「これから、何処に行くのですか?」 「……そうね。ルインへ向かいましょう。あそこのマーテル教会の祭司が≪マナの守護塔≫の鍵を管理していたはずよ」 ルークの問いにリフィルは、地図を見ながらそう答えた。 「ルインか……。どんな街なんだろう?」 「……美しい街だ」 ルークがそう呟くと、後ろを歩くクラトスがそう言った。 振り向いてクラトスの顔を見るとクラトスは、とても穏やかな顔をしていた。 「希望の街と言われ、人々は活気に満ち溢れている。……良いところだ」 「へぇ〜。早く行って見たいなぁ!!」 「あんた、行ったことがあるのか?」 二人の会話を聞いていたロイドが、クラトスにそう聞いた。 それにクラトスは、何かを考えるような瞳でロイドを見つめている。 「…………知り合いの故郷でな……」 「……? ふうん」 「……あっ! ホラ、見えてきた! ルインだ!!」 前の方を歩いていたジーニアスの元気な声が響き、ルークたちは歩く速さを速めた。 〜Symphony The World〜 「! ……こ、これは……」 ルインへついた途端、ルークたちは絶句した。 目の前に広がる光景は希望の街と言われた街の姿はなく、無残にも破壊された街並みだった。 絶望の街、そう言ってもいいものだった。 「ひどい……」 それを見たコレットは、哀しそうに顔を歪めた。 「こんな…まるで……」 (イセリアと同じじゃねぇか!) ロイドは無意識のうちに手に力が入っていた。 「……妙だわ」 すると、リフィルがポツリと呟いた。 「リフィルさん、それって、やっぱり……」 ルークがそう尋ねると、リフィルは同意するかのように頷いた。 「ええ。ルークも気付いたようね」 「……それ、どういう意味だよ、先生?」 二人のやり取りの意味がわからず、ロイドは聞いた。 「これだけ街が破壊されているのに、人影はおろか死体一つないのは、おかしくはなくて」 「……そういえば」 確かに、リフィルの言う通り街はメチャクチャに破壊されているのに、死体が一体もないのだ。 明らかにおかしい。 「……ディザイアンの仕業かな?」 ジーニアスは、暗い表情でそう言った。 だが、ルークにはそれが何かを哀しんでいるような表情にも見えた。 「……とにかく、ここでこうしていても仕方ないわ。教会へ行ってみて鍵を探してみましょう」 それにリフィルはそう言うと、先頭をきって街の中を進んでいった。 「あっ、あったよ! 鍵!!」 教会らしき建物の廃墟からルークは、鍵を見つけた。 それもコレットのおかげだ。 コレットが瓦礫の下から金属音が聞こえると言ったところの瓦礫を退けると本当に鍵があったのだ。 「ありがとう、コレット」 「ううん、どういたしまして」 ルークがそう言うと、コレットは笑ってそう言った。 「さぁ、街をもう少し見てまわってみましょう。もしかしたら、誰かいるかもしれません……」 リフィルの提案に賛成したルークたちは、そのまま街の奥へと進んだ。 すると、ルークたちは壊れた噴水のある広場へと出た。 そして、その噴水に背を預けて座っている人の姿が見えた。 それは、しいなだった。 「おまえ! こんなところまで!!」 ジーニアスの声を聞きながら、ルークはしいなへと近づいた。 しいなは、あちこち傷を負い苦しそうな表情をしていた。 「どうしたの? 傷だらけじゃないか」 「……あんたたちか。今ならあたしにトドメを刺せるよ。今のあたしには戦う力は残ってないからね」 ルークの声にしいなは、苦しそうにそう言った。 「ひどい怪我……。先生! 手当てしてあげて!!」 「……そうね。でも、その前に何があったのか教えて欲しいわね。仲間がいるようだし、これが私たちを油断させる罠じゃないとは言い切れなくてよ」 「先生!」 「はっ! 見てくれ通り、陰険な女だね」 「……陰険で結構」 しいなの言葉にリフィルは、はっきりとそう言い、しいなを睨みつけた。 「この街を見てみなよ。何もかも、メチャクチャだ。攻め込まれたのさ、ディザイアンにね」 「何……!?」 しいなの言葉にルークたち全員、目を見開いた。 「ここから北東に人間牧場ってのがあるのを知ってるかい? ここの街の人たちは、牧場から逃げてきた奴を匿ってたんだよ。それがバレて、全員強制的に牧場送りの上、街は破壊されちまったのサ」 「それじゃあ、あなたの怪我は……」 「何でもないよ。ちょっと、ドジっただけさ……」 「何でもないわけねぇだろ! こんなに出血して……。先生! こいつを手当てしてやってくれよ!!」 「先生、私からもお願いします!」 「…………」 二人が必死に頼んでいるのに、リフィルはそれをしようとはしなかった。 それを見たルークは、あることを決心した。 「……わかりました。リフィルさんが手当てしないなら、俺が超振動でしいなさんの手当てをします」 「! ……何を言い出すの、ルーク!?」 それを聞いたリフィルの表情は、一変した。 それはリフィルだけでなく、ロイドたちも同じだった。 「アレを使ったら、どうなるか、あなたが一番よくわかっているでしょう! また、倒れたらどうするのよ!!」 「大丈夫ですよ。俺、こういうの慣れてるし」 「駄目です! 絶対に駄目です!! ……あぁ、もう! わかりました。私が手当てします!!」 今にも超振動を使いそうなルークをリフィルは慌ててそう言った。 「ありがとうございます! リフィルさん!!」 それを聞いたルークは、リフィルに笑みを浮かべてそう言った。 そんなルークに対してリフィルは、溜息をついた。 「……もう、本当に、みんなお人好し過ぎるんだから」 リフィルはそう言うと、しいなに近づきファーストエイドをかけた。 杖の先端が輝くとしいなの傷は、見る見るうちに消えていった。 「……なんで、あたしを助けたのさ?」 しいなは、ゆっくりと立ち上がるとルークたちを見てそう言った。 「助けたいと思ったからだよ。それに、人が人を助けるのに理由なんて必要ないと思うよ」 その問いに対して、ルークは笑ってそう言った。 その笑みを見たしいなは思わず赤面した。 「……あ、ありがとう。こっ、この借りは、必ず返すよ。そっ、それじゃあ……///」 「行っちゃうの?」 しいなが踵を返して広場を出ようとしたとき、コレットは寂しそうに言った。 「当たり前だろう! あたしはあんたの命を狙ってるんだ!! こんなところで、馴れ合ってられるか」 「そっか、そうだよね。でも、気をつけてね」 「……敵を心配をするなっ!」 しいなはそう怒鳴ると、さっさとその場を後にした。 「……この街もイセリアと同じだね」 しいなの姿が完全に見えなくなった頃、ジーニアスはポツリと呟いた。 それにロイドは首を振った。 「いや……イセリアより酷い……。街中の人間が牧場に連れて行かれちまったんだ」 「うん。……ルインの街の人たちを……助けてあげたい」 コレットの哀しそうな瞳はやがて強い意志を宿し始めた。 「ああ! ディザイアンめ! ぶっ潰してやる!!」 ロイドの声が辺りに響き渡った。 Symphonyシリーズ第2章第6話でした!! ルインへ到着wwそして、さり気なくルークとクラトスを絡ませてみましたww マンガでのロイドとクラトスのあのやり取りがかなり好きな私ww そして、ルークは何の躊躇いもなく超振動を使おうとするし; リフィルもハラハラものですねww次はアスカード人間牧場へ突入だ!! H.19 8/30 次へ |