「急ぐよ! あの橋は一部が跳ね橋になってるんだ! 橋を上げられちまったら、おしまいだよ!!」 サイバックの街中を駆け抜けながら、しいなはそう言った。 「ああ! みんな、急ぐぞ!!」 その言葉に頷きロイドはそう言った。 絶対、ジーニアスとリフィルを助ける。 絶対、死なせたりなんかしない。 そんな思いを胸にルークは、グランテセアラブリッジを目指して走った。 〜Symphony The World〜 「追いついたっ!」 視線の先にジーニアスとリフィルを見つけ、ロイドは叫んだ。 それを見たルークたちは、走り速度を上げる。 だがそのとき、橋がゆっくりと上がりだした。 「くそ、足止めするつもりか! 飛び越えるぞ!!」 「おいおいおい。無茶言うなよ! 橋から落ちたら死んじまうぞ!!」 そう言ったロイドの前に立ってゼロスが止めようとした。 「ほっといたら先生たちも死ぬ!」 それを振り切ってロイドは、再び走り出した。 「…………追跡します」 その後にプレセアもそう言うと走り出し、ルークたちも走った。 「…………アツイねぇ」 ゼロスはポツリとそう呟くと、ロイドたちの後に続いた。 その間にも端は徐々に上がっていった。 そこを駆け上がってルークたちは飛んだ。 だが、反対側の橋に飛び乗ることが出来たのは、アッシュだけだった。 「ルーク!」 橋に飛び乗ったアッシュは、すぐにルークへと手を伸ばした。 だが、その手はあと少しのところで届かなかった。 「ルーク!!」 アッシュは思わず叫んだ。 ルークは、落下する覚悟で目を瞑った。 すると、そんなルークを誰かが掴まえた。 「……コレット?」 「…………」 それはコレットだった。 コレットの背中に生えている羽から淡い光がキラキラと舞う。 コレットはルークの声に反応することなく、そのままルークを連れてアッシュのいる橋へと向かった。 「……ウンディーネ! 助けて!!」 口中で詠唱したしいなは、そう叫んだ。 すると、水面に青い光が現れ弾けると、そこからウンディーネの姿が現れた。 ウンディーネが水の粒子を操り、しいなたちを押し上げた。 そして、ゆっくりと橋の上へと下ろした。 「みんな!!」 そこへすぐさまルークが駆け寄り、後からアッシュとコレットがやってきた。 「……未知の存在により着地。損傷箇所、無し」 プレセアは身体のあちこちを確かめるとそう呟いた。 「うへぇ……死ぬかと思った;」 「しいな、助かったよ!」 「呼び出せて良かった……」 ロイドの言葉に安堵したようにしいなは、息をついてそう言った。 「……あの。ジーニアスと先生が…………」 「! そうだ! 二人を助けないと!!」 プレセアの声に我に返ったようにそうロイドは、声を上げると走り出そうとした。 だが、その前に騎士たちのほうからルークたちに近づき、武器を構えた。 「くっ、脱走してきたか!」 「俺たちの仲間を返せっ!」 「うっ、うるさいっ!」 騎士の一人がロイドに向かって斧を振り落とした。 それをロイドはあっさりとかわす。 「――――魔神剣!」 双剣から衝撃波が放たれる。 それは見事に騎士に命中した。 「受けてみなっ! ――――ファイヤボール!!」 ゼロスが剣を掲げるように持ち、叫んだ。 すると、その剣先から巨大な火球が現れ、騎士たちに向かって飛んでいく。 騎士たちに火球が命中した。 「くらえっ!」 そこへすかさずルークが崩襲脚を地面へと喰らわせる。 騎士たちに当てることが目的ではない。 火のFOFを発生させる為だ。 「吹き飛びな!」 そして、アッシュが動き、天高く飛ぶ。 「――――紅蓮襲撃!!」 その身に炎を纏い、そのまま地面を蹴る。 辺りに炎が踊るように立ち昇り、騎士たちを呑み込んでいった。 「…………屑が……」 そう吐き捨てるように言うとアッシュは、剣を鞘へと収めた。 「ロイド! みんな!!」 完全に騎士たちが動かなくなったとき、ジーニアスの声が聞こえた。 ルークは騎士の一人から鍵を奪い取ると、それを使ってジーニアスとリフィルの手首に嵌められている手錠を外した。 「……助けに、来てくれたのね」 何処か安心したような声でリフィルは、そう言ったのルークは頷いた。 「当たり前だろ、仲間なんだから」 そして、ロイドが当然のようにそう言った。 だが、それにジーニアスの表情が何故か曇った。 「でもボクたち……ハーフエルフなんだよ?」 「それがどうした?」 「ロイド!」 笑ってそう言ったロイドにジーニアスは、嬉しそうな表情になった。 そして、リフィルはゼロスたちへと視線を向けた。 「……テセアラ組は? 私たちが合流してもいいの?」 「あたしもミズホの民っていうちょっと毛色の変わった一族さ。あんたたちと変わらないよ」 「……正直、全く平気って訳でもないが、俺様も天使の血を引くとか言われてるしな。まぁ、お互い様さ」 「私は……帰りたいだけ」 リフィルの問いにしいな、ゼロス、プレセアはそれぞれそう言った。 「そう……わかったわ」 「……ルークは?」 「えっ?」 不安げな瞳で自分を見つめてそう言ったジーニアスの言葉にルークは不思議そうに首を傾げた。 「……ボクはディザイアンと同じハーフエルフなんだよ。……怖くないの?」 「何言ってるんだよ! 怖いわけないだろ!! ジーニアスはジーニアスだろ?」 「……ルーク!」 その言葉が嬉しかったのか、ジーニアスの表情がパッと輝いた。 「…………それに、ジーニアスたちが疎まれるんだったら……俺なんか……」 「えっ……?」 ルークは哀しそうな笑みを浮かべた。 「……俺、本当は――」 「ルーク!!!!」 ルークが何を言おうとしたのかがわかったのかアッシュは、それを遮るように怒鳴った。 ルークの肩がビクッと震え、そしてアッシュの顔を見た。 アッシュの翡翠の瞳に苛烈な光が帯びていた。 怒っていると、すぐにわかった。 「ごっ、ごめん……」 「…………」 謝るルークに対して、アッシュは何も言わずただ溜息をつくだけだった。 「……そういえば、どうしてしいながここにいるの?」 いきなりアッシュが怒鳴ったことに驚きつつも、ジーニアスはしいなに尋ねた。 「……頭領の命令だよ。あんたたちの監視を命ぜられたのさ」 「ミズホの民らしいな。王家につくか、ロイドたちにつくか、考えようってことか」 そう言ったしいなの言葉にゼロスは、納得したようにそう言った。 「監視役が二人に増えたかぁ」 「でもあたしは、あんたたちをどうこうしようなんて、これっぽっちも考えていないよ」 「そんなことわかっていてよ。あなた、正直すぎるもの」 リフィルは優しい笑みを浮かべるとそう言った。 「この際何でもいいさ。しいなにヴォルトと契約してもらって、レアバードの燃料を入れてもらおうぜ!」 「! ヴォ、ヴォルトッ!?」 何気ないロイドの言葉にしいなは、真っ青な顔になってそう言った。 「…………しいなさん?」 「……あっ……いや……」 首を傾げたプレセアにしいなは戸惑った。 「だったら、レアバードを先に回収しないか? どのみち、ヴォルトの神殿はグランテセアラブリッジを渡った先だ。どうせ橋は封鎖されてんだから、レアバードを回収した方が早い」 「回収たって、どうやって運ぶんだよ?」 「そこはこのゼロス様にお任せあれ〜♪ そんなこともあろうかと、秘密兵器を用意しといたぜぇ」 「秘密兵器って、何?」 ゼロスの言葉にルークは首を傾げた。 「そいつは後のお楽しみ〜♪ さぁ、とっとと行こうぜ、フウジ山岳へ」 「…………」 そう言うとゼロスは、さっさと歩き始めた。 それを何も言わずにアッシュは、見つめていた。 「……また、あの山を登るのか……;」 それにガックリとうなだれるロイドを見て、ルークは苦笑するのだった。 Symphonyシリーズ第4章第11話でした!! さすが完全同位体!ルークとアッシュは息がぴったりですww そして、ルークが何を言おうとしたこともアッシュはすぐにわかって静止させるしww アッシュはルークに傷ついて欲しくないんですよね♪ 次回は、フウジ山岳です!! H.23 1/16 次へ |