「…………おい。ゼロス」
「ん? ……!?」

アッシュの声にゼロスは振り返る、アッシュにいきなり胸ぐらを掴まれた。

「なっ、何? そんな怖い顔しちゃって;」

突然のアッシュの行動にゼロスは、焦ったように言った。

「…………てめぇが、何を企んでいるかは知らねぇが、そのせいでルークに何あったら許さねぇぞ」
「!?」

アッシュの言葉にゼロスは瞠目した。

「アッシュ! ゼロス!」

遠くから聞こえてくるルークの声にアッシュは、すぐにゼロスから手を放した。

「ご飯の準備が出来たぞ♪」
「ああ、わかった……」

そう言うとアッシュは、すぐにルークの許へと歩き出した。

「…………さすがだね、アッシュは」

一人その場に残ったゼロスはポツリと呟く。
ロイドたちには気付かれなかったが、アッシュだけは気付いていたようだ。
あのとき自分たちが捕まったのは、俺がそう仕掛けたからだということを……。






〜Symphony The World〜








「どうするんだよ。任せとけって言ったのおまえだろ」

メルトキオの入り口の前までやってきたルークたちだったが、とても中に入れそうにはない。
ロイドは半眼になってそうゼロスに言った。

「まあまあ待てよ。だからとにかく、俺様に任せとけって。可愛いハニーたちの為に特別な入り口を教えてやる。ついて来いよ」

それに苦笑を浮かべてゼロスは言うと、とある方向を目指して歩き出した。
ルークたちもその後に続く。
すると、目の前にトンネルらしき建物が現れ、そこから流れる水からは少し異臭がする。

「うわ、ここ何?」
「下水道だよ。街の汚水はここから外に流してるんだ」
「よくこんな侵入を思いついたな」
「この街は夜なると封鎖される。どうせ、この馬鹿はここを使ってたんだろ」

感心したように言ったロイドの言葉にアッシュは、呆れたようにゼロスを見てそう言った。

「そうそう。俺は、よくここから家に帰ってたんだ」

それにゼロスは、思わず苦笑しながらそう言った。

「? 何で、夜までに帰らないんだ?」
「……ん〜、教えて欲しければ、今晩俺様が手取り足取り教えてやるけど♪」

小首を傾げるルークにゼロスは、そっとルークの手を取った。

「…………その前に、てめぇはこの世とおさらばするけどなぁ!」
「ジョークよ、ジョーク! だっ、だから、そんな物騒なものはしまえよ;」

それにすかさず反応したアッシュが、ゼロスの首筋に剣を突きつけた。
ゼロスは慌ててルークの手を放すとそう言った。

「? アッシュさん、どうしてあんなに怒ってるんだろう?」
「……コレット。そこには触れない方がいいと思うよ;」

不思議そうにその光景を見ていたコレットがそう呟いた。
それにジーニアスがそう囁く。

「……敵の気配あり、危険です」

プレセアの言葉にルークたちは、一斉に下水道の入り口を見た。

「ああ、注意して行こう」

ロイドの言葉にルークたちは頷くと、下水道へと入っていった。

















「もう少しで出口だぜ」

先頭で歩いているゼロスがそう言ったのが聞こえた。
自分たちがここを通ることを予知していたのか、下水道のあちこちにあらゆる仕掛けが施されていた。
それをルークたちは何とか解除してやっと出口付近までやってきたのだった。

「よし、急ぐぞ!」

それを聞いたロイドが張り切ったようにそう言ったそのときだった。
ルークたちの近くにある階段から三人の男が現れ、ルークたちは足を止めた。
彼らの服装は薄汚く、手には棍棒を持っていた。

「何だ何だぁ?」
「殺気……です」

それにゼロスは怪訝そうに眉を顰め、プレセアは斧を持つ手に力を込めた。

「……待ってたぞ、シルヴァラントの旅人とやら」
「おまえたちを始末すれば、教皇が俺たちの刑を軽減してくれる。大人しく消えてもらおう!」

どうやら彼らは囚人のようだ。
そう言うと囚人たちは、ルークたちに殴りかかってきた。
だが、ルークたちはそれをあっさりと返り討ちにした。
ルークたちの強さに驚いた囚人たちは後退りした。

「さ〜て、どうしてくれたものかなぁ♪」

笑みを浮かべたゼロスが剣を収めると、囚人たちへと近づいた。
そのとき、ゼロスの上に影が落ちる。

「うわっ!」
「「「「「「「「!!」」」」」」」」

上から降ってきた影の男がゼロスを見事にうつ伏せに倒させて、その背中を踏みつけた。
濃青の長い髪が印象的な男は他の囚人たちとは格が違うことがよく解る。
ルークは咄嗟に剣に手を伸ばした。

「動くな……。動けば神子(みこ)から死ぬことになる。それでもいいか?」

それに気付いたのか、男は静かにそう言った。
その声は何処か威厳に満ちていた。

「おいおいおい。神子(みこ)にこんなことをしていいと思ってるのかぁ?」
「……世界の滅亡を企む者は神子(みこ)などではない」

上手く身動きをとることが出来ないゼロスは、何とか顔を上げてそう言うと男はそう言い捨てた。

「…………あっそ。お〜い、ロイドく〜ん! それにアッシュ!! 俺様を見捨てたら、化けて出るぞ〜!!」
「……今、猛烈に見捨てたくなったぞ」
「奇遇だな。俺も同意見だ」

ゼロスの言葉を半眼でそう言ったロイドの言葉にアッシュはそう言った。

「ひっ、ひどいなぁ。二人とも;」

ゼロスがそう言ったのと、ルークの横をピンクの影が擦り抜けたのは、ほぼ同時だった。
プレセアはブンと、斧の刃を唸らせ、男の脇腹に狙いを定めて振るった。
男がゼロスを踏みつけていた足が上がり、その場から離れたことによって斧は何も捉えることはなかった。
その隙にゼロスは素早くその場から逃げ出すと、ロイドの後ろに回って抱きついた。

「たっ、助かった〜!」
「!!」

ゼロスの突然の行動にロイドは瞠目した。
何故か鼓動が速くなっていく。

「おまえは…………っ!?」

男はプレセアを見ると驚いたように声を上げた。
そして、そのままプレセアに近づこうとしたそのとき、誰よりも早く反応したジーニアスがファイヤボールを発動させた。
完全に男を捉えていたはずだったが、それを男は咄嗟に避けた。

「……くっ、一度撤退する」
「……仕方ねぇな、こいつら強すぎる」

男は何処か悔しそうに唇を噛むとそう言った。
それに囚人たちも同意して、もと来た道へと戻っていった。
男もその後に続いていったが、一瞬だけプレセアの顔を見たような気がした。

「助かったみたいだね……」
「うん、よかったね。みんな無事で!」

ホッとしたようにルークがそう言うと、コレットが笑みを浮かべてそう言った。

「ゼ〜ロ〜ス〜! いい加減、放れろよっ!!」

すると、いつまで経っても自分に抱きついているゼロスにロイドはそれを振り払った。
ゼロスはおどけた様子で離れた。

「そんなに怒るなよ〜。ちょっとしたふれあいってやつじゃないか♪」
「気持ち悪いんだよ!」
「うわぁ……。それ、マジでへこむわ;」

ハッキリとそう言ったロイドの言葉にゼロスは、ガックリと肩を落とした。

「……馬鹿なことやってないで、さっさと行くぞ」
「ひっ、ひどいなぁ、アッシュは! 落ち込んでいる俺様に優しい言葉を掛けてあげようという良心はないのか!?」
「そんなもん、おまえには必要ない」

そうあっさりとアッシュは言った。
それに、ゼロスは再び項垂れた。

「とにかく、早く上に行こうよ。な?」
「うぅ……。やっぱり、ルークちゃんは優しいなぁ♪」
「うわぁっ!」

ルークが優しく声を掛けると、ゼロスは隙ありとばかりにルークに抱きついた。

「ゼロス! てめぇ!!」
「アッ、アッシュ! お願いだから、剣は収めて!!」

それにすかさず反応したアッシュにルークは必死にそう言った。

「? なんでアッシュさん、あんなに怒ってるんだろう?」
「……コレット。そこに触れない方がいいわ」

その光景に不思議そうに首を傾げるコレットに対して、リフィルは遠目でそう言うのだった。
























Symphonyシリーズ第5章第1話でした!!
第5章へ突入しました!ここで名前は出てないけど、ついにリーガルさん登場!
ゼロスへのツッコミに対しては、ロイドとアッシュは息ぴったりですねぇ♪
次回は、ゼロスの屋敷にお泊りです♪


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