「ごめん! みんな!!」

ルークは両手を合わせてロイドたちに謝った。
数分かけて、ロイドたちは漸くルークを見つけたのだ。

「まぁ、いいって。そんなに気にしてねぇから」

必死に謝るルークにロイドはそう言った。

「でも、珍しいよね。ルークがボクたちから逸れちゃうなんて」
「うん……。この街……似てるんだ。俺の育った街に」

ジーニアスの言葉にルークは頷いた。
街に地形や、街の雰囲気がバチカルによく似ている。
だから、思わずロイドたちのことを忘れて色々と見て回ってしまったのだ。

「へぇ〜。ルークの街は、こんなにもでっかいんだなぁ」
「……ちょっと、待って。育った街に似てるって言ってたけど、ルークは生まれた街と育った街は違うの?」
「うん……一応、な」

ジーニアスの言葉にルークの美しい翡翠の瞳が翳った。

「……まぁ、とにかく王様に会いに行こうぜ」

ロイドの言葉にルークたちは頷くと、この街の一番高い所にある城を目指して歩き出した。






〜Symphony The World〜








「…………これから、どうしよっか……」

城の城壁を眺めてルークは言った。
国王に謁見しようとしたルークたちだったが、肝心の国王が病に臥せている為、出来なかった。

「……仕方ねぇ。とりあえず、教会に行ってみようぜ」

ロイドは、腕を組んでそう言った。
それにリフィルの頷く。

「そうね。教会の神父が祈祷を行うと言っていたし」
「うん。とりあえず、行ってみよう!」

こうして、ルークたちは一度教会へと向かった。

















「マーテル教へようこそ」

教会へと入った途端、優しい神父の声にルークたちは迎えられた。

「……! おおっ、プレセアか」

神父の言葉にルークは振り返った。
すると、入り口に一人の少女がいた。
年の頃は十二、三歳といった感じである。
淡い桃色の髪を耳の上ではなく、少し後ろで二つに分けて結んでいる。
服装は、袖のない丈の短い黒い袖なしのワンピース。
爪先を金属で強化したブーツに、同じく金属板を手の甲に張り付けた二の腕まであるグローブ。
細い腰を革のベルトで締め、短剣を一振りさしている。
少女の手には、巨大な斧と一本の丸太がある。
斧は、ジーニアスとほとんど変わらぬ体格の少女が持つにはあまりにも大きく、柄まで合わせると少女の爪先から顎まである。
また、運んでいる丸太には金属の台に固定されているが車輪はなく、ゴリゴリと音を立てて引き摺っている。
そして、彼女の胸元にキラリと輝くものは、間違いなくエクスフィアだった。

「祈祷は陛下の寝所で行う予定だ。神木は城へ運んでくれ」
「………はい」

神父にプレセアと呼ばれた少女はそう短く返事をすると踵を返して教会を後にした。

「っ! ……可愛い////」

プレセアを見たジーニアスはそう呟いた。

「今のプレセアって子もエクスフィアを付けてたな。こっちはそんな習慣でもあるのか?」
「そうだね。可愛いね♪」
「……ジーニアス。話、聞いてないねぇ;」

すっかりプレセアに熱が上がっているジーニアスの様子を見てルークは苦笑した。

「祈祷というと、国王陛下の病気快復を祈るとかという……?」
「はい。神子(みこ)様と教皇様が陛下の御前にて祈祷を行い、マーテル様のお力添えをいただくのです」

リフィルの問いに神父はそう答えた。

「祈祷は国王の寝所って言ってたな?」
「はい、そうですが……?」
「そうか、ありがとう」

ロイドがそう言うと神父は頭を下げると、その場を後にした。

「みんな! 国王に会う方法が見つかったぜ!!」
「何? どうするの?」

ロイドの言葉にルークは首を傾げた。

「神木を運び込むフリして潜入するんだよ」
「……そう言うと思ったわ。でも、神木はどうするつもり?」
「さっきのプレセアって子に協力してもらおうぜ!」
「えっ! ほっ、ホント!? それ、ボク大賛成!!」

ロイドの口からプレセアの名が出た途端、ジーニアスは嬉しそうにそう言った。

「……まぁ、いいわ。話すだけ話してみましょう」
「よし! じゃぁ、プレセアを追いかけよう!!」

ルークたちはプレセアを追いかける為、教会を後にした。

















「じゃぁ、頼むぜ」

教会を出ると、ルークはある男の声を耳にした。
その方向に目を向けると、中年で小太りの髭の男とプレセアがいた。

「神木をアルタミラまで。この仕事の後でいいからな」
「………わかりました」
「順調だな。早速、ロディル様にご報告だ」

プレセアの返事に男は満足そうに言うと、さっさと立ち去っていった。
そして、プレセアは丸太を引き摺り始めた。

「あっ、あの、ちょっと待って! えっと……プレセア!」

ジーニアスの言葉にプレセアの動きがピタリと止まった。

「ちょっといいかしら?」
「俺はルーク。よろしくな♪」
「んで、俺はロイド。こっちがコレットにリフィルに――」
「ボ、ボクはジーニアス///」
「……ジーニアス? おまえ、何顔赤くしてるんだ?」
「ボクたちに、神木を運ぶのを手伝わせてもらえないかな?」

ロイドの言葉を完全に無視してジーニアスはプレセアに言った。

「…………」

それにプレセアは無言で踵を返すと、何事もなかったかのように再び丸太を引き摺り始めた。
いわゆる、無視である。

「まっ、待ってよ!」

それをジーニアスが慌てて止めた。

「ごめんなさい。怪しい者ではなくてよ」

リフィルは、プレセアの前に立って優しい笑みを浮かべた。

「実は俺たち、陛下に渡したい手紙があるんだよ」
「仲間の命がかかってるんだよ。でも、王様は病気で謁見してもらえないから困ってるんだ」
「…………」
「俺たちを運び屋として使ってくれるだけでいいんだ」
「…………」
「きっ、聞いてる?」

あまりにもプレセアが無反応だったので、不安になったロイドは思わずそう言った。

「…………わかりました」
プレセアは、そう言うと丸太から手を放して、ルークたちを見た。

「……でも、さすがに人数が多すぎると思います。一人ここでも待っていてもらえませんか?」
「……確かに、この人数だと怪しまれるよね。……わかった、俺が残るよ」

プレセアの言葉に少し考えた後、ルークはそう言った。

「いいのか、ルーク?」
「うん! ロイドたちが陛下と謁見している間、俺はもう少しこの街を見て時間でも潰してるよ」

ロイドの言葉にルークは、頷いてそう言った。

「……わかりました。では、さっきの教会で待ち合わせましょう。それでいい?」
「はい!」
「………では、それ……運んでください」

話がまとまったのを見て、プレセアは丸太を指差してそう言った。

「よっ、よし! 任せとけ!!」

ロイドとジーニアスは、丸太に手を掛けた。
だが、見た目とは違って、その丸太は信じられないくらい重かった。
エクスフィアを装備している二人でも、ビクともしなかった。

「…………」

プレセアは無言で取っ手を掴むと、軽々とそれを引き摺っていった。

「……俺。……男として……自信なくなってきた;」
「ボクも……;」

それに二人は肩を落としてうなだれた。
そんな二人を見てルークは、申し訳ないような気持ちになった。

「……とにかく、彼女を追いましょう」
「あ、ああ……」
「みんな、気をつけてね!」

ルークに見送られながら、ロイドたちは城へと続く階段を上って行ったのだった。
























Symphonyシリーズ第4章第3話でした!!
シンフォニアのキャラが続々と登場してますww
プレセアは実際だったら、そんなに喋らないだろうに;
そして、ルーク!何気に、お城には行きませんww
行ったら、ゼロスと会っちゃうから;


H.21 9/22



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