「彼の者を死の淵から呼び戻せ! ―――レイズデッド!」

リフィルは、覚えたばかりの治癒術をピエトロにかけた。
それによって、怪物化しかかっていたピエトロの身体は元に戻り、エクスフィアがポロリと床に落ちた。
意識を取り戻した彼は何故牧場から脱走したのかを話してくれた。
彼の話によると、ディザイアンはエンジェルス計画というものを進めていて、何かを復活させようとしていることを。
それとあわせて別の牧場では魔導砲という兵器を開発しているというのだ。
クラトスの話によれば、《カーラーン大戦》において『トールハンマー』という兵器が存在したという記述があったらしいので、それかもしれないとのことだ。
そして、今ルークたちはハイマにいた。
最後の封印を明日に控えて……。






〜Symphony The World〜








最後の封印を明日に控えたルークたちは、最後の時間を自由に過ごしていた。
明日になったら飛竜に乗って《救いの塔》に行ってコレットは最後の封印を解放するのだ。

「明日でシルヴァラントは、救われるんだな……」

《救いの塔》を眺め、しいなはそう言った。

「おまえは、どうするつもりだ?」

ロイドの問いにしいなは肩を竦めた。

「さーねぇ。神子(みこ)を信じるしかないよ。こっちの神子(みこ)は信用できそうだし」
「? 何だよ、それ? 信用できない神子(みこ)なんてのがいるのか?」

しいなの言葉に思わずロイドは、首を傾げてそう言った。

「テセアラの神子(みこ)だよ。いけ好かない奴でサ」
「ああ、そうか。テセアラにも神子(みこ)はいるんだな」

呆れたようにそう言ったしいなに対して、ロイドは納得したようにそう言った。

「二つの世界に二人の神子(みこ)。……ああ、神様なんてものが本当にいるのなら、どうしてこんな世界を創ったのかねぇ」

しいなの言葉にロイドは頷いた。

「そうだな。ぶっ飛ばしてやりたいよな」
「アハハハハ! 本当にねぇ……」

ロイドの言葉にしいなは思わず吹き出したが、次第に表情は硬くなっていった。

「……本当にどついてやりたいよ」

そう言ったしいなの声は、怖いくらい静かなものだった。

















「ロイド、コレットのところに行ってあげなさい。……最後なんだから」

宿屋の前をロイドが通りかかると、リフィルにそう声をかけられたのだった。
それを聞いたロイドは眉を顰めた。

「……最後?」
「……人としての、最後の夜だから」
「先生、学者なんだろう? どうにかならないのか?」
「……まだ、わからないの? お馬鹿さんね」

ロイドの言葉に何処か哀しみを含んだ笑みをリフィルは浮かべてた。

「学者だから、天使になっていくコレットに興味があるのよ」
「嘘だろ、先生?」
「……さぁ、どうかしら。……ほら、もう行きなさい」

ロイドの瞳から逃げるようにリフィルは言うと、ロイドの背中をそっと押した。
それに後押しされるようにコレットにいる坂の上を目指して、ロイドは歩き出した。

















「……明日には……あそこに行くんだね……」

《救いの塔》に目をやって、ルークはそう呟いた。
隣にはコレットがいて、ルークの手をしっかりと握り締めていた。

――――……ごめんね、ルーク。
「……どうして、コレットが謝るんだよ?」

突然コレットに謝られたルークは、不思議そうに首を傾げた。

――――……私、いつもルークに迷惑ばかりかけていたから……。
「そっ、そんなことないよ! 俺は、コレットと話が出来て嬉しかったし!!」

コレットの言葉にルークは、思いっきり首を振ってそう言った。

「……俺には、こんなことしか出来ないし……!」

シルヴァラントも、テセアラも、コレットも救うことを決意したのに……。
それなのに、俺は何も出来ないでいる。
それが悔しくて、悔しくて堪らないのだ。

――――ルーク……私なら大丈夫だから、気にしないで。
「でもっ!!」
――――そうだ、ルーク! あの歌を歌って♪
「……えっ?」

いきなりのリクエストにルークは、拍子抜けしたような声を出した。

――――私、あの歌好きだよ♪ ……だから、お願い。
「……わかったよ。……ちょっと、恥ずかしいけどね///」

ルークは少し照れくさそうにそう言うと、コレットは嬉しそうに笑みを浮かべた。
その笑みを見たルークも微笑むと深く息を吸った。
そして、ルークの口から美しい旋律が流れ出した。

トゥエ レィ ツェ クロア リュオ トゥエ ズェ

クロア リュオ ツェ トゥエ リュオ レィ ネゥ リュオ ツェ

ヴァ ネゥ ズェ トゥエ ネゥ ツェ リュオ ツェ クロア

リュオ レィ クロア リュオ ツェ レィ ヴァ ツェ レィ

ヴァ ネゥ ヴァ レィ ヴァ ネゥ ヴァ ツェ レィ

クロア リュオ クロア ネゥ ツェ レィ クロア リュオ ツェ レィ ヴァ

レィ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レィ レィ

歌い終わるとルークは、顔を真っ赤にさせた。
コレットは嬉しそうに笑うと拍手をした。

――――ありがとう、ルーク♪ とっても、素敵だったよ!!
「あっ、ありがとう///」

コレットの言葉にルークは、恥ずかしそうに頭を掻いた。

「あっ! あのさ、コレット。俺、コレットに聞きたいことが――」
「コレット!」

思いついたようにルークがそう言い掛けたとき、誰かの声によって遮られた。
ルークがその方向へと視線を向けると、こちらに向かって走ってくるロイドの姿を捉えた。

「コレット。話しない……」
そう言い掛けたとき、ロイドはコレットの隣にルークがいることに気が付いたようだった。
そんなロイドの様子を見たルークは思わず苦笑いを浮かべた。

「あっ! ロイド、ちょうどよかった!! コレットと話してあげて♪」
「あ、ああ……。けど、話の途中だったんじゃ?」
「あっ、いいんだよ、別に。大したことじゃないし。じゃあね!!」
「おっ、おい! ルーク!!」

ロイドの言葉を無視してルークは、走って坂を下りていった。

「……なんだったんだよ?」

首を傾げたロイドだったが、すぐにコレットと向かい合った。
その時コレットも不思議そうに首を傾げていたが、ロイドの視線がこちらへと向くと少し緊張したような表情になった。

「……コレット。せっかくだし、少し話しようぜ。書いてくれたらいいからさ」

それにコレットは、笑みを浮かべるとそれに合意したように頷くのだった。
























Symphonyシリーズ第3章第8話でした!!
ハイマへとやってきたルークたち。
そして、天使になる前の最後のときをここで過ごすのです。
結局、ルークはコレットに何を言い掛けたのかな?(おい!)


H.20 11/17



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