「……ありがとうな、アッシュ」

アッシュの隣を歩いていたルークがポツリと呟いた。

「……何の事だ?」

ルークの言葉の意味がわからず、アッシュはルークに聞き返した。

「……ジーニアスに俺とアッシュが似てるって言ったとき、双子だということにしてくれて」

ルークの言葉にアッシュは、納得したような顔をした。

「当たり前だろ。誰がおまえがレプリカだと言えるんだよ」

そんなことを言えば傷付くのはルークだと解りきっている。
ルークの傷付く姿を見たくない。
それだけのことだ。






〜Symphony The World〜








「……? どうしたの、アッシュ?」

アッシュが自分の顔をずっと見ていることに気が付いたルークは首を傾げた。
それにアッシュは、フッと笑みを浮かべた。

「……いや。おまえがあまりにも間抜けな顔をしてたからな」
「なんだよ、それ」

それに対してルークは、ムッとした顔をになった。

「大体、アッシュは嬉しくないの?」
「……何がだ?」

ルークの言葉を意味がわからないといった感じでアッシュは問いかける。

「……初めてなんだよ。俺とアッシュが一緒に旅をするのが」
「……ああ、そういえば、そうだったな」

同じ目的を持っていながら、俺とルークは共に旅をしなかった。
ルークは何度も手を指し伸ばしてくれたのに、俺はそれを拒んだ。
薄っぺらいプライドがそれを邪魔したのだ。

「……俺、嬉しいんだ。アッシュと一緒に旅が出来ることが!」

とびっきりの笑顔を浮かべてルークは言った。
その笑顔に自然とアッシュの顔が綻ぶ。

「……俺もだ、ルーク」

短いが、優しいその言葉にルークはさらに笑った。

(……これだ)

俺がずっと見たかったのも。
眩いばかりのルークの笑顔だ。
ずっと見ていたいものだ。

「ルークちゃん♪」
「うわぁっ!?」

すると、ルークの背中から声が聞こえたかと思うと、ゼロスがルークに抱きついてきた。

「俺様もルークちゃんと一緒に旅できて、嬉しいぜぇ♪」
「てめぇ! ゼロス!!」
「うわぁ! アッシュ! まっ、待って!!」

アッシュが剣を引き抜いたので、ルークの叫び声が辺りに響いたのは、言うまでもなかった。

















「すげぇ! でっかい橋だなぁ!」

何だかんだかあったが、ルークたちの目の前に巨大な橋が現れた。

「…………本当……すごい……」

ルークも思わずポツリと呟いた。

「だろ? こいつは、フウジ大陸とアルタミラ大陸を繋ぐ世界一の跳ね橋だ」

ルークたちの反応にゼロスは、自慢げにそう言った。

「話によると、制御に三千個のエクスフィアが使われているらしい」
「さっ、三千個……!」
「そんなに……っ!」
「三千人分の……命か」

アッシュの言葉にジーニアス、ルーク、ロイドは暗い表情へと変わった。

「ん? 何よ何よ? 暗い顔しちまって……」
「……どうしたんだ、ルーク?」

三人の様子を見て、ゼロスとアッシュは眉を顰めた。

「…………そうね。あなたたちにも話しておきましょうか。……エクスフィアがどのようにして作られているのかを……」

そして、リフィルはその重い口を開いた。

















「……エクスフィアは人から作られているのか……」

リフィルの話を聞いたアッシュはポツリと呟いた。

「……ハードな話だなぁ。それ、マジもんなのか?」
「こんな嘘、つくかよ」

ゼロスの言葉にロイドは、低い声でそう言った。

「…………」

プレセアは己の胸元にあるエクスフィアを静かに眺めていた。

「まぁ、そうはいっても今更死んだ人が生き返るわけでもないし。人間、ポジティブに生きようぜぇ!」
「前向きなのか、軽薄なのか……」

ルークたちに笑ってそう言ったゼロスに対して、リフィルは少し呆れたように言った。

「……そういえば、おまえやプレセアもエクスフィアを装備してるけど、こっちでは当たり前なのか? しいなの話じゃそんな感じじゃなかったけど」
「いや? これはレネゲードって奴らからかもらったんだ。しいなとか、教皇騎士団とか結構な人数分、わけてもらったはずだぜ」

ロイドの問いにゼロスは、自分の胸元にあるエクスフィアに手を当ててそう言った。

「プレセアも?」
「さぁ、どうだろうなぁ。どうよ、おチビちゃん?」
「…………」

首を傾げてそう言ったゼロスは、プレセアへと視線を向けた。
だが、プレセアはゼロスの言葉など聞いていないのか、真っ直ぐに橋の向こうを無言で見つめていた。

「だ〜めだこりゃ;」

そんなプレセアの様子を見て、ゼロスは諦めたようにそう言った。

「……大丈夫か、ルーク?」

未だに青い顔をしているルークにアッシュは問いかけた。
それに対してルークは首を振った。

「……大丈夫。ちょっと、工場を見たときのことを思い出しちゃっただけだから……」

ルークはこいつらと一緒にエクスフィアを生成しているところを見たのだ。
話を聞いただけでもおぞましいと思ったのに、それを目の当たりにしたルークはもっと辛いだろう。

「……俺たちの世界より酷いな、ここは」

零から一を作り出すフォミクリーの技術。
それより酷いと思った。

「…………同じだよ、俺たちの世界も」

アッシュの言葉にルークはポツリと呟いた。

「……俺たちが作られることで、被験者(オリジナル)たちが……傷付いたんだから」

レプリカが作られる度にそのレプリカの基となった被験者(オリジナル)が傷付いたり、死んだりしていった。
それは、エクスフィアを生成することと全く変わりないのだ。

「ルーク……」
「お〜い! そこのお二人さん! さっさと、渡ろうぜぇ!!」

アッシュが口を開きかけたとき、いつの間にか橋の近くまで言ったゼロスの声がそれを遮った。

「いこ、アッシュ」

それにルークは笑顔でそう言った。
その笑顔が何処が哀しく見えた。

「……ああ」

敢えてそのことには触れずに、アッシュに頷いた。
そして、ルークとアッシュはゆっくりとロイドたちへと歩み寄るのだった。
























Symphonyシリーズ第4章第7話でした!!
やっぱり、ラブラブの二人ですねww
そして、ゼロスに剣を抜いたアッシュを必死に止めるルークがいいね♪
ですが、後半の方はかなり重めに;
そんなこんなで、次回はサイバックへ!!


H.22 9/9



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