フウジ山脈を下って、北に向かってルークたちは歩き続けていた。

「ねぇ、見て! あそこに街が見えるよ!」
すると、ジーニアスがある方向を指差してそう言った。
その方向へと目を向けると、確かにそこに街が見えた。
しかも、かなりの大都市のようだ。

「しいな、あそこが?」

ルークの言葉にしいなは頷いた。

「ああ、そうさ。あそこが王都、メルトキオさ!」






〜Symphony The World〜








「? どうしたの、しいな?」

メルトキオの入り口までやってきたルークたちだったが、急に足を止めたしいなを見てルークは首を傾げた。

「……悪いけど、あたしはここで離脱させてもらうよ」
「えっ? どうして?」
「忘れたのかい? あたしは、コレットの命を狙ってたんだよ。暗殺失敗を頭領に報告しないと」
「頭領って人は、この街にいるじゃないの?」

しいなの言葉にジーニアスは首を傾げた。

「あたしは『ミズホの民』だ。ミズホの民は、この土地を追われた民なんだからね。みんな隠れて暮らしているのさ」
「……報告に行けば、あなたもただではすまないのではなくて?」
「心配には及ばないよ。それより、この手紙を受け取っとくれ」

しいなはそう言うと、一番近くにいたルークに手紙を手渡した。

「テセアラ城にいる国王にこれを渡すといい。ミズホの民のしいなからだと言えば、すぐに謁見させてくれるから」
「国王って、コレットの命を狙ってるんでしょ。大丈夫かな」
「それを止めさせる為に今までの経緯とコレットを治す為の協力を願い出てある」
「そっか。……ありがとう!」

しいなの言葉を聞いたルークは、嬉しそうに笑った。
それにしいなの顔が見る見るうちに赤くなっていく。

「なっ、何言ってるんだよっ! いいんだよ、そんなの! 王立研究院は王室の管理下にあるんだ。こうするより他にないだろっ! それだけサ!!」
「あれ〜? 照れてるの〜? おもしろ〜い」

しいなの反応を見てジーニアスは面白そうに笑った。

「うっ、うるさいね! あたしはもう行くよ!」
「……また、逢えるよな?」

その場を立ち去ろうとしたしいなにルークは、淋しそうにそう言った。
それにしいなは、困ったように笑った。

「……そうだねぇ。逢えるかも知れないし、逢えないかも知れない」
「では、さよならはやめておきましょう」
「ああ、またな」
「うん、またね。しいな」

リフィルの言葉にロイドとルークは頷くと、そう言った。

「そうだね。また……いつか!」

二人の言葉にしいなは頷くと、踵を返してルークたちの許から立ち去っていった。

















「コレット!?」

ロイドが気付き、コレットに声を掛けたときには遅かった。
コレットは、前から歩いて来た複数の女性を引き連れた男とぶつかった。

「あっ、あぶないわね!」
「何、ボーっとしてるのよ!!」

それに怒ったように声を上げたのは男ではなく、付き添っていた女たちだった。

「まあまあ、抑えて俺様の可愛いハニーたち♪」

男は女たちを宥めると再びコレットに向き直った。

< 「そこのクールな彼女〜。怪我はない?」
「…………」
「んまあああぁぁぁ! ゼロス様がお言葉を掛けてくださったのに、なぁにこの子!!」

無反応なコレットの女たちは憤慨した。

「お祭りでもないのに、天使さまの仮装なんかして、バカじゃないの!」
「信じらんない、このブス!!」
「なっ、何だって!」

コレットの傍に駆け寄ったジーニアスは、怒ったように足を踏み鳴らした。
それをロイドが宥める。

「……よせよ、ジーニアス。あの人の家には、鏡がないんだよ」
「なんですって!!」

ロイドに嫌味を言われた女は怒ったように叫んだ。

「……もう、バカな子たちね;」

その様子を傍観しているリフィルは、呆れたように溜息をついた。

「ま〜ま〜、落ち着けって。彼女、怒ってるの?」

男はヘラヘラ笑ってそう言った。

「君って笑ったら、きっとひまわりみたいにキュートなんだろうな〜♪」

そう言って男はコレットの頬に手を伸ばした。
だが、その瞬間、男はコレットによって空中に放り投げられた。

「「「「きゃああぁぁ!!!! ゼロス様!!」」」」

それを見た女たちは悲鳴を上げた。

「うわっと!?」

男は空中で体制を整えると、すこし驚いたような声を上げて、花壇の前に着地した。
大して何処も汚れてないのに、白いズボンを男は二の腕まである手袋をした手で叩いた。

「いや〜、驚いた。天使ちゃん、強いね〜。俺様、超ビックリ!」
「あっ、あんたは一体……?」

驚いたようにロイドは呟くと男を見つめた。
ルークとは、また違う鮮やかな赤い長髪が風でなびいた。

「……野郎はどうでもいいや」

男はロイドを見てそう言うと、すぐにロイドの脇を通り過ぎた。

「……いやな奴」

隣にいるジーニアスが、そう小さく言ったのが聞こえた。

「おおぉ! ゴ〜ジャス!! 美しいあなた、お名前は?」

男はリフィルに歩み寄ると、紳士的にそう尋ねた。

「人に名前を尋ねるときは、まず自分から名乗るべきじゃなくて?」

それにリフィルは、面白がるような口調でそう言った。

「あっ、ロイドの真似っ子♪」
「……人が言っているのを聞くと、偉そうな台詞だなぁ;」

リフィルの言葉にジーニアスは笑い、ロイドは腕を組むと呟いた。

「おっと! 俺様をご存じない? これはこれは、俺様のまだまだ修行不足ってことだな〜」

パチンと、自分の頭を叩いた男は、残念そうに言った。

「ゼロス様! 行きましょうよ!!」

男の行動に痺れを切らした女たちがそう言った。
「おっと! そうだな〜。じゃぁ、また何処かで。美しいお姉様♪ と可愛い天使ちゃんと、おまけのお二人さんよ〜」

男は踵を返して女たちに囲まれると、手を振ってその場を後にした。

「何だったんだ、あれ……;」

男が消えた方向を眺めて、ロイドは呟いた。

「変な奴。ずっと、ニヤニヤしてさ。バッカじゃないの」

ジーニアスは、気分を害したようにそう言った。

「……あの男、エクスフィアを装備してたわ」
「えっ!? 嘘!?」

リフィルの言葉にジーニアスは、驚いたように目を丸くした。
それにロイドは、納得したように頷いた。

「……だから、あんな身のこなしだったのか。何者なんだ? あいつ……」
「……ところで、ルークの姿が見当たらないようなのだけど?」
「えっ?」

リフィルの言葉にロイドは辺りを見回した。
すると、ルークの姿が何処にもないことに今気付いた。
そういえばさっき、あの男が「おまけのお二人さん」と言っていたことをロイドは思い出した。

「おかしいなぁ。さっきまで、一緒だったのに?」
「おそらく、途中ではぐれてしまったのね。こんなにも広い街なのだから、仕方ないかもね」
「そうかもなぁ……。とにかく、ルークを探そうぜ」

ロイドの言葉にリフィルたちは頷き、ルークを探し始めた。
























Symphonyシリーズ第4章第2話でした!!
メルトキオへ入りました!!そして、いきなりしいなとお別れです!!
また、すぐに逢えるからそんなには淋しくなないけど。
そして、ゼロスとロイドたちの初絡み!!一応、ロイド側から書いたのでゼロスはずっと男表記だったけど;
ですが、ルークは不在です。ここで会ったら、ちょっとややこしそうだったので、消えてもらいましたww(おい!!)
次ぎはメルトキオ城へ潜入です!!


H.21 6/20



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