「おお、アスカード遺跡だ!」

遺跡の街アスカードへとやってきたルークたちは、リフィルに半ば強引に石舞台へと連れてこられた。

「ロイド、この遺跡の歴史的背景を述べよ!」

リフィルは、石舞台の前で腕を組んでそうロイドに言い放つ。

「え、えっ。えっと……」
「クレイオ三世が一週間続いた嵐を鎮めるため、風の精霊に生け贄を捧げる儀式を執り行った神殿」
「……です」

そんなロイドを見て、リフィルは落胆する。

「ああ……。この五年間貴様は一体何を習ってきたのだ!」
「体育と図工と……」
「もういい!」

ロイドの言葉をリフィルは遮った。

「素晴らしいフォルムだ。この微妙は曲線は、風の精霊が空を飛ぶ動きを表すとされている。さらに、この石はマナを多分に含んでいると言われ夜になると……」






〜Symphony The World〜








「もっとも、現代では世界のマナ不足によって、この石に含まれていたマナも失われつつあるという」

リフィルは、ルークとコレットを捕まえて延々と遺跡について語っている。
ロイドも一応聞いていたが、飽きたので辺りを歩き出した。
すると、自分たちとは違う男の声が聞こえてきた。
ロイドはその方向へ覗き込むと、二人の足元にはなんかの装置のようなものが置いてある。

「いいか、ライナー! これが俺の発明品『ブレイカー』だ。この爆弾を使えばこんな忌々しい石舞台など簡単に壊せる」
「しっ、しかし、ハーレイ……。これは貴重なバラクラフ王朝の遺跡だ。この石舞台を破壊するなんて……」
「何を言うんだ! このままだと、アイーシャは殺されるかもしれないんだぞ!!」
「何やってるんだ、おまえら?」
「「!!」」

ロイドの声に二人は、驚いたような表情を浮かべる。

「なっ……、なんだおまえは!」
「ちっ、違いますよ! ボクたちは別に遺跡を破壊するつもりでは……」
「……今、なんと言った!?」

石舞台へと目を向けると、いつの間にかそこにリフィルとルークが立っていた。

「先生。こいつら、この石舞台を破壊するんだってよ」

それにロイドは、ケロッとした顔でそう言った。
それを聞いたリフィルは、勢いよく石舞台を飛び降りた。

「貴様! それでも人間か!!」

そう怒鳴ると、リフィルは見事な蹴りを二人に喰らわした。

「俺は、ハーフエルフだ!」

それに、ハーレイと呼ばれていた男が立ち上がりながらリフィルに文句を言った。

「……それがどうした? おまえたちには、この遺跡の重要性がまるでわかっていないっ!」

リフィルは腕を組み直した。

カチャッ

そのとき、爆弾のスイッチがリフィルの手に当たり装置が動き出した。

「「「「……あっ」」」」
「この素晴らしい遺跡を破壊するだと? いいか、この遺跡は、バラクラフ王朝の最盛期に……」

それに当の本人は気付いておらず、遺跡について語りだす。

「……リ、リフィルさん;」
「何だ。質問なら後で受け付ける」
「爆弾のスイッチが入った」
「質問なら後でと……!」

そのとき、やっとリフィルは爆弾装置が動き出していることに気が付いた。

「…………何?」
「女! おまえのせいでスイッチが入ってしまったのだ!」

ハーレイが、何故かリフィルに抗議をした。
それを聞いたりフィルは、透かさずハーレイに蹴りを入れる。

「人のせいにするな!」
「そんなことより、解除スイッチとかはないのかよ?」
「そんなもんあるか!」

ルークの問いにハーレイは立ち上がってそう言った。

「えばるなっ!!」

そこに再びリフィルの蹴りが飛ぶ。

「……仕方ねぇ; 俺が解体する」

ロイドは溜息をついてそう言うと、爆弾装置を解体し始めた。

















「へぇ。おまえ、器用だな。制御不能の『ブレイカー』を止めるとは……」

爆弾装置を解体し終わったロイドに、ハーレイは感心したように言った。

「……制御できないもん作るなっつーの」

それに対してロイドは、呆れたように肩を落としてそう言った。

「こらっ! そこの者、石舞台は立ち入り禁止じゃ!」
「「「「!!」」」」

突然の第三者の声にルークたちは驚く。

「いけません、町長です」
「やべぇ! 逃げるぞ!!」

二人は、そう言うと一目散に逃げていった。
「先生! 面倒そうだぜ! 早く逃げよう!!」
「しかし、まだこの石舞台の構造を……」
「とにかく行きましょう! みんなも早く!!」

ルークの一声でコレットたちは、一斉に石舞台から離れた。

「ああ……。もっと、調べたかったのに……」

後ろでリフィルの残念そうな声が聞こえてきたのだった。

















「私の身代わりなんて……」

ルークたちから話を聞いた少女は、申し訳なさそうにそう言った。
彼女は、さっき石舞台を破壊しようとしていたライナーの妹、アイーシャだ。
あの後、ルークたちはライナーから石舞台を破壊しようとした理由を聞いた。
すると、ライナーがあの遺跡を調べていたとき誤ってあそこにかけられていた封印を解いてしまって、風の精霊が生贄を要求してきたらしい。
そして、その生贄にアイーシャが選ばれてしまったのだ。
その話を聞いてルークたちは、その封印が『再生の書』に書かれている封印ではないか、と思い再び石舞台へと向かった。
しかし、アスカードの町長にそれを止められてしまった。

「この舞台に上がれるのは、精霊の踊り手だけだ」

町長がそう言ったので、リフィルが代わりをすると言ったのだ。

「気にすることはなくてよ」

それに対して、リフィルは優しく微笑んだ。

「さて、そろそろ着替えなくちゃね。ルーク、早く着替えなさい」
「ほえっ!?」

リフィルの思っても見ない言葉にルークは、変な声を上げた。
驚いたのはルークだけでなく、ロイドたちも同じように驚いたようだ。

「リフィルさんが生贄をやるんじゃなかったの!?」
「何言ってるのよ。私はあのとき、私たちがなるとは言ったけど、がなるとは一言も言ってませんよ」
「で、でも、どう見たってリフィルさんのほうが……」
「ルークのほうがいざという対処に困らないのではなくて? あなたの戦闘能力は私たちの中でズバ抜けているし」
「だっ、だったら、別にオレじゃなくても、ロイドとかクラトスでも……!」
「ルークが、一番この衣装が似合うのよ♪」

ルークの必死の訴えにリフィルは、ニッコリと微笑んでそう言った。
(絶対、いやだっ!)

ルークは、ロイドとクラトスに助けを求めようと二人を見た。
が、ルークと目が合った途端、二人は目を逸らした。

(うっ、裏切られた!!)

そんなことを心の中で叫んでいる間に、リフィルの両手がルークの肩へと置かれる。

「……覚悟はいいわよね♪ ルーク♪」

リフィルは、ジェイドそっくりな笑みを浮かべてそう言った。

「いっ、いやだ〜〜〜〜〜〜っ!!」

こうして、ルークは踊り手の衣装を無理矢理着せられてのだった。

















そして、今ルークは、石舞台の上にいた。
石舞台に描かれた陣の端から端まで動いて地面をついて波紋を広げたらいいと言われたので、ルークは言われたとおりにそうした。
後は、適当に剣舞を披露してみた。
だが、踊り手の衣装はスカートのため、正直動きづらい。
それでも何とか剣舞をこなすと、観客から歓声が上がったりした。
その中にロイドたちの声が混じっていて、正直恥ずかしい。
そう思いながらルークは最後の波紋を広げた。
その途端、足元の陣が光り輝き、魔物が現れた。
足元に風を纏って中に浮いている魔物はルークを見て不気味な笑みを浮かべる。

『娘を貰い受けに来た』
「……違う。ルーク! 離れて!! それは邪悪なもの!! 封印の守護者でもない!!」

コレットの叫び声を聞き、ルークは持っていた剣を構えた。

「……悪いな。俺は、男なんだよ!!」

そして、そのまま魔物を斬りかかる。
だが、魔物は、それを片手で受け止めた。

「何っ!?」

ルークは剣を動かそうとするが、魔物はしっかりとそれを掴んでいるため、ビクともしない。

『お前程の器量だったら、男でも構わん』
「!!」

魔物が言葉を発した途端、ルークは身体の異変に気付く。
魔物の風がルークにも纏わりつき、身動きがとれなくなった。

「「「「「ルーク!!」」」」」

それを見たロイドたちは、一斉に叫んだ。
ロイドは、誰よりも速く石舞台に飛び乗り、双剣を抜く。

「くらえっ! ――――魔神剣!!」

ロイドの放った衝撃波が見事に魔物に命中する。
その途端、ルークの身動きを封じていた風は消え、透かさずルークは間合いを取った。

『おっ、おのれ!!』

魔物は怒りを露にし、ロイドを睨みつける。
そのとき、

「水に呑まれろっ! ――――スプラッシュ!!」
「聖なる力、ここに集いて神の御心を示さん! ――――エンジェル・フェザー!!」

ジーニアス、コレットの詠唱が完成し、術が発動した。
地面から大量の水が噴出し、魔物はそれに呑み込まれた後、不規則な軌道を描く天使の輪に斬り裂かれ、焼かれた。
魔物はかなりのダメージを受けたようだが、再び起き上がってきた。

『こっ、こうなったら……生贄と共に死を……!!』

やけくそになった魔物は、ルークへと襲い掛かる。
ルークはそれを避けようとしたが、スカートが足に引っかかりこけた。

「「「「ルーク!!」」」」

ロイドたちの声が聞こえた途端、ルークと魔物の間に誰かが割って入る。
燕尾のマントが風でなびいた。

「死ぬのは貴様だけだ! ――――瞬迅剣!!」

クラトスは、そう言うと魔物を一気に貫いた。
魔物は悲鳴を上げ、その場へと倒れると陣の光と共に消えてなくなった。

「己の不運を嘆くがいい」

クラトスはそう言うと、剣に付いた血を振るい落とし鞘へと収めた。
そして、ルークへと向き直す。

「……大丈夫か? ルーク」
「えっ? うっ、うん。ありがとう、クラトス!」

差し伸ばされたクラトスの手を掴み、ルークは立ち上がるとクラトスに笑みを浮かべてそう言った。

「……別に。……大したことではない」

それに対してクラトスは、何故か顔を背けてそう言った。

「ルーク! 大丈夫か!?」
「ロイド。うん、大丈夫だよ!!」

すぐさま駆け寄ってきたロイドたちにも、ルークは笑みで答えた。

「……あら? 何かしら、これは……?」

すると、リフィルがさっきまで魔物がいたところで何かを拾った。
それはどうやら石版のようだ。

「どうやら、この石版は古代バラクラフ文字で書かれているな」
「早速、解読してみましょう! ボクの家に資料がそろってます!!」

リフィルの言葉を聞いたライナーがすぐさまリフィルの許へ駆けつけそう言った。

「ああ、いこう!」

リフィルはそう言うと、二人はさっさと石舞台を後にした。

「………とりあえず、今日は休もうぜ。疲れちまったよ」
「うん。……そうだね。でも、その前に……」
「? ……どうしたんだ?」

ロイドの言葉に賛成したのに、何故かルークは言葉を濁した。

「……俺、まずは着替えたいんだけど////」
「「「……あっ」」」
すっかり、忘れていた。
ルークが女装していたことを……。

「えっ? でも、似合ってて可愛いよ?」

それに対して、コレットは笑みをを浮かべてそう言った。

「嬉しくない! そんなこと言われても全然嬉しくないよ!!」
「えっ? そう? ロイドもクラトスさんもそう思うでしょ?」
「「えっ?」」

突然、コレットに話を振られた二人は困惑する。

(そ、そんなこと言われたって!!)

このとき、ロイドは初めてルークの姿をまともに見た。
目の前にいるルークは踊り手の衣装を完璧に着こなし、何処から見ても少女にしか見えなかった。
頭の中では可愛い、という表現しか出てこない。
だからと言ってそれを口に出すには、あまりにもルークが可哀相である。
なので、ロイドとクラトスは苦笑するしかなかった。

「ほら! 二人もそうだって言ってるよ♪」
「いっ、いや; 二人とも喋ってないし;」
「まあまあ、コレットもお喋りはそのくらいにして、そろそろ宿に行こうよ; ね?」

そう言ってジーニアスが、少し暴走気味のコレットを止めてくれた。

「あ、ああ、そうだな。いこうぜ、ルーク」

それに続けてロイドもそう言う。

「うっ、うん;」

ルークは、心の中で二人に感謝しながら宿屋へと向かった。













その途中、ルークが何度も男達に声をかけられ、その度にロイドとクラトスが剣を抜いていたことは言うまでもなかった。
























Symphonyシリーズ第2章第3話でした!!
な、長いよ;第3話;どうしても、この話は一編に書きたくて、書いてみたけど;
だって、ルークに女装させてみたかったんだもんww可愛いだろうな〜、ルークの女装はww
そして、リフィルのとき以上にロイドたちは必死で助けに来てくれる♪
残念ながら、おいしいところはクラトスが持っていってしまったけど;
言っておきますけど、うちのコレットは決して黒いわけではありません!!
ただ、天然なだけです!天然なだけです!!
それにしても、ルークの女装姿が見れなかった、アッシュ。残念でしたww
ちなみにルークの女装姿はリクエストでもあったら描こうかなと思ってますww(たぶんないと思うけど)


H.19 7/22



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