「やっ、やめてっ!!!」 「!?」 突如発せられたコレットの声にプロネーマは驚いて目を瞠った。 「これはロイドが私にくれた、誕生日プレゼントなんだからっ!!」 そんなプロネーマの様子を無視して、コレットは彼女に向かって怒鳴ったのだった。 〜Symphony The World〜 「声が……出た!」 その嬉しさからそう言ったルークの声は震えていた。 「コレット! 元に戻ったのか!?」 ロイドの声にコレットは、振り返った。 そこにあったのは真紅の瞳ではなく、蒼い瞳だった。 ルークたちの姿を捉えたコレットは不思議そうに首を傾げた。 「あれ? みんな……どうしてそんなところに入ってるんだっけ?」 「馬鹿な! あんな子供騙しの≪要の紋≫で、≪クルシスの輝石≫が抑えられる訳がないっ!!」 ユアンは、信じられないものを見たといった表情を浮かべた。 「……へぇ〜。やるじゃないの、ロイドくん」 「何ということか……。しかし、所詮は粗雑品。長くは保つまい! さぁ、とにかく来やれ!!」 気を取り直したプロネーマはコレットの腕を掴んだ。 「はっ、放して!!」 それにコレットは、激しく抵抗した。 チャクラムを取り出したコレットはそれを使ってプロネーマを自分から遠ざけた。 が、それと同時にコレットは、バランスを崩す。 「あっ、あっ、あっ……」 腕をグルグル回して必死にバランスを取ろうとしたが、案の定コレットは尻餅をついた。 そのとき、コレットの足が近くにあった機械にぶつかり、煙を上げると小爆発を起こした。 すると、ルークたちを閉じ込めていた光の檻がすうっと消えた。 「どっ、どうしよう〜! 壊しちゃった〜!!」 機械を壊したコレットは、ただただ慌てていた。 「おお〜! やるなぁ、コレットちゃん! 俺様、惚れちゃいそ〜♪」 「あははははは! それでこそ、コレットだよね!!」 コレットの思わぬ行動にゼロスは感心したように笑みを浮かべた。 ジーニアスは、予想通りのコレットの行動だったので、笑いが止まらないようだ。 「相変わらずねぇ……」 「悪夢が甦るよ……」 優しい笑みでリフィルは、コレットを見つめている。 しいなは以前コレットにされたことを思い出し、真っ青な顔になった。 「「コレット!」」 ルークとロイドはすぐさまコレットの傍に駆け寄った。 「ロイド! あのね、プレゼントありがとう! 嬉しかったんだけど。本当に嬉しかったんだけど、あのときはどうにもならなくて……」 「いいよ、そんなの」 コレットの言葉にロイドは首を振った。 いいんだ。 コレットが元に戻ってくれただけで……。 「ルークもありがとうね。いつも、私に話しかけてくれて! ちゃんと、聞こえてたよ」 「えっ……?」 思ってもみなかったコレットの言葉にルークは瞠目した。 そして、自分の目に熱いものが込み上げ来るのがわかり、ルークはそれを必死で抑えて笑った。 ここで涙は似合わないと思うから。 コレットもルークの笑顔を見て笑った。 「おっ、おのれ……小癪な……こんな下賎な輩に……」 その声に振り返るとプロネーマがゆっくりと起き上がるところだった。 ルークとロイドはコレットを庇うように立つとそれぞれ武器を構えた。 「わらわを愚弄せし罪、償ってもらおうぞ!」 「丁度いいぜ! ユアン! あんたともここで決着をつけてやる!!」 「ふざけた口を……付け上がるなよ、ロイド!」 ユアンの手に奇妙な剣が出現する。 二人は止める間もなく距離を詰め、間合いを捉えると剣を振るった。 だが、その剣は互いの剣は当たらず、横から突如現れた剣によって弾かれた。 その人物にロイドは驚きのあまり瞠目した。 「クラトス!?」 特徴的な燕尾のマントを除けば服装は違うが、それは間違いなくクラトスだった。 「……貴様、何をしに来た!」 「退け、ユアン。ユグドラシル様が呼んでいる」 ユアンがクラトスを睨み付けたが、それを気にすることなく、クラトスは剣を鞘へと収めるとそう言った。 「くっ……。神子を連れて行くのか?」 「いや……一時捨て置く。……例の疾患だ」 「……そうか。ロイド、勝負は預けたぞ」 ユアンは、そう言い捨てるとその背中から天使の羽根が現れ広げると、山頂からその身を躍らせた。 「あいつも天使だったのかい!?」 それに驚いたようにしいなが言った。 「くそ! 待て、ユアン!!」 ロイドは、ユアンを追いかけようとしたが、空を飛べない自分にはどうすることも出来なかった。 「…………おまえは、何をしているのだ?」 静かなクラトスの言葉にロイドは振り返った。 鳶色の瞳が真っ直ぐに自分を見つめている。 「わざわざ時空を飛び越えて、テセアラまで来て何をしているのだと言っている」 「それは……コレットを助ける為……」 「神子を助けてどうなる? 結局、二つの世界がマナを搾取し合う関係であることに変わりはない。ただ再生の儀式によって、立場が逆転しただけだ」 「テセアラは衰退し始めているのかい!?」 クラトスの言葉にしいなは思わずそう言った。 「まだ、この世界からも救いの塔が見える。あれが存在する限り、ここはまだ繁栄時代にあるということだ。もっとも神子がマーテルの器となった暁には、テセアラも繁栄時代に別れを告げることになるだろう」 「くそっ。どうにもならないのか!? この歪んだ世界を創ったのは、ユグドラシルなんだろ!」 「ユグドラシル様にとっては、歪んでなどいない。どうにかしたければ、自分の頭を使え。……おまえは、もう間違えないのだろう?」 クラトスの言葉にギリ、とロイドは歯を食いしばった。 「……ああ、やってやる! 互いの世界のマナを吸収し合うなんて愚かな仕組みは、俺が変えさせてやる!!」 「フッ……。精々頑張ることだな」 クラトスは微かな笑みを浮かべると、ルークへと視線を向けた。 ルークの顔を見たクラトスは、何処か安堵したような笑みを浮かべると、プロネーマを引き連れて天へと飛び立った。 「思い出した!」 突如、手を叩いてジーニアスは言った。 「あのプロネーマって奴、アスカード牧場の投影機に映ってた奴だ!」 「じゃぁ、ディザイアンじゃないか!」 「クラトスが邪魔しにに来たし、やっぱりディザイアンとクルシスは同じ組織なんだね……」 「ユアンも……クルシスと関係がありそうね」 ジーニアスの言葉に続けてリフィルはそう言った。 ロイドは髪を掻き毟った。 「あー、混乱するなぁ! 要は、あいつらは、まとめて全部敵なんだよな?」 「ええ。レネゲードに対しても、油断は禁物ね」 ロイドの言葉にリフィルは頷いた。 ジーニアスは、コレットに駆け寄ると、感情の戻ったコレットの蒼い瞳を見上げた。 「ねぇ、コレット。声以外も元に戻った? ちゃんと感覚とかあるの?」 「うん。大丈夫みたい。みんな、ありがとう。心配かけてごめんね。凄く久しぶりにお腹も空いてきた気がするし」 「そうか!」 コレットの言葉にロイドは、嬉しそうに笑った。 「……羽は、まだ出るみたいだけど」 「そっ、そうか……」 パタパタ光を散らしながら動く羽を見て、ロイドが肩を落とした。 それを見ながらゼロスは顎を摩った。 「う〜ん。やっぱり、俺様が見込んだ通り、コレットちゃんは笑ってると断然可愛いぜ〜♪」 その声にコレットは振り返ると、首を傾げた。 「えっと、あなたは……ゼロスさん?」 「おお! 俺様のこと、ちゃんと覚えてくれたんだなぁ! 同じ神子同士、仲良くしようぜ〜♪」 「あっ、よろしくおねがいします」 それにコレットは、礼儀よく頭を下げた。 「さて、どうしましょうか? とりあえずコレットの心が取り戻せたのだから、無理にシルヴァラントへ帰らなくてもいいのだけれど」 「決まってる。この後、コレットみたいな神子を出さない為にも、二つの世界を同時に救う方法を探すんだ」 「うん、そうだね。しいなとも約束したもんね」 「コレット……」 コレットの言葉にしいなは、目頭が熱くなるのを感じた。 「プレセアは? いつまでも連れ回してたら、可哀相だよ!」 「……私……帰りたい……です」 プレセアは、ポツリとそう呟いた。 「そういえば、あのケイトって奴にプレセアちゃんを会わせないといけないんだったな」 「でも、グランテセアラブリッジは、もう通れないじゃないかしら」 「そうだね。……メルトキオにあたしの仲間がいるんだ。その力を借りてみよう」 リフィルの言葉を聞いて、少し考え込んでから、しいなはそう言った。 「でもボクたち、反逆者なんでしょ。メルトキオにだって、入れないじゃないの?」 「そいつは俺様に任せとけ。メルトキオは俺様の庭みたいなもんだ」 「よし! 頼むぜ、ゼロス!」 「あっ、ああ///」 突如、飛び出したロイドの笑顔にゼロスは顔を赤らめた。 「さっ、さぁ、俺様のハニーたち、メルトキオへ出発だ♪」 そう言うとゼロスは、さっさと歩き出してしまった。 「…………コレット」 「どうしたの? ロイド?」 ロイドの声にコレットは、振り返る不思議そうに首を傾げた。 「……おかえり」 「うん。おかえり、コレット!」 照れくさそうに頬を掻いてそう言ったロイドに続けて、ルークも笑ってそう言った。 「ロイド、ルーク。……うん! ただいま!!」 二人の言葉が嬉しくて、コレットは笑顔でそう言った。 Symphonyシリーズ第4章第13話でした!! つ、ついにコレットが元に戻りました。長かったよ〜>-< ルークの声もコレットにはしっかりと届いてて、でも答えることができなかっただけでした。 アッシュの言った通り、ルークがやったことは決して無駄ではありませんでした♪ これにて第4章は完結です!引き続き、第5章を頑張ります!! H.23 9/1 第五章へ |