フウジ山岳へ向かう途中、ルークたちは野営を取った。
そして真夜中、アッシュは何故か目を覚ますと隣で寝ていたはずのルークの姿がなかった。
アッシュは起き上げってルークの姿を探すとルークは焚き火の近くにいた。
そして、コレットとかいった少女の手を優しく握っていた。

「………どうした、ルーク?」
「アッシュ! ……起きてたんだ」
「今、起きたんだ」

アッシュの声にルークは、驚いたような表情でアッシュを見た。
それにアッシュは、笑みを浮かべてそう言うと当たり前のようにルークの隣に腰を下ろした。

「で、何してんだ?」
「……コレットに話かけてるんだ」

アッシュの問いにルークは、コレットを見て答えた。
コレットの表情はいまだに感情が戻らず、人形のようだ。

「……まだ、コレットが心を失う前は、こうやって手を繋いだら、話せないコレットと会話が出来たんだ」
「それは……」
「うん。たぶん、フォンスロットが繋がったんだと思う。何でかよく解らないけど」

本来だったらアッシュとしか繋がらないフォンスロットがコレットと繋がった。
それを不思議には思っていたがルークはずっとそれを使ってコレットを呼びかけていた。
これで少しでもコレットの心が戻ってくれたらいいと思って……。

「……結局、俺がやってることは、何の意味もないかもしれないけどな」
「………そんなことねぇよ」

哀しそうに笑うルークにアッシュは首を振った。

「……いつか、おまえの声はそいつに届く。けど、あんまり無理するな。おまえが倒れたらそいつも、俺も哀しむからな」
「アッシュ……。ありがとう」

優しくルークの頭を撫でるアッシュの感触を感じながらルークは頷くのだった。






〜Symphony The World〜








「おい、ゼロス。どうやって運ぶんだ?」

頂上に引っかかるように不時着したままだったレアバードを前にしてロイドは訊いた。

「おう! とりあえず、こっちこっち……」

それに頷いたゼロスは、レアバードのほうへ駆け出した。
ルークたちもその後に続く。

「「「「「「「!?」」」」」」」

すると、突如ルークたちの周りから光が広がり、奇妙な檻の中に閉じ込まれた。
ただ一人、出遅れたコレットだけが外にいて、無表情のままルークたちを見つめている。

「まんまと罠にはまったな!」

そう声が聞こえたかと思うと、何もない空間から蒼い髪の男と彼の部下らしき者が数人現れた。

「……愚か者が!」
「ユアン!」

男を見たロイドがそう声を上げ、双剣に手をかけた。

「無駄だ。そんなもので破れるほど、この光子檻は脆くない」

ゼロスに皆の視線が一斉に注がれる。

「ゼロスくん……ドジです」
「俺様、しょんぼり……」

そう呟くプレセアの言葉にゼロスは、本当にガッカリしたように肩を落とした。

「おまえたちは、レアバードを運べ」
「はっ!」

ユアンの言葉に部下は、直ちにレアバードの回収を始める。

「今度こそ、貴様達を貰い受けるぞ! ロイド、そしてルークよ!!」
「ええっ!? なんで、俺とロイドが狙われてるの!?」

ユアンの言葉にルークは驚いて目を見開いた。

「そういえば、あのときルークは意識なかったもんね」
「彼はあなたの超振動(ちょうしんどう)の力を欲しているのよ」
「……なんだと?」

そう言ったリフィルの言葉にアッシュは眉を顰めた。
そして、ルークを背で庇うように立つとユアンを睨みつけた。

「てめぇなんかにルークは、渡さねぇぞっ!」
「!?」

アッシュの顔を見てユアンは、驚いたように瞠目した。
ルークとアッシュがあまりにもそっくりだったからだろう。
そんなユアンを気にすることなく、アッシュはユアンを睨み続ける。
そして右手に力、第七音素(セブンスフォニム)を収束させていることに気付いているのは、たぶんルークだけだろう。

「おや? ユアン様ではありませぬか。何故、このような場所に?」

すると、コレットの傍にもう一人、露出度の高い衣装を身に纏い、浮遊する黄金色の盾をマントのように展開させた化粧の派手な女が現れた。
そして、ユアンを見ると葡萄色の唇に微笑みを浮かべた。

「それは私の台詞だ、プロネーマ! 貴様たちディザイアンは、衰退世界を荒らすのだ役目だろう!!」
「私はユグドラシル様の勅命にてコレットを追っておりました。こちらにお引渡し下され」

女――プロネーマの言葉にユアンは、ちらりとコレットを見た。

「……よかろう。だが、神子(みこ)を渡す代わりにロイドは私が預かる。それでよいな?」
「そやつに関しては命令は受けておりませぬ故、ユアン様のお好きになされませ。しかし……」

そう言うとプロネーマは、ルークを見た。

「その赤毛の少年、ルークと言ったかぇ? 彼は、こちらが預かるぞぇ」
「! なっ、何故だ!?」

予想外のプロネーマの言葉にユアンは瞠目した。

「ユグドラシル様が、彼に逢いたいと仰せられた為です」
「……そうか。しかし、私も彼に用がある。私の用が終わってからでいいか?」
「……まぁ、ユアン様の頼みなら仕方ありませんぞぇ。とにかく、神子(みこ)は連れて行きますぞぇ」

プロネーマは、そう言うとコレットの許へと近寄った。

「コレット! 行くな!!」
「ホホホ。無駄なことよのぅ。心を失った神子(みこ)に、おぬしらの言葉に届かぬぞぇ」

必死にコレット呼びかけるロイドを見てプロネーマは嘲笑った。
だが、コレットの胸元にある≪要の紋≫を見た途端、その表情は一変した。

「なんと。クルシスの輝石にこのような粗雑な≪要の紋≫とは? ……愚かじゃのぅ。このような醜きもの、取り除いてくれようほどに」
「やっ、やめろっ!!」

辺りにロイドの悲痛な叫びが声に響いた。

















声が聞こえる。
視界もぼんやりと見ていた。
ロイドが誕生日プレゼントの首飾りを付けてくれてからは時々見えていたり、聞こえたりしてたの。
けど、声は出なかった。
身体も重くて、なかなか思うように動かせない。
何度かルークを助けたいという思いで何とか動かせたときはあったけど。
突如見えた光景は光の檻に閉じ込まれたルークたちの姿。
そして、自分の目の前にいる女だ。
徐々に視界がはっきりとしていく。
女は、自分の胸元にある首飾りを見て眉を顰めた。

「なんと。クルシスの輝石にこのような粗雑な≪要の紋≫とは? ……愚かじゃのぅ。このような醜きもの、取り除いてくれようほどに」
「やっ、やめろっ!!」

ロイドの悲痛な叫びを無視して女は自分の胸元へと手を伸ばす。
いやだ。
取らないで……。
これは、ロイドがくれた誕生日のプレゼントなんだよ。
大切ものなの。
だから、取らないで。
違う、取られたくない。
取られたくなんかないの。
だがら、お願い動いて!
私に力をください。

「やっ、やめてっ!!!」

必死に口を動かしたとき、コレットに声が戻った。
























Symphonyシリーズ第4章第12話でした!!
お久しぶりの更新です♪(更新遅すぎ;)
ユアンにもクルシスにも狙われるルーク。さすが、モテモテです♪
おかげでまた、アッシュの眉間の皺がww
次でコレット完全復活!!


H.23 9/1



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