「ん? ……ルーク、どうしたんだ、そこ?」

ロイドはルークのある部分を指差してそう言った。
そこには何やら蚊に刺されたような痕があった。
「えっ? あっ! その。……ゆっ、夕べ蚊に刺されたみたい///」

それにルークは、顔を真っ赤にしてそう言った。

「そうなのか? 薬とかつけなくて大丈夫か?」
「だっ、大丈夫だよ! 心配ないから!!」

薬を取り出そうとするロイドをルークは、苦笑しながら止めるのだった。

「……な〜に、アッシュ? 昨日、やっちゃったのか?」

それを遠くで見ていたゼロスはニヤニヤしながら、アッシュに話しかけた。

「うるせぇ、ただの未遂だ」
「みっ、未遂って;」

いつもと変わらぬアッシュの口調にゼロスは、返す言葉が見つからない。

「そういう、おまえはどうだったんだ?」
「いや〜、俺様もロイドくんを押し倒してみたりはしたけど。……って、なんで俺様がロイドくんを襲うんだよ!!」

初めはノリノリでそう言っていたゼロスだったが、後になると眉を顰めてそう言った。

(……まだ、無自覚か)

それにアッシュは、少し呆れたように息をついた。

「なっ、なんだよ〜。その反応は」
「……どうでもいいが、さっさと自分の気持ちに気付くべきだぞ」
「はぁ?」

アッシュの言っている意味がわからないといった感じでゼロスはそう言った。
そんなゼロスを無視してアッシュは視線を変えた。
そこにいるのは、笑みを浮かべる愛しい半身の姿。

「…………失ってから、そいつの大切さを気付くのは、遅いんだからな」

そして、静かにそう呟くのだった。






〜Symphony The World〜








「来たな。準備は出来てるぞ」

ルークたちが、精霊研究所へと訪れるとこの前応待してくれた男が現れた。
「エレカーは?」
「くちなわが運んで行ったぞ」
「くちなわが?」

男の言葉にしいなは眉を顰めた。
くちなわはしいなの幼馴染である。

「なんだ? くちなわが話してるかと思ったが、聞いてなかったのか? グランテセアラブリッジの横にある人工海岸に行ってくれ。そこにくちなわが待機しているはずだ。それとこれを持っていけ」

男はそう言うと一番近くにいたロイドにあるものを手渡した。
それは手の中に収まるほどの小さなカプセルのような物だった。

「なんだ、これ?」
「なんだって……ウィングパックだ。これにエレカーをしまうんだよ」
「これに!? エレメンタルカーゴってこんなに小さいのかよ!」

呆れたようにそう言った男の言葉にロイド驚いたようにそう言った。

「そうか。シルヴァラントにはウィングパックがないんだな。さすが田舎者!」
「田舎者で悪かったな!」
「でひゃひゃひゃ、そんなに怒るなよ! 後で使い方、教えてやるからさ♪」

恥ずかしそうに怒鳴るロイドの反応を見てゼロスは楽しそうに笑みを浮かべた。

「ん? どうしたの、ルークちゃん?」

すると、何やら落ち込んでいるルークの姿を見てゼロスは首を傾げた。

「……いやだってさぁ、俺も……ウィングパックが何なのか知らないからさぁ;」
「ルーク……。こいつらとおまえは違うから気にすることはねぇぞ」
「そうそう。ロイドくんは本当に田舎者だし♪」
「だから、田舎者で悪かったなっ!」

ルークの言葉にアッシュ、ゼロス、ロイドがそう言うとルークは思わず笑みを浮かべた。

「さっ、そろそろ行こうぜぇ」
「ちょっと待っとくれよ。出ておいで、コリン!」

外に出ようとするゼロスを呼び止めるとしいなはコリンを呼び出した。
しいなの近くにある机の上にポンと煙が上がるとそこからコリンが現れた。

「暫くお別れだ。みんなにお別れを言っておきなよ。……大丈夫。もう変な実験はされないよ」

現れたコリンにそうしんなは優しく言った。

「コリン。元気だったか? しいなのこと頼むぞ」
「ここキライ! ……コリンは、しいながいるから寂しくないモン!!」

男がコリンに近づいてコリンに触ろうとするとコリンはすぐさま後退してそう声を上げた。

「コリン! そんなこと言わないの」
「…………さようならっ!」

しいなに叱られたコリンは、そう言うとすぐに煙となって消えた。

「やれやれ。やっぱり嫌われてるなぁ……」

それを見た男は少し哀しそうな表情でそう言った。

「……じゃぁ、気を付けていきなよ、しいな」
「ああ……ありがとう」

男の言葉にしいなは頷くとルークたちは精霊研究所を後にした。

















「右の階段を降りたところにくちなわがいるはずだよ」

グランテセアラブリッジに着くとしいなは階段を指差してそう言った。

「よし! じゃぁ、行こうか!」

それにロイドたちは、頷くと階段へと向かった。

「……あれ? 鍵がかかってる……」

階段の前にある扉にルークは、手をかけたが開かなかった。

「ん? 本当だな。こんなものてきとーに……ほら、開いた」

ルークの言葉にロイドが覗き込むとすぐさま鍵穴を弄り始めた。
そして、数分もしないうちに鍵を開けたロイドが扉を開けた。

「すごーい! さすがロイド!!」
「手先だけは器用だよね」
「顔は俺様には負けてるけどな♪」
「顔は関係ないだろっ!」

コレットが手を叩いて喜び、ジーニアスはウンウン頷き、ゼロスは楽しそうな笑みを浮かべてそれぞれそう言った。
ゼロスの言葉にロイドは吠えるようにそう言った。

「まぁまぁ、とにかく行こうや♪」

そんなことは全く気にしないゼロスは、さっさと階段を降りて行った。
それにロイドたちも続いて行った。

「……アッシュ? どうかしたの?」

すると、アッシュがその場から動こうとしなかったのでそれを不思議に思ったルークが首を傾げた。

「…………いや、なんでもない。行くぞ」

それにアッシュはそう言うとさっさと階段を降りて行った。
アッシュの反応にあまり納得してないが、仕方なくルークもその後に続いた。
既に階段を降りていたロイドたちは、くちなわと話をしているようだった。

「よーし、ロイドくん。さっきのパックを使ってみ?」
「えっと……こうか?」

ゼロスの言葉にロイドは、ウィングパックをエレカーに翳した。
すると、巨大なエレカーが風に包まれ、その風がすうっとパックへと吸い込まれていった。

「うわっ!?」
「すご〜い! 不思議だね!!」
「うわー! どうなってるんだろう!!」

それを見たロイド、コレット、ジーニアスは驚いたようにそう言った。

「…………どうして、見覚えがあるのかしら……」
「……リフィルさん?」

ポツリと呟いたリフィルの言葉にルークは首を傾げた。

「いっ、いえ……何でもないのよ」

それに気付いたリフィルは、少し困ったような笑みを浮かべてそう言った。
その頃ロイドたちは、エレカーを出し入れしてはしゃいでいた。

「……おい。はしゃぐのはそのくらいにして、そろそろ出発したらどうだ?」

それに呆れたように息をついてからアッシュはそう言った。

「そうだな。よーし、エレカーか! 盛り上がってきたぜ!!」
「どうせ、すぐに飽きるクセに……」

張り切るロイドにジーニアスはボソリとそう呟いた。

「さぁ、行こうか。目指すはサイバックだよ!」
「……しいな、これ持っていけよ」

くちなわは、しいなに何かを手渡した。

「御守りかい?」
「ああ、気をつけてな!」
「くちなわ。……ありがとう!」

くちなわの言葉にしいなは、笑みを浮かべるとそう言うのだった。
























Symphonyシリーズ第5章第3話でした!!
結局、昨晩は未遂(?)で終わったらしいルークとアッシュ。
キスマークをロイドに見られてルークはすごく恥ずかしがるのがやっぱ可愛いww
アッシュに対してのゼロスの言葉は、シャレで答えてますねぇ
次回は、サイバックにてクラトスと再会です!!


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