「ウンディーネ!」

エレカーに乗り込むとしいなは、ウンディーネを召喚した。
海面の水が弾けるとそこからウンディーネが現れた。
ウンディーネがエレカーに力を与えるとゆっくりとエレカーが動き出した。
こうして、ルークたちはサイバックを目指した。






〜Symphony The World〜








サイバックの入り口へとやってきたルークたちの足が止まった。
入り口に鳶色の髪と瞳を持つ男がいたから。

「…………クラトス」

そうポツリとルークは、彼の名を呟いた。
それが聞こえたのかクラトスは、ゆっくりとルークたちへと近づく。
それを見たロイドがクラトスの前へと飛び出すと双剣を構えた。

「くっ! コレットを連れて行くつもりか!!」
「……街中でおまえとやり合うつもりはない」
「うわっ!」

そう言うとクラトスは、腰にある剣を一気に引き抜くと、ロイドの双剣を弾き飛ばした。
それにロイドは、思わず声を上げた。

「おまえの腕では、まだ私を倒すことは出来ないだろう」
「バッ、バカにするな!」
「事実を言ったまでだ」
「ぐっ……」

冷静なクラトスの言葉にロイドは、言葉に詰まった。
クラトスの言う通りだ。
今の俺ではクラトスを倒すことは出来ない。
自分の考えを表情から読み取ったのかクラトスは、フッと笑みを浮かべると剣を鞘へと収めるとコレットへと近づいた。

「再生の神子(みこ)。生きたいと思うなら、その出来損ないの《要の紋》を外すことだ」
「……いやです」

クラトスの言葉にコレットは、真っ直ぐクラトスを見つめそう言った。

「これは、ロイドが私にくれたものだから、絶対に外しません」
「…………馬鹿なことを」

コレットの言葉を聞いたクラトスは、何処か哀しそうにそう言った。
そして、そのままコレットの横をすり抜けて、街の外へと出て行った。

「あいつ、コレットを狙って来たわけじゃないのかな?」

予想外のクラトスの行動にジーニアスは、不思議に首を傾げてそう言った。

「しっかし、偉そうな奴だな。すかした喋り方しやがって。誰かさんにそっくりだな」
「…………ゼロス。それは俺に言ってるのか?」
「あったり〜♪ さすが、アッシュ……って、わーーっ!!」

ゼロスがそう言ったのとほぼ同時にアッシュの剣がゼロスへと飛んだ。
それを間一髪のところでゼロスは避けた。

「危ねぇだろうが、アッシュ!」
「うるせぇ! てめぇがふざけたことを言うからだ!!」
抗議するゼロスに対して、アッシュは怒鳴った。

「あの……」

すると、プレセアが静かに口を開いた。

「さっきから、ルークさんの姿が見当たらないのですが?」
「「「「「「「!?」」」」」」」

プレセアの言葉にアッシュたちは瞠目した。
彼女の言う通り、ルークの姿は何処にもなかった。

(あのバカ!)

それだけでアッシュは、ルークの行動の意味を理解した。
そして、すぐさま踵を返すと街の外へと走り出した。

「おっ、おい、アッシュ! 何処に行くんだよ!!」
「うるせぇ! てめぇらは大人しくそこで待ってろ!!」

ゼロスの言葉にアッシュは、そう吐き捨てるとそのままある方向を目指して走った。
ルークのいる方向へ……。
















「クラトス!」

自分の名を呼び声にクラトスは振り返った。
そこにいたのは、夕焼けのように赤い長髪に美しい翡翠の瞳を持つ少年だった。
彼はここまで走って来たのか、少し息が上がっているようだった。

「ルーク……」

その人物の名前をクラトスは、零すようにそう言った。
「よかった。……何とか追いついて♪」
「……何しに来た」

笑みを浮かべるルークに対して、クラトスは冷たくそう言った。

「……クラトス、本当のことを教えてよ」
「本当のこと? 私はおまえたちを騙していた。それが真実だ」
「それは違うだろ」

クラトスの言葉にルークは、首を振って否定した。

「……確かに、クラトスは俺たちのことを騙してたかもしれないよ。でも、それには何か訳があるんじゃないの?」
「…………」

ルークの言葉にクラトスは黙り込む。

「クラトス、教えてよ。一体、独りで何をしようとしてるの?」

曇り一つない翡翠の瞳がクラトスの瞳を捉える。
この瞳には嘘がつけない。
そう思いクラトスは口を開きかけた。

「ルーク!!」

そのとき、ルークに似た怒声に近い声が辺りに響いた。
その声に視線を返るとそこにいたのは、ルークそっくりな少年の姿。
強いて違いを言うのなら、前髪を後ろへと撫で付けているところと服装くらいだ。

「アッ、アッシュ!?」

突然現れた彼にルークは、驚いたようにそう言った。
ルークにアッシュと呼ばれた少年は、ずかずかとルークに歩み寄る。
アッシュはここまで全力疾走したのか、かなり息が荒い。

「ルーク! 勝手に離れやがって、どういうつもりだ!!」
「ごっ、ごめん; ……クラトスにどうしても訊きたいことがあったからさ」
「だからと言って、勝手な行動をするなっ! 心配するだろうが!!」
「ごっ、ごめん……;」

アッシュの物凄い剣幕にルークは、少しビビリつつ謝るのだった。

「…………」

そんな二人のやり取りをクラトスは静かに眺めていた。
容姿はそっくりな二人だが、こうやって見ると全然違うことがわかる。
そして、ゆっくりとクラトスは、踵を返して歩き出そうとした。

「! 待ってよ、クラトス! 俺、まだ本当のことを聞いてないよ!!」
それに気付いたルークがクラトスに言った。

「私には、おまえに話すことなどない。それに……」
――――どういうことなんだ! クラトス……答えろ!!

一瞬脳裏に浮かんだのは、≪救いの塔≫で見たロイドの顔だった。

「それに……知らなくていい、真実もある」
「えっ……?」

クラトスの言葉に意味をルークは、理解することが出来なかった。
そのルークの表情を見たクラトスは、フッと笑みを浮かべた。

「…………ルーク。ロイドのこと……頼む」
「!?」

そう言ったクラトスの言葉にルークは瞠目した。
そして、その言葉について口を開きかけたとき、クラトスの背中に蒼い羽が出現し、そのまま飛び立っていった。

「待って! クラトス!!」

ルークはクラトスを呼び止めたが、クラトスはそのまま飛び去ってしまった。

「どういうことだ?」

飛び去って言ったクラトスを見てアッシュはポツリと呟いた。

「奴とあいつは、一体どういう関係なんだ?」
「わかんないよ。けど……」

アッシュの問いにルークは、一度言葉を切った。

「……ちょっとだけ、心当たりはあるけど」
「心当たり?何だ?」
「それは……まだ確証がないから言えないよ」

俺がロイドたちと出会って間もないとき、俺は何気ない一言を言った。
そのときリフィルさんやジーニアスには呆れられたが、クラトスは違った。
明らかに動揺していたのだ。
『……じゃあ、ロイドとクラトスさんって……親子なの?』

この一言にクラトスは、動揺したのだ。
もしかしたら、ロイドとクラトスは本当に親子なのかも知れない。
でも、それを確かめる術がない。
あるとしたら、方法はだた一つだけ……。
「……仕方ない、もう戻るぞ。あまり、あいつらを待たせるわけにはいかねぇだろうが」
「うっ、うん……。そうだね」

アッシュの言葉にルークは頷いた。
そして、二人はサイバックへと戻って行った。
























Symphonyシリーズ第5章第4話でした!!
久しぶりの更新で〜す。正直タイバニパラレル小説ばっか書いていたので何処まで書いていたか忘れちゃいました;(おい!)
っというわけで、今回はクラトスとの再会です!!
ここでルークは、ロイドとクラトスの親子関係に何となく気づきます。
そして次回、ルークはそれを確認するための行動に出ます。


H.25 4/2



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