「みんな〜。早く早く!!」

ソダ島に一番乗りしたルークは、海に向かって手を振ってそう言った。
それに答えるように、徐々にたらいがこちらへと近づいてきた。
ロイドとジーニアスが着き、次にしいなが到着した。

「コレット、リフィルさん! 後もう少しだよ!!」

必死にこちらへと向かっている二人にルークは、そう呼びかけた。
そして、漸くソダ島に辿り着くとリフィルはすぐさま陸へと移った。
コレットもそれに続いて陸へと上がろうとした。
そのとき――。

「!?」

突然の波にたらいが揺れ、コレットはバランスを崩した。

「危ない! コレット!!」

それにルークは咄嗟に手を伸ばし、コレットの手を掴むと、陸へと引き寄せた。
それにコレットは感謝の意を込めて笑った。

――――ありがとう、ルーク!
「えっ?」

突如、自分の頭の中に響いたコレットの声にルークは驚いて目を見開いた。

「? どうしたんだ、ルーク?」

それを見たロイドは、不思議そうにルークに尋ねた。

「えっ? あっ、いや……なんでもないよ!」
「…………?」
「そっ、それより早く、水の封印に行こ!」

そう言うとルークは水の封印を目指して歩き出すのだった。






〜Symphony The World〜








「……どうしたの、しいな?」

洞窟の中を進むルークは、一番後ろを歩くしいなに声をかけた。
しいなの顔は、何処か不安げな表情をしていたから。

「いや……なんでもないサ」

しいながそう答えると、しいなの足元にポンと何かが弾けるような音がした。
そこから、コリンという生き物が現れて心配そうにしいなを見上げた。

「しいな、契約が失敗するのが、怖いの?」

コリンの言葉にしいなの肩がビクッと震えた。

「……そうなの、しいな?」

ルークの言葉にしいなは、小さく頷いた。

「……ああ。前に精霊と契約に失敗して……」

「大丈夫! しいなが失敗しそうになったら、コリンが助けてあげるから!!」

しいなの呟きにコリンは、元気よくそう言った。

「………俺もさ……一度、取り返しのつかない失敗をしたことがあるんだ」

俺のせいで大勢の人の命を奪ってしまった。

「なのに……俺は、そのときと同じことをしなくちゃいけないことが何度かあったんだ」

超振動(ちょうしんどう)を使うとき、また誤ってパッセージリングを消してしまうじゃないかと、怖かった。

「けどさ、それを克服できたのは、ティアたちがいてくれたからだと思うんだ。……だから、しいなも俺たちに頼っていいんだよ」
「ルーク。……ありがとう」

ルークの言葉にしいなは、笑みを浮かべてそう言った。

















「しいな。契約って奴を頼む」

祭壇の前へとやってきたロイドは、しいなを見てそう言った。

「……契約、か」
「…………」

小さく呟くクラトスの言葉にしいなの表情が強張った。

「……大丈夫だよ、しいな。俺たちが傍にいるから」
「ルーク。……わかった、やってみるよ。……まだ、ちょっと怖いけどね」

ルークの笑みにしいなは、小さく微笑むと踵を返して一人祭壇へと歩き出した。
すると、円形をした祭壇の中央の青白い光が、それに反応するかのように強く点滅し始めた。
やがて、その光は人の形をとった。
その姿は若い女性に似ていたが、紫色をした髪は明らかに流体からできていた。
閉じられていた瞼から現れた現れたのは、ルビーのように紅い瞳であった。

「……契約の資格を持つ者よ。私はミトスとの契約に縛られる者。あなたは何者ですか?」

まるで、静かに水が流れるように、尚且つ厳かに精霊ウンディーネはそう言った。

「ミトスって、《カーラーン大戦》の勇者ミトスか?」

そう言ってロイドは、首を傾げた。

「ミトスって剣士のくせに、召喚まで出来たんだ」
「ミトスの名前は男の子としては、ありがちな名前だから、勇者ミトスとは限らないわね」

そんな会話を背中越しで聞きながら、しいなは大きく息を吸った。

「我はしいな! ウンディーネとの契約を望む者!!」

力強くそう言ったしいなの言葉にウンディーネは、残念そうに首を振った。

「このままでは……出来ません」
「! なっ……何故!?」

しいなの顔色が変わった。
まるで、その原因は自分にあるのだろうと疑っているようだった。

「私は既に契約を交わしています。二つの契約を同時に交わすことは出来ないのです」
「ミトスって奴との契約か……」

しいなは、唇を噛んだ。
そして、ルークたちへと振り向いた。

「どうしたらいいのさ! 研究機関じゃこんなこと習わなかったよ!!」
「……う〜ん。前の契約をなかったことにしてもらえばいいじゃないか?」

軽く腕を組んでロイドは、そう言った。

「どうやって!? 前の契約者のミトスって奴が何処にいるかもわからないのに!」
「精霊との契約には誓いが必要だ」

しいなの問いに答えたのはウンディーネではなく、クラトスであった。

「契約者が誓いを守る限り、契約は行使され続ける」
「……そうです」

クラトスの言葉にウンディーネは頷いた。

「それは知ってるよ。精霊は契約者の誓いに賛同し、契約を交わす」
「そうだ。だから、おまえはロイドの言うとおり、過去の契約を破棄と、自分の契約を望めばいい。前の契約者が誓いを破っているかもしれないし、もう亡くなっているかもしれない」
「そんな簡単でいいの?」

クラトスの言葉にジーニアスは首を傾げた。

「簡単と言うが、前の契約者が生きていたり、誓いを破っていなければ、どうすることもならないのだ」
「…………わかったよ」

しいなは頷くと、再びウンディーネと向かい合った。

「ウンディーネ。我が名はしいな。ウンディーネがミトスとの契約を破棄し、私と新たな契約を交わすことを望んでいる」

すると、ウンディーネは軽く目を伏せ、静かなルビーの瞳が苛烈な光を宿した。

「……新たな誓いを立てる為に契約者としての資質を問いましょう」

ウンディーネがそう言うと、彼女の手に水からできた剣が現れた。

「しいな、武器を取りなさい。後ろにいる者たちの助力も認めます」
「えっ! 戦うのか!?」

ウンディーネの言葉にロイドは、驚いて目を見開いた。

「……誓いだけじゃ駄目、ってことかい。……わかったよ」

そう言うと、しいなは懐から札を取り出した。

「……コレット、危ないから下がってろ」

気を取り直したロイドは双剣に手を伸ばしながら、コレットにそう言った。
しかし、コレットは首を縦には振らなかった。

「……頼むから、言うことを聞いてくれ! コレットに万が一のことがあったらまずいからな」
「…………」

真っ直ぐなロイドの瞳を見て、コレットは後ろへと下がった。
「行くぜ、ルーク!」

双剣を一気に引き抜き、ルークにロイドはそう言った。

「うん! 任しといてっ!!」

ルークもそれに答えるように剣を抜くと、笑みを浮かべてそう言った。

「さぁ、さっさと始めようぜ!」
「……行きます。あなたたちの資質、見せていただきます」

ウンディーネの言葉を聞き、ルークはニッと笑うとウンディーネへと向かって走り出した。
























Symphonyシリーズ第3章第3話でした!!
しいなを励ますルークwwやっぱり、ルークは優しいよ♪
そして、今まで何気にコリンが出ていなかったことに気づいたし;
さぁ!次回は、ウンディーネとの戦闘です♪


H.20 5/16



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