「漸く、街に入れたな」

< あれから何だかんだあったが、ルークたちは無事にメルトキオの街に入ることが出来た。

「あぁ、これで仲間に会えるよ」

ロイドの言葉にしいなは頷いた。

「しいなの仲間って、何処にいるんだ?」
「精霊研究所ってところさ。あたしはそこで召喚の術を学んだんだ。コリンの生まれたところでもあるんだよ」
「えっ? コリンが!?」

しいなの言葉にジーニアスが驚いたような顔をした。

「言ってなかったかい? コリンは人工精霊なんだよ。あたしが召喚術を習得する練習に付き合ってくれて、そのまま我が儘を言って引き取ったのさ。あたしの……大事な大事な友達だよ」

そう言ったしいなの表情はとても穏やかなものだった。
そして、自分は皆に見られていることの気付いて、しいなは慌てて手を叩いた。

「なっ、何でもいいからっ! さっさと、行くよ!!」
「そうだな。その精霊研究所ってとこに急ごうぜ!」

こうして、ルークたちは精霊研究所へ向かった。






〜Symphony The World〜








「…………すげぇ、でけぇ」

とある屋敷の前にやってきたロイドはポツリと呟いた。

「そうだろう♪ これが俺の屋敷だぜぇ♪」

それを聞いたゼロスは、何処か誇らしげにそう言った。
精霊研究所へ向かったルークたちは、エレメンタルカーゴで海を渡ることになった。
元々陸用のそれを海を渡るように改造するのに一晩かかる。
その間、ゼロスの屋敷で休むことになった。
アッシュやしいなはゼロスの屋敷に教皇の手先が待ち伏せしているのではないかと反対したが、危険なのは何処にいても同じだとロイドは主張しルークもそれに同意した。
それによってアッシュたちも納得してここへとやってきたのだ。

「まぁまぁ、とりあえず入ってくれよ」

ゼロスは、そう言うと屋敷の扉を開けた。
中へと入るとルークたちは、数人のメイドたちに出迎えられた。
それに慣れているルークやアッシュ、ゼロスは普通だったが、ロイドたちはかなり驚いたようだった。

「お帰りなさいませ。神子(みこ)様、アッシュ様」

すると、ルークたちに一人の執事らしき男が近づき、深々と頭を下げた。

「おう。お帰りになられたぜぇ。何か変わったことはあったか?」
「教皇様とテセアラ十八世陛下の使者より、神子(みこ)様が戻られ次第通報するように仰せられましたが」
「無視していいからな」

執事の言葉にゼロスはあっさりとそう言った。

「はっ、さようでございますか。そちら様は……?」
「俺様のハニーたち♪」

執事の言葉にゼロスはニッコリと笑ってそう言った。

「まっ、てけとーにくつろいどくれや」
「何かございましたら、私セバスチャンまでどうぞ。ハニー様」

ルークの顔をみて少し驚いたような表情を浮かべたがセバスチャンはそう言うと奥へと戻っていった。

「誰がハニーだっつーの! 誰が!!」
「まぁまぁ、そんなに怒んなよ、ロイドくん♪」

半眼になってそう言ったロイドにゼロスはm笑みを浮かべてそう言った。

「んじゃ、ルークちゃんは俺様の部屋に行こっか♪」
「おい、待て」

さり気無くルークの肩に手を回して歩き出そうとしたゼロスの肩をアッシュがしっかりと掴まえた。

「なんで、おまえが当たり前のようにルークを連れて行くんだ! ルークは、俺の部屋に決まってるだろうが!!」
「え〜〜っ! そりゃないでしょ、アッシュ;」
「何か文句あるか?」
「いえ……ないです;」

有無を言わせないアッシュの発言にゼロスは渋々そう言った。

「じゃぁ、ロイドくん。一緒に寝ようぜぇ♪」
「やだよ! 気持ち悪いなぁ!!」
「ガ〜〜ン。ひっ、酷いなぁ、ロイドくん;」
「ゼロスくん……フラれました」

ガックリと肩を落とすゼロスを見てプレセアはそう言った。

「うぅっ……。じゃぁ、コレットちゃん♪ 俺様と一緒に寝ようぜぇ♪」
(バ〜カ。コレットが一緒に寝るわけないだろ)

気を取り直してそう言ったゼロスを見てロイドは小さく鼻で笑った。
が――。

「うん、いいよ!」
(えっ!?)

予想外のコレットの発言にロイドは瞠目した。
「ヨッシャ♪ じゃぁ、早速俺様の部屋に――」
「待て待て待てーーーー!!!」

すぐさまコレットを連れて行こうとするゼロスの前にロイドは立ち塞がった。

< 「コレットとおまえが一緒なのは絶対ダメだ!!」
「何でよ? コレットちゃんはOKしてくれたじゃん」
「ダメなものは、絶対ダメだっ!!」
「………じゃぁ、ロイドくんが一緒に寝てくれるか?」
「う゛っ、それは……」

ゼロスの言葉にロイドに言葉に詰まった。

「嫌なら、コレットちゃんと――」
「うわーーぁっ! わかったから! 俺が一緒に寝ればいいんだろっ!!」

言ってしまった。
だが、コレットの身を守る為には仕方ない。

「本当か? 俺様、マジ嬉しいぜぇ♪」
「っ!!」

ロイドの言葉を聞いたゼロスは、ニッと笑みを浮かべた。
それを見たロイドは思わず赤面した。

「…………あいつ、はめられたな」
「えっ? 何か言った、アッシュ?」

そんなロイドとゼロスを見てアッシュは、小さな声で呆れたようにそう言った。
それをよく聞き取れなかったルークは首を傾げた。

「いや、なんでもない。……行くぞ」

ルークにそう言うとアッシュはさっさと階段を上がっていった。
その後をルークは、すぐさま追いかけるのだった。

















「…………どうした、ルーク?」

ゼロスの屋敷でのアッシュの部屋に入ったルークがずっと静かなことに不思議に思ったアッシュはルークを見た。
元々客室だった為、アッシュの部屋にはベッドが二つあり、その一つにルークは腰掛けていた。

「…………ごめんな、アッシュ」
「? 何のことだ?」
「……あのとき、アッシュが怒鳴ってくれなかったら俺、レプリカだって言ってたから……」
「…………」

ルークの言葉にアッシュは何も言わなかったが、微かに眉間に皺が寄った。

「本当、馬鹿だよなぁ、俺。そのことを知られるのが怖いと思ってるのに、自分でそれを喋ろうとしてるんだもん」

それを見たルークは苦笑してそう言った。

「だから……本当にアッシュが傍にいてくれてよかったと思う。……ありがとう」
「……馬鹿か、おまえは」

そう言いながら、アッシュはルークの頭をクシャクシャと撫でた。
言葉とは裏腹にその口調はとても優しく、手の感触が心地良かった。
自然と笑みが零れた。

「……何、笑ってやがる?」
「なんかさぁ。アッシュに触られると凄く安心する!!」
「そうか……。だったら……」

ルークの言葉を聞いたアッシュがフッと笑みを浮かべたそのときだった。

「!?」

ルークの視界が一変した。
ベッドに腰掛けていたルークをアッシュが押し倒したのだった。
そして、ルークを押し倒した当の本人は、上からルークを覗き込んだ。

「まっ、待って! アッシュ!! 俺、そんなつもりで言ったんじゃ――」
「うるせぇ」
「っ!!」

アッシュが何をしようとしているのか感じ取ったルークは必死でそう言ったが、それを阻止するようにアッシュはルークの唇を塞ぐ。
強引だけど優しいそれのせいで身体に力が入らなくなった。
アッシュがルークの唇から一度放れるとルークの口から甘い吐息が漏れた。
それを聞いたアッシュは満足そうに笑みを浮かべた。

「久しぶりだからって、感じすぎだぞ」
「ばっ、ばか////」

そして、ルークの耳元で優しくアッシュが囁く。
その言葉にルークは赤面した。
それを見たアッシュはフッと笑みを浮かべるとルークの服に手をかけた。
そして、胸先辺りに優しくキスして痕を付ける。
そのまま下へと移ろうとした。
そのとき――。

「ルーク! ご飯だって! ……って、どうしたの?」

前触れもなく開かれたドアにアッシュはすぐさまルークから放れ、ルークも服を元に戻した。

「なっ、なんでもないよ! ……ちょっと、風呂でも入ろうかなって思って;」
「そう? まっ、いいや。それより、早く行こうよ!」

ルークの言葉に少し首を傾げつつ、ジーニアスはそう言った。

「うん。わかったから、先に行ってて」
「わかったよ。でも、早くね!」

ジーニアスは、素直にそう言うとさっさと部屋を出て行った。

「…………じゃぁ、行こっか? アッシュ」
「…………」

恐る恐るそう言ったルークの言葉にアッシュは何も言わなかった。
その沈黙が怖い。
明らかに怒っている。
やっぱり、先にジーニアスを行かせて正解だったと思う。

「アッ、アッシュ;」
「……とっとと、行くぞ!」

アッシュは踵を返すとすぐに部屋を出て行った。
それを見たルークは、小さく溜息をつくとアッシュの後を追いかけるのだった。
























Symphonyシリーズ第5章第2話でした!!
ついにやってしまったよ。こういうのは核の苦手だったんですが;
ロイドと相部屋になるためにコレットを利用するゼロスはやっぱり策士ですねぇ〜。
ちなみにロイドとゼロスがどう一夜を過ごしたかはご想像にお任せします(おい!!)


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