「どうしたんだ、ルーク? 何か顔色悪いみたいだな?」

ルークの顔色が悪いことに気付いたロイドはそうルークに尋ねた。

「うっ、うん……。昨日はあんまし、眠れなかったんだよなぁ」
「! まっ、まさか、ルークちゃん! アッシュに変なことされて――」
「ゼロス、おまえはそんなにこの世とおさらばしたいようだな?」

笑みを浮かべるゼロスにアッシュは、背後から容赦なく剣を突きつけた。

「じょっ、冗談だってばっ! だから、それをしまえって!!」
「うるせぇ! 笑えねぇ冗談なんて言うじゃねぇよっ!!」

お決まりのように怒鳴るアッシュにルークは小さく溜息をつくのだった。






〜Symphony The World〜








「うわぁ……。不気味なところだなぁ;」

ルークたちの目の前に広がった光景は薄暗く、なんとも不気味な森だった。
「すご〜い! 暗いねぇ〜♪」
「コレットちゃん、緊張感ねぇな……;」
「えへへへ、ごめんね」

ゼロスの言葉にコレットは苦笑してそう言った。
そのとき、ルークはアッシュが咄嗟に剣を手にかけたのが見えた。

「どうしたの、アッシュ? ……!」

ルークはアッシュに問いかけたが、すぐにその理由がわかった。
森のほうから教皇騎士団の騎士たちが現れたからだった。

「おおっと……。教皇騎士団かよ;」
神子(みこ)ゼロス様。教皇はあなたが邪魔なのだそうですよ」
「…………そんなこたぁ、ガキの頃から知ってるさ」

騎士の言葉にゼロスは、眉を顰めるとそう言った。

「では、話が早い。死んでもらいましょう!」

そして、一気にゼロスへと斧を振り下ろした。

「ゼロス!!」

それを見たロイドは双剣を抜き、騎士たちを斬りかかろうとした。

「深淵へといざなう旋律

トゥエ レィ ツェ クロア リュオ トゥエ ズェ」

そのとき、辺りに美しい旋律が響き渡った。
そして、その美しい旋律が騎士たちを眠りへと誘い、バタバタと倒れていった。

「大丈夫、これで暫くは起きてこないから♪」
「……ルーク……おまえ、ユリアの譜歌(ふか)を歌えたのか?」
「うん。ティアに教えてもらったんだ! あっ、でも、七番目の譜歌(ふか)の象徴は、教えてくれなかったけどな」
「そうか……」

ルークの言葉に納得したようにアッシュはそう言った。

「けどさ、これからどうするの?」
「決まってる! こいつらが目が覚める前に……」
「ずらかるんだね。でも、何処へ?」
「もしかして、アルテスタさんのところ?」
「そういうこと!」

コレットの言葉にロイドは、そう言うと一気に森の中へと駆け出した。
その後をルークたちも続いて走り出した。

















「どうしたの、コレット?」

ガオラキアの森の中を進む中、突如コレットの足が止まり、ある方向へと向いた。
それに気付いたルークがコレットの問いかけた。

「何か……遠くから足音が聞こえる……」
「足音? 俺様には、何も聞こえないけどなぁ?」

コレットの言葉にゼロスは耳をすませたが、何も聞こえなかったのか不思議そうに首を傾げた。

「コレットは、天使としての聴覚機能をまだ持っているのね」

だが、コレットとずっと旅をしているリフィルは納得したようにそう言った。

「……やっぱり、足音です。あと鎧の音。たくさんいるみたい。あっちから聞こえてくるよ!」
「まずいな。あっちはアルテスタが住んでいるほうだ。まさか、さっきの連中の仲間か?」
「コリンを偵察に向かわせるよ」

しいなは、そう言うとすぐにコリンを召喚した。
しいなの足元がボンと音と共に煙が立ちこめるとそこからコリンが現れる。
そして、コリンはコレットが指差していた方向へと走り去っていった。
木々が不自然に揺れたと思ったそのとき、頭上からひとつの人影か落ちてきた。
その人影は以前、メルトキオの下水道で現れた男だった。
「こいつ、メルトキオの下水道にいた奴だ!」
「次から次へと教皇の奴!そんなに俺様が邪魔かっつーの」
「私はおまえたちと戦うつもりはない。その娘と話がしたいだけだ」

武器を構えるロイドたちに対して、男はプレセアを見つめてそう言った。

「プレセアと……?」
「冗談じゃない! ボクらを狙ってたくせにっ!!」

それを聞いたルークは不思議そうに首を傾げ、ジーニアスは憤慨したように怒鳴った。

「他の者たちは知らないが、少なくとも私はおまえたちの命など狙っていない。私が命じられたのは、コレットという娘の回収だ」
「……私?」

男の言葉にコレットは、不思議そうに首を傾げた。

「今のおまえたちに危害は加えぬ。プレセア……と言ったか? その娘と話をさせてくれ」

そう言うと男は、プレセアへと近づいた。
そして、プレセアの胸元にあるエクスフィアを見た途端、表情が一変した。

「……エクスフィア!? おまえも被害者なのか!!」

男は鋼鉄の手錠がついた両手をプレセアへと伸ばしたが、それをプレセアは手で振り払った。

「プレセアが危ない!」
「何が何だが知らねぇけど、とりあえずあの男を止めよう!」

そう言うとロイドは双剣を握り直して構えた。
だが――。

「ぐぅっ!」

突如、男は呻き声を上げるとそのまま倒れ込んだ。

「なっ、なんだ?」

一瞬何が起こったのかわからなかったロイドだったが、アッシュの姿を見て理解した。
アッシュはいつの間にか男の背後に回り込んで、男の首筋を突いたのだ。
無駄な戦闘を避ける為に……。

「どうやら事情がありそうね。捕虜にしたらどうかしら? 色々と話も聞けそうだわ」

リフィルがそう言ったとき、偵察に行っていたコリンがルークたちの許へ戻ってきた。

「しいな! たくさんの兵士がいたよ! みんなこっちに向かってる! 急いで逃げて!!」
「コレットの耳は正確だね」
「うん。……足音どんどん大きくなってる」
「まずいじゃねぇか?」
「でも、このまま戻っても教皇騎士団がいるだろ?」
「うん。……もう、譜歌(ふか)の効果はきれてると思いし……」
ロイドの言葉にルークは頷くとそう言った。
まさに、絶体絶命である。
すると、そんな状況を見たしいなは、何かを諦めたかのように溜息をついた。

「…………仕方ない。ミズホの里に案内するよ」
「おいおいおい、しいな。ミズホの民は外部に秘密の隠れ里なんだろ?」

それを聞いたゼロスは、驚いたように目を瞠った。

「だけどこのままじゃ、挟み撃ちだよ。里に逃げ込むしかないだろ」
「そうだな。頼むよ、しいな」

しいなの言葉にロイドは頷くとそう言った。

「じゃぁ、ゼロス。そのでっかい男を運んどくれ」
「俺様が!? こんな大男、俺様一人で運べるかっつーの!」

ゼロスは男を動かそうつ試みたが、そう簡単には動かなかった。

「私、手伝うね! ゼロス一人じゃ大変だもの」
「コレットちゃんは優しいなぁ〜♪ 同じ神子(みこ)同士だもんなぁ〜♪」
「うん、そうだね♪」

コレットは微笑むと男の腕に手を掛けた。
そして、軽々と男を持ち上げてしまった。
しかも、腕一本で。

「「「「!!」」」」

それを見たゼロス、ロイド、ルーク、アッシュは驚いて目を瞠った。

「思ったより軽いみたい〜♪ 私一人で大丈夫だよ!」
「ははは……そう……;」

笑みを浮かべてそう言ったコレットに対して、ゼロスは乾いた笑みを浮かべた。

「昨今の男性と来たら……嘆かわしいこと」

それを見たリフィルは、呆れたように呟いたのが聞こえた。

「ほら、とっとと行くよ!」

そんな状況を知ってか知らずか、しいなはどんどん先へと進んでいく。
その後を追いかけるような形でルークたちは一度ガオラキアの森を出る。
そして、ミズホの里へと向かうのだった。
























Symphonyシリーズ第5章第6話でした!!
ガオラキアの森へとやってきました!!
そして、ここでまたルークに譜歌(ふか)を歌わせちゃいましたvv
戦闘シーンを書くのが面倒だったもので;
何気にアッシュはルークが譜歌(ふか)を歌えることを知らなかったしvv
まぁ、アッシュの前でルークが譜歌(ふか)を歌ったのはこれが初めてだったから仕方ないけど。
次回は、ミズホの里へ入りま〜す♪


H.25 4/14



次へ