁ、悪い取り引きではないわね」
「さっさと話をまとめて、プレセアを助けてあげようよ」
「俺様はテセアラが無事なら後はmおまえらの好きにすればいいと思うぜぇ」

ロイドは振り返って皆に問いかけるとコレット、リフィル、ジーニアス、ゼロスはそれぞれをそう言った。

「……ルークもそれでいいか?」
「うん! だって、しいなのこと、信じてるしな!!」
「ルーク……っ///」

笑みを浮かべてそう言ったルークの言葉にしいなは顔を赤らめた。

「アッシュもそれでいいよな?」
「おまえがそう言うな、俺が言うことは何もない」
「よし、決まった。俺たちも二つの世界を変える方法を探す。協力しよう」
「うむ。では、しいなには引き続きロイド殿の同行を命ずる。ただし、今度は監視役ではないぞ。連絡役だ。存分に働けよ」
「はっ、はい!」

タイガの言葉にしいなは、嬉しさを隠し切れないような表情でそう言った。

「しかし、タイガさんよ。そうすっと完全に王家と教会を敵に回すぜぇ?」

柱に寄りかかったゼロスは髪を弄りながら、薄い笑みを浮かべてそう言った。

「では、神子(みこ)様にお尋ねしよう。二つの世界の片方を犠牲にする勢力と二つの世界を生かそうとする勢力。どちらにつかれる?」
「有利な方――と、言いたいが、まぁ、普通は生かす方に力を貸してやりたいわな」
「そういうことです」

ゼロスの言葉にタイガは頷くと、ロイドの方を向いた。

「我らは当面、レアバードの発見に全力を尽くします。幸いしいながレアバードに式神を憑けていたようですので、そちらを辿ればいずれ発見できるでしょう」
「わかりました。よろしくお願いします」

そう言うとルークたちは、頭領の家を後にした。

















「そういえば、あんたの名前は?」
「…………リーガルだ」
「リーガルか。あんたには悪いけど、もう少し捕虜でいてもらおうか」
「……ねぇ、せっかくだしリーガルさんにも、一緒に戦ってもらったらどうかな?」
「なっ、何言ってるんだよ、ルーク!? 裏切るかもしれないのに!?」

ルークの提案にジーニアスは、目を瞠ってそう言った。

「こいつは彼女と話したいから、彼女がそういう状態になるまでは俺たちには危害を加えない、って言いたいのか?」
「そういうこと♪」

アッシュの言葉にルークは、笑みを浮かべてそう言った。

< 「まぁ、あたしも最初は敵だったし」
「そうね……悪くないアイデアね」
「ねっ、姉さんまで;」

ルークの提案に賛成するリフィルたちにジーニアスは少し肩を落とした。

「……ということだ。どうだい?一時的にでも、俺たちの味方として戦えるか?」
「…………よかろう。私は我が名とこの手の戒めに賭けて、おまえたちを裏切らぬと誓おう」

ロイドの言葉にリーガルは、頷くとそう宣言した。

「わかった」
「よろしくお願いします、リーガルさん!!」

ルークは、リーガルの前に立つと嬉しそうに微笑むのだった。
























Symphonyシリーズ第5章第7話でした!!
今回はほぼロイドがメインな感じになっちゃいましたww
タイガさんとの会話だから仕方ないかな?
そして、ついにリーガルさんも仲間に!!これで、パーティメンバー全員集合!!
次回は、プレセアちゃんの村、オゼットへ!!


H.25 4/14



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