「そういえばさぁ、テセアラの神子ってどんな人なの?」 メルトキオへ向かう途中、何気なくルークはしいなに問いかけた。 「そうだねぇ。一言で言うえば……」 ルークの問いにしいなは少し考え込んだが、すぐに笑みを浮かべた。 「馬鹿だね♪」 「ほへ?」 「まぁ……会ってみたらわかるよ;」 不思議そうな表情を浮かべたルークにしいなは苦笑するのだった。 〜Symphony The World〜 「あっ! ロイドたち、お帰り〜♪ どうだった?」 暫くメルトキオの街を探索した後でルークは、再び教会へと戻った。 そして、それから何時間かが過ぎると教会の扉が開き、ロイドたちは現れた。 「…………何とか、王様に協力してもらうことが出来たぞ」 ロイドたちは、ルークのところまで歩み寄ると、ロイドが苦笑いを浮かべてそう言った。 「でも、テセアラの神子の監視の下でなのよ」 「すごい! テセアラの神子が一緒だと心強いよね♪」 「まぁ……。そのはずなんだけどなぁ;」 「…………?」 歯切れの悪いロイドの言葉にルークは首を傾げた。 そのとき――。 「いよっ! 待たせたな!」 教会の扉が再び開くと、一人の男が現れた。 その男の服装は袖のない黒い服の上にこれまた袖のない少し派手めな上着を羽織い、ゆとりのある純白のズボン、そして上着と同じデザインの二の腕まである手袋をしていた。 額につけた白いバンダナは腰まである真紅の髪によく映えている。 そして、男の胸元には、エクスフィアが付けられていた。 男は、ロイドたちを見ると切れ長の藍色の瞳を細めて笑った。 「悪いなぁ。出かけるのに色々と準備がかかちまってな。レディたちを待たせるなんて、俺様ってダメだねぇ〜」 「えっ、えっと; ……ゼロス、だっけ?」 ロイドは、何故かゼロスからルークが見えない位置に立ち直すとそう言った。 < 「ん? あっ、そうそう。俺様がテセアラの神子のゼロス。ゼロス・ワイルダーだぜ! ゼロスくんって呼んでくれよ♪」 ロイドにゼロスと呼ばれた男は自分の髪を掻き揚げるように触りながら、そう言った。 その態度に明らかに呆れているのか、ジーニアスは半眼でゼロスを見つめていた。 「これから暫く一緒に旅をするんだから、仲良くしようぜ♪ ……まぁ、野郎どもはどうでもよくって……」 ゼロスはロイドたちに目もくれずにリフィルたちを見た。 「ゴージャスな美人がリフィル様だろう? クールな天使ちゃんがコレットちゃん。んで、もっとクールなおチビちゃんがのがプレセアちゃんで……ん? もう一人いるよな? 誰だ?」 ロイドの後ろにルークがいることに、ゼロスはこのときになって漸く気付いた。 「あっ! いや、べつにいいだろ!」 それに何故かロイドは慌ててルークを庇うようにして立った。 「べつにって; これから一緒に旅するんだぜ? ロイドくん、ちょっと退いて」 ゼロスは、ロイドをあっさりと退かし、ルークを見た。 「!?」 そして、ルークの顔を見た途端、ゼロスの表情が一変した。 それは、まるで信じられないものを見たような表情だった。 「あっ、あの、はじめまして! 俺、ルークっていいます♪」 そんなゼロスに対してルークは、満面の笑みを浮かべて自己紹介をした。 それに、ロイドは何故が頭を抱えていた。 「……君……ルークちゃん……?」 「そうだけど? ……なんで?」 「あっ、いや……。俺様ちょっと驚いただけさ; あははは;」 「…………?」 苦笑するゼロスにルークは、思わず首を傾げた。 そして、ルークが再び口を開きかけた、そのときだった。 「ゼロス!!!!」 「「「!?」」」 突如、教会の扉が乱暴に開いたかと思うと、辺りに怒気を孕んだ声が響き渡った。 それは男で、ゼロスの許へと駆け寄ると、すぐさまゼロスの胸元を掴んだ。 「貴様! 俺に仕事を全部押し付けやがって!! どういうつもりだ!!!」 「だっ、だから、ちゃんと説明しただろう; 俺様はロイドくんたちを監視しないといけないんだって;」 < 物凄く怒っている男に対して、ゼロスは苦笑いを浮かべながらそう言った。 「だからと言って、仕事を全部俺に押し付けるのはおかしいだろ!!」 「いや、それは成り行きで♪」 「ふざけるな!! 大体、おまえは――」 「アッシュ……?」 「!?」 ポツリと呟くようにそう言ったルークの声に男の動きが止まった。 そして、ゆっくりとルークのほうへと向いた。 燃えるような紅い長髪に美しい翡翠の瞳。 自分そっくりの顔の彼を見間違えるはずがなかった。 「! ……ルーク」 アッシュは、驚いたように目を見開いてそう呟いた。 「うそ……。なんで、ここにアッシュがいるの?」 「なんで? って……おまえ、あのときのこと、憶えてないのか?」 ルークの問いにアッシュの眉間に微かに皺が寄った。 「えっ? えっと……。うん。よくは憶えてないんだ;」 「……俺もおまえと同じように、この世界に飛ばされたんだよ」 「そう……だったんだ……」 アッシュの言葉にルークは安堵したように息をついた。 嬉しい。 ずっと、逢いたいと思っていた。 だけど、逢えないと思っていた。 諦めていたのに今、目の前にアッシュがいるのだ。 嬉しくないわけがない。 「…………よし、行くぞ」 すると、アッシュは、いきなりルークの手を掴んで歩き出そうとした。 「えっ? ちょっと、待ってよ! 何処に行くのさ?」 「決まってるだろ。俺たちの世界にだ」 「えっ!?」 アッシュの言葉にルークは目を見開いた。 「どうせ、あいつが気紛れでこの世界に俺たちを飛ばしたんだろ。あいつを何とか捕まえて、帰るぞ」 「ちょっ、ちょっと待ってよ!!」 ルークは、アッシュの手を振り払った。 「今回のことは、ローレライは関係ないよ! 俺は……俺は、誰かに呼ばれてここに来たんだよ! その人に俺は会わないといけないんだよ!」 呼ばれたんだ。 俺は彼女に会わないといけないんだ。 そして、彼女の望みを叶えてあげないといけないんだ。 「それに、俺はコレットを助けたんだ! このまま、帰るなんて出来ないよ!!」 コレットに心を取り戻して欲しいんだ。 だから、それまでは帰りたくないんだ。 「……ルーク! 俺たちは、この世界の人間じゃないんだ! この世界にこれ以上、関わるべきじゃない!!」 「でも!」 「いい加減にしろっ!!」 反論しようとしたルークをアッシュは一喝した。 「おまえはただ自分とあいつを重ねて見てるだけだろ! そんなのおまえの自己満足なだけだっ! いい加減――」 パン 辺りに渇いた音が響いた。 ルークがアッシュに思いっきり平手打ちをしたのだった。 「っ! 何しやがる! ルー……」 それにアッシュは、ルークの怒鳴ろうとしたが、途中で言葉を失った。 目の前にいるルークの美しい翡翠の瞳には涙が溜まっていたから……。 「…………ないよ」 絞り出すような声でルークは呟いた。 「アッシュにはわかんないよっ! 俺の気持ちなんかっ!!」 瞳から溢れ出した涙は静かに頬へと伝った。 「ルーク!!」 そして、ルークは踵を返すとそのまま教会を飛び出していった。 ロイドがルークを呼び止めたが、それは完全に無視されたのだった。 Symphonyシリーズ第4章第4話でした!! やっと、アッシュとルークが再会しました!! そして、感動の再会のはずなのに途端喧嘩ですよ; アッシュはルークのことを心配しているだけなんだけど、ちょっと言い方がきついんですよね; このあと二人はどうなることやら; あと、ゼロスにはルークをちゃん付けで呼ばせてみましたww くん付けかちゃん付けどっちにしようか迷いましたが、やっぱりルークはちゃん付けでww H.21 9/22 次へ |