「ふははははは! どうだ! とうとう完成した! マーテル様の器がついに完成したぞ! これで私が四大天使の空位に納まることが出来る!!」

人形のようになったコレットを見上げ、レミエルは嗤った。

「待ちな! コレットをどうするつもりだい!!」
「きっと、天へと導くつもりよ」
「……許せねぇ。何がクルシスだ! 何が天使だ! 何が女神マーテルだ! コレットを返せ!!」

ロイドの自然と腰の剣へと手をかけた。

「そうはいかぬ。この娘はマーテル様の器。長い時間かけて漸く完成した、マーテル様の新しい身体なのだからな! ……貴様たちはもう用はない。消えろ!!」
「やれるもんなら、やってみろ!!」

ロイドは勢いよく双剣を抜き、レミエルへと駆け出した。






〜Symphony The World〜








「――――裂空斬!」

ロイドは床を思いっきり蹴り、剣を合わせ足を身体に引き寄せて回転しながら襲い掛かった。
それはレミエルの翼を掠った。
それにレミエルは天使とは思えないような形相へと変わった。

「貴様っ! 劣悪種風情が私の身体に傷を付けるなどっ! 許せぬ!!」

そう言うと、レミエルはバサリと翼を広げた。
辺りに真白き光が集中する。

「裁かれるがいい! ――――ホーリーランス!!」

空中に光の槍が出現し、次々とロイドに襲い掛かる。
それをロイドは何とか掻い潜っていった。
すると、

「深淵へといざなう旋律。

トゥエ レィ ツェ クロア リュオ トゥエ ズェ」

辺りにルークの美しい歌声が響き渡った。

「うっ……」

それにレミエルの身体がよろめく。
その隙に指で空中に何かを描いたしいなの周辺に、巨大な魔法陣が出現する。

「清漣より出でし水煙の乙女よ! 契約者の名において命ず! 出でよ! ――――ウンディーネ!!」

周囲に闇が落ち、直後の魔法陣の内側に水が溢れ、その中からウンディーネが立ち上がった。
ルビーのような瞳が、レミエルを見据える。

「―――受けなさい」

ウンディーネは静かに、流れるように腕を上げた。
水が、ザァと天使の周りに流れていき、直後渦を巻く柱となって立ち上がった。
水の奔流は勢いよくレミエルを呑み込んだ。
そこへ、

「ビリビリだよっ! ――――サンダーブレード!」

ジーニアスの声が響き、天から巨大な雷の刃が落下して、レミエルの身体を貫いた。
同時に白い放電が走り、天使の身体を焼いた。
ちらりと見たロイドに、ジーニアスは「仕方ないなぁ」と言った感じで肩を竦めた。

「……受けよ雷撃!」

ルークは、その隙に風のFOF(フィールドオブフォニムス)を発動さえた。
そして、姿勢を低くする。

「――――襲爪雷斬!」

飛び上がりながら剣を降る。
剣が空気中の静電気を発生させ、それがさらに静電気を呼ぶ。
雷撃がさらにレミエルの身体を焼き、とどめに剣が落ちる。

「ぐはっ! ……最強の力が……何故………!?」

血を噴き出しながら、レミエルは地に堕ちた。
羽根が辺りに飛び散る。

「馬鹿な……最強の戦士である天使が……こんな劣悪種どもに……」

倒れ伏したレミエルを無視し、ロイドは無表情なコレットに向かい、手を伸ばした。

「コレット、戻って来い! 俺が必ず元に戻してやるから!!」

だが、ロイドの声にコレットは全く反応を見せず、ただそこにいて、静かに全てを見つめているだけだった。

「コレット……。本当に俺のこと、忘れちまったのか……?」

そんなはずがない。
コレットが、俺たちのことを忘れるなんて……。
コレットの心は、まだ完全に死んではいないはずだ。
コレットの心に声が届けば……。

(もしかしたら……)

ルークの瞳を閉じた。
意識を集中させ、フォンスロットを開こうとする。
声を失ったコレットと会話が出来たのは、きっとこれのおかげだろう。

(コレット……。聞こえる? コレット!)

必死にコレットに呼びかけるルークの声にコレットの真紅の瞳が微かに動いた。

(コレット……お願いだっ! 俺の声が聞こえているなら……答えてくれっ!!)

だが――。

「無駄だ。その娘には、おまえの記憶どころか、おまえの声に耳を貸す心すらない」
「!!?」

突然聞こえてきた声に驚き、ルーク誤ってフォンスロットを閉じてしまった。
そのまま振り返ると、周囲を走る太い樹の根のようなものの上に、クラトスの姿を見つけた。
クラトスは、燕尾のマントを翻して祭壇へと降りると、ルークたちを見回して腕を組んだ。

「今の神子(みこ)は、死を目前にした、ただの人形だ」
「……クラトス?」
「クラトス! 今まで何処にいたんだ? 何を言っているんだ!!」
神子(みこ)は世界の再生を願い、自らそれを望んだ。後は神子(みこ)がデリス・カーラーンに召喚されることで、初めて封印は解かれ、再生は完成される」
「クラトス……。どういうことだ……!?」

クラトスの言っている意味が解らず、呆然とロイドは呟く。

「それは、おまえたちも望んだことだ。神子(みこ)はマーテルの新たな身体として貰い受ける」
「どういうことなんだ! クラトス……答えろ!!」

ロイドは堪らずクラトスに向かって怒鳴った。
だが、クラトスはそれには答えずただ静かにロイドを見据えていた。
すると、

「クラトス様……。慈悲を……私に、救いの手を……」

顔を上げたレミエルがクラトスに向かって、縋るように手を伸ばした。

「「「「「!?」」」」」

レミエルの意外な行動にルークたちは目を見張った。
だが、クラトスは、そんなレミエルを冷たい目で見下した。

「……忘れたか、レミエル。私も元は劣悪種…………人間だ」

その声も冷たく、はっきりと拒絶していた。

「最強の戦士とは、自信が最も蔑んでいて者に救いを求めることなのか?」
「ぐっ……」

レミエルの顔には、はっきりと絶望が浮かび、そして、ついに息絶えた。
その身体は光に分解され、周囲に拡散して消えた。
それはまるで、俺の世界で魔物を倒したとき、魔物が音素(フォニム)に還っていくように……。

「クラトス……。おまえは一体何者なんだ?」

ロイドは収めた双剣に手をかけ、静かに問いかけた。

「……私は、世界を導く最高機関、クルシスに属する者」

クラトスの身体が光に包まれ、その背中にコレットの羽に似て、形の違う蒼い光の羽根が出現した。
ゆっくりと、羽根が光を撒き散らしながら動く。

神子(みこ)を監視する為に、差し向けら得れた四大天使の一人だ」
「……クラトスも……天使だったの!?」

クラトスの言葉にルークは、息を呑んだ。

「あたしたちを騙してたのか!?」

しいなの声は怒りに震えていた。

「騙すとは? 神子(みこ)がマーテルと同化すれば、マーテルは目覚め、世界は救われる。それに不満があるのか?」
「そして、女神マーテルに身体を奪われることで、コレットは本当の意味で死を迎えるのね?」

目を細めてそう言ったリフィルに対して、クラトスは首を振った。

「違うな。マーテルとして、新たに生まれ変わるのだ」
「……くそ! やらせるか! コレットは、俺たちの仲間だ!!」

ロイドは一気に双剣を抜き、クラトスに向かって走り出す。
それに、リフィルたちも続く。

「……おまえに私が倒せるかな?」

そう言うとクラトスは、ゆっくりと剣を抜き、瞳を閉じた。

「――――輝く御名の元、地を這う穢れし魂に裁きの光の雨を降らせん」

静かだが、よく響く声はルークの耳にも届いた。

(この詠唱……。まさか!?)
「安息に眠れ、罪深き者よ!」
「……ダメだ、みんな!! 逃げろっ!!!」

そう叫んだ、ルークの声はロイドたちの耳のは届かなかった。
「――――ジャッジメント!!」
























Symphonyシリーズ第3章第11話でした!!
あっさりとレミエルを倒しちゃいましたww
そして、いよいよやってきました!クラトスが裏切るシーンが!!
次回、ルークVSクラトスです!!


H.20 12/25



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