「ふぁ〜〜ん」

ユウマシ湖を目指す中、ルークは大きな欠伸をした。

「どうしたの、ルーク? 昨日、眠れなかった?」

それにジーニアスは面白半分、心配半分といった感じで尋ねてきた。

「そうなのか、ルーク? だったら、一度休憩にするか?」
「えっ? えっ!? いいよ、別に! ちょっと、遅くまで起きていただけだからさ;」

そう言ったロイドに対して、ルークは慌ててそう返した。

「でもな……」
「本当に、大丈夫だから! 休憩したいと思ったらちゃんと言うからさ!! な?」
「……わかったよ」

ルークの言葉にあまり納得していないような感じでロイドはそう言った。

「……コレット?」

すると、コレットがそっとルークの手を握り締めた。

――――……ごめんね。私のせい……だよね。

「……コレットのせいじゃないよ。俺がそうしたいからやったことだし。だから、気にしないで」

哀しそうに揺れるコレットの蒼い瞳を見つめて、ルークはコレットにしか聞こえないような小さな声でそう言った笑ったのだった。






〜Symphony The World〜








「頼むぞ、しいな! ウンディーネに俺たちを運んでもらってくれ!!」

ユウマシ湖に到着したロイドは、拳を握ってそう言った。

「ああ! 任しときな!!」

そう言って力強く頷くとしいなは懐からアクアマリンの指輪を取り出した。
が――。

「それは無理だ」

クラトスのその一言でその動きは止まった。

「どうしてですか?」

その言葉に不思議そうにルークは首を傾げた。

「ユニコーンには、清らかな乙女しか近づくことが出来ない。少なくとも、私とルーク、ロイド、ジーニアスは無理だ」

その言葉にロイドは肩を竦めた。

「女だけしか近づけさせないなんて、選好みするんだなぁ。じゃぁ、先生たちだけで――」
「私は残らさせてもらうわ」

ロイドの言葉にそうリフィルは即答した。

「水の上を行くなんて……絶対にお断りです! ……コレット一人でお行きなさい」
「あっ、あたしには、資格なしだって、言うのかい!?」

そう言ったリフィルに対して何故かしいなは、憤慨した様子でそう怒鳴った。
そんなしいなの様子にルーク、ロイド、コレット、ジーニアスは不思議そうに首を傾げた。

「「「資格?」」」
「さっ、三人で声を揃えて言うじゃないよっ!」

しいなは、顔を真っ赤にさせてそう言った。

「……では、コレットとしいなで行けばよかろう」

少し呆れたそうに溜息まじりでクラトスは言った。

「そっ、そうするよ!!」

それに対して何故かしいなは、怒ったようにそう言うと湖の縁に立った。
そして、アクアマリンの指輪を指に嵌める手その手を天へと伸ばした。

「清漣より出でし水煙の乙女よ! 契約者の名において命ず! 出でよ! ――――ウンディーネ!!」

















「……大丈夫かな、コレットたち」

湖の中央をルークは心配そうに眺めてそう言った。
今、コレットとしいなは湖の中央にいた。
精霊ウンディーネの力を借りて二人は、水面を浮いているのだ。
そして、そんな二人の傍にいるのは白馬だ。
あれがユニコーンなのだろう。
しいなとユニコーンは何かを話している様だが、ここからだと全く聞こえない。
だから、ルークはただただ眺めているしかなかった。

「大丈夫だよ。コレットなら、きっとユニコーンの角を分けてもらえるよ!」
「そうだぜ、しいなもついているしな!」

そんなルークにジーニアスとロイドはそう言った。

「そうだといいんだけど……?」

それにルークはそう答えたとき、途中で何処からか視線を感じた。
その方向に視線を向けるとそこにいたのはユニコーンだった。
ユニコーンは、何故かルークのことをジーッと見つめていた。

『……聖なる……焔の光?』
「えっ?」

頭に響くような声がしたかと思うと、ユニコーンが突如ルークの視界から消えた。
すると、何故かロイドたちが自分から距離を取ったことに気付く。

「……ロイド? どうし――」
振り返り、ロイドにそう問いかけようとしたとき、ルークの背後に何かが降り立った音がした。
恐る恐るルークは降る向くと、そこにいたのはなんとユニコーンだった。
間近で見るユニコーンの身体の色は白銀で蹄は金色、若草のような緑の鬣。
そして、何より特徴的なのは額の白と水色の縞模様の角だ。
漆黒の瞳がルークをジーッと捉えている。

『……この輝き。……間違いない。おまえは、《聖なる焔の光》か?』

ルーク


俺の名前は、ルークの世界の古代イスパニア語で、《聖なる焔の光》を意味するのだ。

『間違いない。盲いた私でもはっきりわかる。おまえは《聖なる焔の光》だな』

そう言うとユニコーンは、見えぬ目を窄めた。

『……そうか。彼女はこのことを言っていたのだな』
「! 彼女って……じゃぁ、あなたは俺をこの世界に連れて来た人を知っているんですか!?」

ユニコーンの言葉にルークは目を見開き、そう問いかけた。
この世界に来たときに聞こえた声は女性の声だった。
俺に助けを求める声、それが俺がこの世界に来た唯一の手がかりなのだ。
ルークの問いにユニコーンは、コクリと頷いた。

『ああ…。おまえは彼女の願いを叶える為にこの世界に連れて来られたのだ』
「彼女の……願い? それって、どんな願いなの?」
『それは私もわからぬ。彼女は、それを私には言わなかった』
「そうか……」

ユニコーンの言葉にルークは、残念そうに肩を落とした。
『……《聖なる焔の光》よ。どうか、彼女に逢ってほしい。彼女はずっと、おまえのことを待っているはずだろう』
「えっ? でも、何処にいけば逢えるの?」

ルークがそう言って首を傾げるとユニコーンは、ルークから視線を外した。

『……世界を支える場所。そこに彼女はいる』
「……世界を……支える場所?」

ユニコーンの云う世界を支える場所。
それが何処を示しているのかルークにはわからなかった。

『《聖なる焔の光》。おまえにこれを託そう』

それを聞き直そうとルークが口を開きかけたとき、ユニコーンの角が輝きだした。
六色の光へと変化すると、その光はルークの手の中で再び一本の角へと変わった。
すると、

「!? どうしたの!?」

目の前にいるユニコーンの身体が透け、消えようとしているのを見て、ルークは驚いて声を上げた。

『……我々にとって角は命そのもの。私の役目は終わった』
「そんなっ!!」

ユニコーン・ホーンを握り締め、哀しそうな顔をするルークを見て、ユニコーンは優しげな瞳でルークを見つめた。

『案ずることはない。これは全て定められていたことだ。彼女にこれをおまえに託して欲しいと頼まれたのだからな。それに、私から新たな命が誕生する。その新しい命が終わると、またそこから新しい命が生まれる。そうやって、我々は行き続ける……永遠に生き続ける……』

ユニコーンの身体が輝きそれが消えると、神獣の姿はそこの場からいなくなっていた。

「ルーク!」

ユニコーンの姿がなくなると何処に隠れていたのかロイドたちが現れ、ルークに近づいた。
コレットとしいなも水面を走ってルークに近づいた。

「ルーク。ユニコーンは……?」
「ユニコーンは……」

ユニコーン・ホーンを強く握り締め、ルークは俯いた。

「ユニコーンがおまえに角を託したということは、ユニコーンは死んだのか」
「!? クラトス、そのこと知ってたの?」

顔を上げてそう言ったルークにクラトスは静かに頷いた。

「ユニコーンは角を失くすと死ぬが、死ぬことでまた新しいユニコーンが誕生する。だから、ユニコーンは死と再生の象徴なのだ」
「死と再生の象徴……かぁ」

再びユニコーン・ホーンに視線を移すと、ルークは呟いた。

「とにかく、これはリフィルさんに渡しておきます」

ルークはそう言うとリフィルに近づき、ユニコーン・ホーンをリフィルに手渡した。

「これで、コレットの身体も元に戻せるよね!!」

嬉しそうにそう言ったルークに対して、コレットは首を振った。
それにロイドの目が見開く。

「どうして!?」
「……コレットは先にピエトロを助けたいって、そうユニコーンに話してたんだよ」

それに答えたのは、しいなだった。

「……解りました。それがコレットの望みなら、叶えましょう」

リフィルが何処か哀しげな表情はそう言うと、コレットはコクリと頷いた。

「それにしても、ルークは凄いよね! ユニコーンの方からルークに近づいていったんだもん!!」
「そっ、それはっ!!」

ジーニアスの言葉にルークは、顔を赤らめた。

「ユニコーンは、女しか近づけさせないんじゃなっかたのかよ?」
「その……はずだが……」
「じゃぁ、なんでルークは近づけたんだよ?」
「それは私にもわからん;」

ロイドの問いにクラトスは、困ったようにそう言った。

「きっと、ルークは『聖なる乙女』なんだよ♪」
「なっ、なんだよ! ソレ!! 第一、俺は男だし!!!」

思いついたようにそう言ったジーニアスに思わずルークは怒鳴った。

「いいじゃん♪ 細かいことは気にしない、気にしない♪」
「少しは気にしろよ!!」













こうして、ルークは『聖なる乙女』の称号を手に入れたのだった。
























Symphonyシリーズ第3章第7話でした!!
ユニコーンの設定を軽く無視しましたww
だって、ルークは『聖なる乙女』だもん!(おいっ;)
ユニコーンの云う彼女が誰なのか、大体はわかりますね?


H.20 11/17



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