「どうした、ルーク」

ユウマシ湖を目指す中、クラトスは浮かない顔をしているルークに話し掛けた。

「……段々わからなくなってきた」
「何がだ?」
「この世界再生が本当に正しいのかどうかだよ」
神子(みこ)が声を失ったことが、そんなにも衝撃的だったのか?」
「おまえな! ……おまえは何も感じないのか!?」

クラトスの言葉を聞いて、ルークの傍にいたロイドが怒鳴った。

神子(みこ)は天使になって世界を再生する。今の状態は試練だと、レミエルも言っていた」

そんなロイドのことなど気にすることもなく、クラトスはそう言った。
「じゃぁ、同じ天使って存在なのに、コレットとレミエルはどうしてこんな風に違うんだ!」
「それは神子(みこ)がまだ未完全な天使だからだろう」
「……じゃぁ、完全な天使になったら、コレットの状態は元に戻るのかな?」
「……さぁな」
「おまえっ!」

ルークの問いに対して、素っ気なくそう言ったクラトスにロイドは、掴みかかろうとした。

「ロ、ロイド! ダメだよ!!」

それをルークが慌てて止めた。

「私にあたってもどうにもなるまい。では、神子(みこ)に再生の旅をやめさせるか? シルヴァラントの命を犠牲にして」

クラトスの言葉にロイドの顔は苦しそうに歪んだ。

「……わかってる。わかってるよ! そんなこと、できないんだ!! ……でも……助けてやりたいんだよっ!!」

聞こえているロイドの声は本当に苦しそうで、ルークはただ聞いているしか出来なかった。






〜Symphony The World〜








「あれを見ろ!」

ユウマシ湖に到着したロイドは湖を指差し、そう言った。
その先には、大きな湖があり、湖のそこに横たわる角の付いた白馬がいた。

「……!」
「ユニコーンだ! ユニコーンだよね、姉さん!!」
「ええ、間違いないわ。でも、どうしてあんなところに……」
「驚いた! 話では聞いていたけど、本当にユニコーンが生き残ってたんだね」

湖のそこにいるユニコーンを見て、しいなは感嘆したようにそう言った。

「でも、どうやってあそこに近寄ったらいいんだろう?」

肝心のユニコーンは、湖の底にいるのだ。
あそこまでどう近寄ったら言いのだろう。

「潜れないかな?」
「息が続かないよ、きっと」

ロイドの提案をジーニアスは、あっさりと否定した。

「じゃぁ、ジーニアスの火の魔術で水を蒸発できないか?」
「むっ、無茶言わないでよ! ボクの魔術であれ全部を蒸発させるのは無理だよ!! それに、そんなやってユニコーンを怒らせたら角どころじゃなくなっちゃうよ!!」
「クソ! なんとかならないのか!!」

ロイドは、悔しそうに唇を噛んだ。

「…………方法は、なくはないよ」

すると、しいながポツリとそう言った。

「本当なの、しいな!」

ルークの問いにしいなは頷いた。

「ああ。……こっちの世界にいるはずの……ウンディーネを召喚して水のマナを操ればいいサ」
「……ウンディーネって、精霊のウンディーネか?」
「でも、精霊を召喚するったって、召喚士がいないじゃないか」
「……あっ、あたしが……」

しいなの言葉一旦途切れた。

「……まだ、契約はしてないけど、契約さえすれば……召喚できるよ」
「しいなって、召喚士だったの?」
「あたしは、符術士だよ! ……召喚も出来るけどサ……」

首を傾げてそう言ったジーニアスに、しいなは首を振るとそう言った。

「召喚士は、途絶えたに等しいと聞いていたけれど……」
「……色々、あるんだよ。どうするんだい? いやなら、あたしも無理のとは……」
「いや、ユニコーンの角は必要なんだ。頼むよ、しいな」

しいなの言葉を聞いたロイドは、すぐにそう言った。

「……俺からも、お願いします。しいな」

ルークとロイドの顔を見比べたしいなは、息をついた。

「……わっ、わかった。じゃぁ、水の封印まで行こう。ウンディーネは、そこにいるはずだよ」

何処が不安げな瞳でしいなはそう言った。

「ソダ間欠泉だな。行こう!」

それに気付いていないのかロイドは元気にそう言うと歩き出した。
それにルークたちも後の続いた。

「やれやれ、回り道になるな」

少し呆れたように湖を眺めながら、クラトスは言った。

「…………そうね」

それに対してリフィルは、弱々しく答えたのだった。

















「…………また、これに乗るのね……」

ソダ島遊覧船乗り場へとやってきたリフィルは、目の前にあるたらいを見て弱々しくそう言った。
水が怖いリフィルのとって、それは仕方なかった。

「では、行きましょう。ルーク」

気を取り直したリフィルは、ルークの腕を掴むとたらいに乗り込もうとした。

「ちょっ、ちょっと待ってよ! なんで姉さんが当たり前のようにルークと乗るのさ! ズルイよ!!」
「そうだぞ、先生! この前、ルークと乗ったんだからいいだろ!!」

リフィルの行動にロイドとジーニアスは不満そうにそう言い、コレットはそう同意するようにコクコクと頷いた。

「うっ、うるさくてよ! 誰と乗ってたって同じでしょ!!」
「だったら、姉さんがルークと乗らなくたっていいってことじゃないの?」
「そっ、それはそうかもしれないけど……」

ジーニアスの言葉にリフィルは言葉を濁し、視線を逸らした。
「あっ! だったら、俺はノイシュと乗る」
「それはダメ!!」 「それはダメです!!」 「それはダメだ!!」

ルークの言葉を聞いて嬉しそうな表情をしたノイシュだったが、三人見事なハモリに哀しそうに鳴いた。

(なっ、何故!?)

それに対して、ルークは首を傾げた。

「……どうしてもいいが、さっさと向かうべきではないのか?」

クラトスは、溜息をつくと呆れたようにそう言った。

「……よし、こうなったら、クジで決めようぜ!」

ロイドはそう言うと、細長い筒状のものに八本の木の棒が入ったものを取り出した。

「……ロイド、いつの間のそんなもの作ったの?」

「いいだろう、別に! 同じ色を引いた奴とたらいに乗る、それでいいだろう?」
「……いいわ。それで決めましょう」

ロイドの提案にリフィルは、そう言った。
そして、ルークたちはそれぞれ木の棒を一本選んで掴んだ。

「……よし! せ〜ので引くぞ!! ……せ〜の!!」

ロイドの掛け声でルークたちは一気に棒を引き抜いた。

















「あ〜あ。結局、ボクはロイドと一緒か」
「私は……コレットと一緒ね」

木の棒の先の方を見つめてジーニアスは不満そうに、リフィルは残念そうにそう言った。
ロイドとジーニアスは青、コレットとリフィルが白を引いた。

「ねぇ、ルークは何色だったの?」
「えっ? 俺は……」

ルークは、木の棒の先を見つめた。

「俺は……赤だよ。しいなは?」
「あたしかい? あたしは黄色だよ」
「えっ? じゃぁ、クラトスは……?」

ルークたちは、一気にクラトスのほうを見た。
クラトスが持っている木が棒の色は……。

「…………赤だね」

それは間違いなく赤だった。

「え〜〜〜っ!? なんでよりによってクラトスなわけ!?」
「……仕方ないだろうが、おまえたちがクジで決めるといったのだろうが」
「そっ、そりゃそうだけど……;」
「なら、決まりだな。ルーク、さっさと行くぞ」
「あっ、はい!」

さっさとたらいに乗り込んだクラトスの後を追うようにルークはたらいに乗った。
「あっ、あの、クラトス」
「なんだ……?」

ルークの声にクラトスはルークへと視線を向けた。
「ソダ島まで、よろしくな!!」
「っ! あ、ああ……」

ルークの満面の笑みを見たクラトスは思わず、視線を逸らしてそう言った。
クラトスの顔が微かに赤くなっていることに、ルークは全く気付かないのであった。
























Symphonyシリーズ第3章第4話でした!!
また、やってます。ルーク争奪戦ww
しかも、いつの間にロイドはクジなんか作ってるしww
でも、結局今回ルークと乗ったのはクラトスでした♪
残念、ロイド!!


H.20 4/5



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