暫く、光の流れに耐えると視界が明るくなった。
そして、そこから現れたのは大地だ。
オールドラントとも、シルヴァラントとも違う。
次元の歪を超えて、ルークたちはテセアラにやってきたのだ。






〜Symphony The World〜








「うわぁっ! なっ、なんだ!?」

テセアラに着いた途端、レアバードに異変が起こった。
突然、レアバードから鈍い音が聞こえたかと思うと急に速度が落ちたのだ。

「わかんないよ、突然……」
「ねぇ、見て! 燃料がゼロになっているわ!」

リフィルの声にレアバードの燃料メータを見ると、確かにゼロになっていた。

「そうか! あんたたちがシルヴァラントの封印を解放したから、こっちのマナが不足しているんだ!」
「だから!?」
「落ちるってことサ!!」

しいながそう叫んだ直後、レアバードのエンジンは完全に止まり、急降下した。

「「「うわぁ〜〜〜〜!!」」」

辺りに三人の声が響き渡った。

















「……みんな、大丈夫か?」

人影のない山岳にレアバードは墜落した。
ロイドは、自分のレアバードからすぐに下りると、ルークたちの許へと駆け寄った。

「うん……。なんとかね」

それにルークはそう答えた。
ルークたちの無事な姿を見たロイドは安堵の表情を浮かべた。
そして、改めて墜落したレアバードに目を向けた。
レアバードからは煙が上がっているが、機体自体は何処も異常はないようだ。

「一応……大破は免れたかな……」
「どっちにしたって、燃料がないと飛ばないじゃん!」

呑気なロイドの声にジーニアスは思わず声を上げた。

「燃料って、石炭か?」
「あんたたちねぇ! そんな古臭いもの、こっちじゃ使ってないよ;」

ロイドの言葉にしいなは、呆れたようにそう言った。

「それなら魔力ね。ヴォルトの生み出す雷のマナかしら」
「じゃぁ、しいながヴォルトを呼び出せばいいじゃないの?」

ジーニアスの言葉にルークたちは一斉にしいなの顔を見た。

「アッ、あたしはヴォルトとは……契約してないから……」

それにしいなは、申し訳なさそうにそう言った。
だが、ルークにはそれが何処か哀しげなものに見えた。

「そうか。そしたら、これはここに置いておくしかないか」
「あ〜あ。魔科学も結構不便だなぁ」

ジーニアスは、残念そうに溜息をついた。

「……? ねぇ、あれを見て!」

ふと、辺りを見渡したルークがある方向を指差して、そう言った。
ロイドたちもその方向へと視線を向けた。
その先にあったものは……。

「あれは……《救いの塔》!?」

何処までもそびえ立つ白亜の塔。
それは間違いなく、《救いの塔》だった。

「どうして? ここは、テセアラでしょ!?」
「当たり前さ。《救いの塔》は繁栄世界に出現するんだ。そっちだって、コレットが神託を受けたから、《救いの塔》が現れたんだろ?」
「二つの世界。二つの塔……」

リフィルは、そう呟くとしいなのほうへと顧みた。

「聖地は? こちらにも、マーテル教はあるのでしょう? 聖地はカーラーンなの?」

リフィルの言葉にしいなは、当然といった感じでに頷いた。

「そうさ。あの《救いの塔》がある場所が聖地カーラーン。あんたたちの世界と同じだよ」
「聖地カーラーンってのは、古代対戦の停戦調印場所だよ! 二つあったらおかしいじゃない!!」
「そっちのがまがいものじゃないのかい? こっちの博物館には、勇者ミトスが二人の古代王を聖地カーラーンに招いて停戦の調印をしたって、資料も残ってるんだよ」

ジーニアスの言葉にしいなは、眉を顰めてそう言った。

「こちらにも資料ならあってよ。パルマコスタの学問所に調印式で使われた道具が残っているらしいわ」

しいなの言葉にリフィルは反論するようにそう言った。
それにルークは、ただ首を傾げていた。

「……どっちかが偽物か。意外とどっちも本物、とか?」
「そんなわけないでしょ!」

ロイドの言葉に再びジーニアスは声を上げた。

「怒るなよ、言ってみただけだろう; ……まぁ、いいや。とにかく行こうぜ」
「そうだね! ここで考え込んでいても結論は出ないかもしれないし」

ロイドの意見に賛成するように、ルークは頷いた。

「うわぁ! テセアラでの、初冒険だね!!」
「……ジーニアス。遠足じゃなくてよ」

嬉しそうに、はしゃいだジーニアスに対して、リフィルは溜息をつくのだった。

















「……ところでさ。何処へ行くんだ?」
「「「「…………」」」」

山岳を下る途中、突然先頭を切って歩いていたロイドが振り返り皆に尋ねた。
歩きながらリフィルに今までの経緯を聞いていたルークはその発言に苦笑し、しいなたちは呆れたような表情になった。

「あっ、あんたねぇ! 行こうって言い出したのはあんただから、何処に行くのか知ってるのかと思ったよ!」
「知るわけないじゃん。俺、シルヴァラントの人間なのに」

しいなの言葉にロイドは、ケロッとした顔でそう言った。

「あ〜あ〜、そうだってね! あたしが悪かったよ;」

それに対してしいなは、頭を押さえてそう言った。

「メルトキオさ、王都メルトキオ。テセアラの中心。テセアラを統べる国王陛下がいらっしゃる街だよ」
「そこって、ここからだと遠いの?」
「そんなに遠くはないよ。ここから北に少し行ったところさ」

ルークの問いにしいなはそう答えた。

「メルトキオか〜! 早く、行こうぜ!!」
「……はぁ、そうだね;」

はしゃいでそう言うロイドにしいなは溜息雑じりでそう言った。
そして、再び山岳を下ろうとルークたちは足を進めた。
そのとき――。

「うっ……!」

突然、眩暈に襲われたルークは、その場に膝をついた。

「「「「ルーク!?」」」」

それに驚いたロイドたちは、すぐにルークの許へと駆け寄った。

「……大……丈夫。ちょっと……眩暈がしただけ」
「ちょっとって……。そんな顔色で、大丈夫なわけないだろ! 一度、休憩したようがいいよ!!」

ロイドたちに心配させないようにそう言って笑ったルークにしいなはそう言った。
しいなの言う通り、ルークの顔色は悪く、とても大丈夫とは言えないものだ。

「……ごめん、俺のせいで」
「何言ってるんだよ! ルークは何も悪くないよ」
「そうよ。むしろ、悪いのは私たちのほうよ。ルークの身体のことを考えないでここまで来てしまったのだから。……ごめんなさい」
「そっ、そんな! 謝らないでください、リフィルさん」

リフィルの言葉にルークは、あたふたしながらそう言った。

「あら、さきに謝ったのはルークのほうよ。だから、これでお相子です」

それに対してリフィルは、笑みを浮かべてそう言った。

「で、でも……」
「まあ、いいじゃん。それより、休憩しようぜ。俺、マジで疲れたし」
「もう! 大体、ロイドがさっさと歩くのがいけないでしょ!!」
「はいはい。俺が悪かった」

ジーニアスの小言をロイドは軽く聞き流した。
そんな二人のやり取りを見てルークは微笑んだ。

「……ありがとう、ロイド」

小さくそう呟いたルークの声は、ロイドの耳にはちゃんと届いていた。
























Symphonyシリーズ第4章第1話でした!!
第4章へ突入しました!そして、いよいよテセアラにやってきました!!
もう少しで、ルークとアッシュが再会しますよ!!
でも、どのタイミングで再会させるか全然考え付いてないです(おい!!)
そんなこんなで、次回はメルトキオへ!!


H.21 6/20



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