「……どうしたの、プレセア?」 グランドテセアラブリッジを渡り、北東へと進んだルークたちは、サイバックと呼ばれる学園都市の入り口へとやってきた。 すると、プレセアの足が急に止まり、その場から動こうとしなかった。 それを不思議に思ったルークがプレセアに声をかけた。 「…………この街……いや。……早くオゼットへ……」 あまり感情を宿さないプレセアの瞳が何処が不安げに揺れていた。 「ごめんなぁ、おチビちゃん。少しで終わるからな。なぁ、ロイドくん?」 「ああ……ごめんな」 ロイドが申し訳なさそうにそう言うとプレセアは俯いた。 「…………わかりました」 そして、小さな声でそう言った。 「よし、早く王立研究院へ行こうぜ!」 ロイドたちは、王立研究院へ向かうのだった。 〜Symphony The World〜 「コレットさんの症状の報告を受けて、我々は神子ゼロス様の《クルシスの輝石》を調査した資料に着目しました」 王立研究員に行くと、ルークたちは一人の男に出迎えられ、研究室の一つへ招き入れられた。 そして、机に埋め込まれた機械からは今、一体映像が浮かび上がっている。 「ほうほう。俺様の輝石が役に立ったんだな。こりゃぁ、コレットちゃんが正気に返ったら、たっぷりお礼をしてもらおう♪」 「調子に乗るな」 満足そうな笑みを浮かべるゼロスに対して、アッシュが容赦なく頭をどついた。 それをもろに食らったゼロスは痛そうに頭を抱える。 「……《クルシスの輝石》は、エクスフィアの進化形と考えられます。二つの結晶体は共に無機生命体ですから――」 「何ですって!?」 男の説明にリフィルは、思わず声を上げた。 「むき……? 何だそりゃ?」 「無機生命体。つまり、エクスフィアも生きているってことだ。……そんなことも知らないのか?」 首を傾げたロイドに対して、アッシュが冷たくそう言った。 それに対してロイドは、ムッとした表情になる。 「アッシュ! そんな言い方はないだろ!!」 ルークがアッシュにそう言うとアッシュは、鼻を鳴らしてそっぽ向いた。 ルークは、それに思わず溜息をつくと男へと視線を向けた。 「……つまり、エクスフィアも生きているってことでいいですよね?」 「そうです」 ルークの言葉に男は頷く。 「二つの結晶体はどちらも他の生命体に寄生し、融合する性質を兼ね備えています」 「それでわかったわ。だから、ディザイアンは、エクスフィアを作っているあの忌まわしい施設を『牧場』と言ったのね……『工場』ではなく。エクスフィアは、生物だから」 「……それは、何の話ですか?」 「いいから、いいから」 アッシュにどつかれた場所を摩りながらゼロスは、手を振って続きを促そうとする。 「んで?」 「……このとき、《要の紋》がないと、体内のマナのバランスを崩して、暴走すると考えられます」 「だから……《要の紋》なしのエクスフィアは、人を化け物に変えちゃうんだね」 「その通りです」 ジーニアスの言葉に男は頷いた。 「つまり、《クルシスの輝石》がエクスフィアと同調のものである以上、現在のコレットさんは《クルシスの輝石》に寄生されていると推測されます」 「なるほどね。だとすると封印解放の儀式は、《クルシスの輝石》による融合を促進させる為の効果があるかも知れない。興味深いわ……」 「先生。そんな言い方やめてくれよ。コレットばっかりこんな酷い目に遭ってるっていうのに……」 リフィルの言葉にロイドは、苦しそうに顔を歪ませてそう言った。 それに対して、アッシュは何か言いたそうに眉を顰めたが、敢えて何も言わずにいた。 「そんじゃぁ、《要の紋》があれば、彼女も元気になるんだな?」 「そうですね。《要の紋》があればこの方は、《クルシスの輝石》を自由に操れるようになるはずです」 「《要の紋》か。何処かで手には入れられないかな……」 「…………それを売っている場所に心当たりがある」 考え込むロイドたちに対して、静かにそう言ったのはアッシュだった。 「ほっ、本当か、アッシュ!?」 「ああ、前にこの街に来たときに、怪しい物を売っている店の中にそれに似たものが置いてあったはずだ」 驚いたように声を上げたルークにアッシュはそう言った。 「じゃぁ、これでコレットを助けられるね!」 「よし! そうとわかったら、早くその店に行ってみようぜ!」 こうして、ルークたちは一旦王立研究院を後にした。 「なんだよ。売っているのは、ジャンク関係ばっかりじゃねぇの」 アッシュの案内でルークたちは、ある店へとやってきた。 その店に並んでいるものは、アッシュの言っていたとおり怪しい物ばかりであった。 「すっ、素晴らしい! 素晴らしいぞ、ここは!! ああ、これは古代魔科学のカーボンか!!」 「……まただよ;」 その商品を見て早くも興奮気味なリフィルにジーニアスは溜息をついた。 「もう、頼むからさ。《要の紋》らしきものを捜してくれねぇかな!」 ロイドは、呆れたようにそう言うと辺りを見渡した。 ルークも《要の紋》がないか捜し出す。 すると、ルークは商売人の近くにある箱の上に何かを見つけた。 それは黄金に輝く金属の板だった。 「ロイド! あれって!!」 「……間違いない、《要の紋》だ!」 ルークの声に促されてそれを見たロイドはそう言った。 「なんだ、あんたたち。このガラクタが欲しいのかい?」 「はい! おいくらですか?」 「そうだなぁ……一万ガルドだな」 ルークの言葉に商売人はそう言った。 「足元見やがって……」 「こっちも商売だからな」 悔しそうに唇を噛むロイドに商売人は笑ってそう言った。 「……ゼロス?」 すると、ゼロスがロイドの隣へと歩み寄ってきた。 不思議の思ったロイドがゼロスを見ると、ゼロスはフッと笑みを浮かべた。 「よし。今すぐここのバザーの責任者を呼んできて、こいつが商売できないようにしてやろう」 「なっ、なんだよ、あんたは……!」 ゼロスの言葉に商売人は怒ったようにそう言った。 それに対して、ゼロスは蒼い瞳を細めた。 「神子ゼロス様を知らないたぁ、いい根性してるじゃねぁか」 ゼロスの言葉に商売人は瞠目した。 そして、見る見るうちに青ざめていくのが解る。 「みっ、神子様!? どうぞ、このガラクタ……いえ、こちらは差し上げますので、お許し下さいませ!」 そして、《要の紋》を慌ててゼロスへと手渡した。 それに対してゼロスはニンマリと笑った。 「うむうむ。いい心掛けだ。憶えておくぞ」 「はは〜〜っ」 頭を下げる商人に見送られながら、ルークたちはその場から離れた。 「ほら、これでいいだろ」 ゼロスはロイドに《要の紋》を手渡した。 自分の手の中にある《要の紋》を見つめた。 すこし壊れているようだけど、これくらいなら何とか直せそうだ。 ロイドは《要の紋》を握り締めると、再びゼロスの顔を見た。 「ありがとな、ゼロス!!」 「っ!?」 自分の対して、満面の笑みを浮かべがロイドに対して、ゼロスの顔は赤くなった。 心臓の鼓動も何故か速くなる。 何故そうなったのか、ゼロスにも解らなかった。 「……どうした? 顔、赤いぞ?」 「へっ? いっ、いやっ! なんでもなねぇよっ!! それにこれは、可愛いコレットちゃんの為だからな////」 「……? ああ?」 ロイドがゼロスの顔を覗き込んだので、ゼロスはあたふたしながらそう答えた。 それに対して、ロイドは不思議そうに首を傾げた。 そんな二人のやり取りをアッシュは面白そうに眺めていた。 「よし! 《要の紋》も手に入ったことだし、王立研究院の研究室を借りてこれを修理するか!」 ロイドの言葉にルークたちは再び王立研究院へと向かうのだった。 Symphonyシリーズ第4章第8話でした!! サイバックへやってきました! エクスフィアのやりとりでゼロスがロイド意識するようにww H.22 9/9 次へ |