世界は救われる。 彼女を失えば……。 それは、本当だろうか? 俺は、違うと思う。 世界も彼女を救う方法が必ずあると思う。 だから……その方法を見つけて見せる。 何があってもきっと……。 〜Symphony The World〜 「ねぇ、ルークの仲間ってどんな人がいたの?」 次の目的地、マナの守護塔を目指す中、ルークたちは野営を取っていた。 ルーク、ロイド、コレット、ジーニアスは空に輝く星を眺めながら会話を楽しんでいた。 すると、コレットがそう話を持ち出してきたのだった。 「えっ? でも、どうして?」 「だって、ルークはあっちの世界でも仲間とこうやって旅してたんでしょ? だから、どんな人たちと一緒だったのかなって思って」 ルークの問いにコレットは、楽しそうに両手をあわせてそう言った。 「あっ、それ、ボクも知りたいな!」 コレットの言葉に同感するようにジーニアスが頷いた。 「ねぇねぇ、教えてよ!」 「う〜んと、そうだなぁ……」 ルークは、少し考え込んだ。 一体何から話したらいいものだろうか? 「……俺の仲間って、結構身分はバラバラだったなぁ。敵国だった国の軍人や、この世界でいうマーテル教会にあたるローレライ教団の最高指導者とその関係者に、幼馴染の王女と俺の元使用人ってな感じかな?」 「すっごい! ルーク! 王女様とお友達なんだ♪」 「……まぁ、俺も……一応公爵家の人間だから……」 「……一応?」 ルークの言葉を聞いたロイドは首を傾げた。 「なっ、なんでもないよ!!」 それを見たルークは、慌ててそう言った。 「それで、その人たちって、どんな人なの?」 「え〜っと……。ティアはいつも冷静で頼れるお姉さんみたいな人だけど、実は可愛いものに目がなかったりするし」 ミュウなんかに向ける眼差しがいい例である。 でもときどき、俺にも「可愛い」と言って赤面するのは何故だろう? 「……ガイは俺にとっては兄貴みたいな存在で、気障な台詞を言っても全然そんな風には聞こえないしモテるけど、実はある事件がきっかけで、女性恐怖症になってたし」 でも、その原因がわかった今は、少しずつ治ってきているのだ。 一時期は、「ルークがいるから」と言って治らなくてもいいと言って開き直ったこともあったが……。 「……ジェイドは、ときどき言っていることが冗談なのか本気なのかわからないようなことを言うけど、本当はとても優しい人だし」 あの血のように赤い瞳は、とても優しい光を宿している。 ときどき見せる笑みは恐怖を感じるが……。 「……アニスは、誰よりもしっかり者だし、イオンは俺にとって初めて友達と呼べる奴だった」 「だった……?」 何気ないジーニアスの言葉にルークの美しい翡翠の瞳が曇った。 「……死んだんだ。ずっと前に………」 「ごっ、ごめん。ボク……」 「いいよ。ジーニアスが悪いじゃないんだから」 俯いてそう言ったジーニアスにルークは、慌ててそう言った。 「あっ、後ね! ナタリアは気が強くて、ちょっと天然なところがあるけれど、誰よりも国のことを考えてるんだ。ってな感じかな?」 場の空気を換えようとルークは、笑みを浮かべながらそう言った。 「へぇ〜。ルークの仲間ってみんな、個性的なんだねぇ〜」 それにコレットは、嬉しそうに言った。 だが、ジーニアスはルークの話を聞いて首を傾げた。 「……あれ? ルークの仲間って六人だけ? それだと、ちょっとおかしいよ?」 「えっ? 何が?」 ジーニアスの言っている意味がよく理解できず、ルークは首を傾げた。 「だって、今の話の中で出た人たちって、全然クラトスに似てそうな人いないじゃん」 「ええっ!? なんで、そこでクラトスが出て来るんだよ!?」 ジーニアスの言葉にルークは、目を見開いた。 「だって、パルマコスタの人間牧場のときにクラトスを見て『……やっぱり、似てるなぁ〜』って呟いてたじゃんか」 「っ! で、でも、あいつとは一緒に旅したことなかったし!!」 「えっ? そうなの?」 「そっ、そうだよ!!」 ジーニアスの問いにルークは、大声でそう言った。 そんなルークの姿を見てコレットは、何を確信したように笑った。 「そっか! ルークはその人のことが好きなんだ♪」 「なっ!!」 コレットのその一言でルークの顔は、真っ赤になった。 「あっ! やっぱりそうなんだ〜♪」 「いっ、いや! その……」 ルークは、それを何とか言い返そうとしたが、言葉が出てこない。 「な〜んだ。ルークの好きなタイプって、クラトスみたいなのなんだ」 ジーニアスは腕を組んで少し口を尖らせてそう言った。 「いっ、いや! その……だからっ!!」 「もういいだろ」 困惑しているルークを見て、ロイドははっきりとそう言った。 「それより、もっとルークの世界の話を聞こうぜ」 「……どうしたの、ロイド? 何か怒ってない?」 微かに眉間の皺が寄っているロイドの顔を見て、コレットは不思議そうに首を傾げた。 「…………怒ってなんかない」 「うっそだ。絶対怒ってる」 「怒ってないって、言ってるだろ!!!」 「「「!!」」」 からかったつもりでそうジーニアスが言った言葉に思わずロイドは怒鳴った。 それにルークたち三人は、目を丸くした。 そんな三人を見てロイドは、ハッとしたような表情になる。 「あっ! いや、その……ごめん」 「えっ? いいよ、ちょっと驚いただけだからさ」 「……悪い、ちょっと頭冷やしてくる」 そう言ってロイドは立ち上がると、ルークたちから離れていった。 「…………何やってるんだよ、俺は……」 ルークたちから離れたロイドは溜息をついた。 初めはルークの話を興味津々で聞いていたのに……。 途中から何故かムカムカしてきた。 理由なんてわからない。 いや、本当はわかっていた。 それは……。 「……ロイド」 すると、背後から声が聞こえたので、ロイドは振り返った。 そこには夕焼けのように赤い長髪と心配そうに揺れる翡翠の瞳があった。 「……ルーク」 ロイドは、呟くように彼の名を呼んだ。 「……ごめんな、ロイド」 「なんでルークが謝るんだよ?」 「だって……俺が俺の世界の話のせいで嫌な思いになったんだろう? だから……」 そう言うとルークは、申し訳なさそうに俯いた。 「いっ、いや、あれは……ルークのせいじゃないから……。それより、さっき話してた奴ってどんな奴なんだ?」 ロイドが慌ててそう言うとルークは、キョトンとした表情になった。 「……彼は……俺は……あいつのおかげで生きていられるんだ」 「…………」 ルークの言っている意味がわからず、ロイドは尋ねようと口を開くが途中でそれを止めた。 目の前にいるルークは今まで見たことのないくらい、穏やかな表情をしていたから……。 「……でも、そのせいで俺は、あいつから大切なものを……たくさん奪ってしまった」 家族も、友人も、本当の名前でさえ俺は、奪ってしまった。 「許してもらえないと思っていた、ずっと憎まれても仕方ないと思っていたのに……」 ずっと、あの憎しみの宿った俺と同じ翡翠の瞳を向けられると思っていたのに……。 それなのに……。 「なのに……あいつは……俺のことを許してくれたんだ」 そして、俺のことを好きだと言ってくれた。 それを聞いたとき、本当に嬉しくて、涙が止まらなくなった。 「口は悪いけど、本当にいい奴なんだ。あいつは」 今、あいつの名前を口にすることは出来ない。 してしまえば、この世界にいるはずのないあいつの姿を探してしまう。 また、あのときのように涙が止まらなくなってしまう。 だから……呼ばない。 「…………そっか……」 ルークの言葉にロイドは、そう言うのが精一杯だった。 彼のことを話すルークの瞳が、声がとても穏やかで優しかった。 そして、それだけどルークがその人物のことをどう想っているのかがよくわかった。 自然と手に力が入るのも自分には、よくわかった。 顔も名前も知らないその人物にロイドは嫉妬していた。 それと同時にその人物に対して、興味が湧いてきた。 ルークにこんな表情をさせる人物は、一体どんな奴なんだろう? もし、会うことが出来るのなら、会ってみたい。 そう思うのだった。 Symphonyシリーズ第3章第1話でした!! 今回は、ルークがロイドたちにティアたちのことを話せて見ましたww ティアとガイとジェイドはすぐに思いついたのに、アニスとナタリアがなかなか思いつかなかった; そして、やっぱりロイドはアッシュに嫉妬しましたww その方が面白いと思ったのでww H.20 1/9 次へ |