「アレ〜? ロイドたち、ここにもいないや;」 ルークは全速力で、転送装置のある部屋までやってきた。 だが、そこには既にロイドたちの姿はなかった。 「もう、行っちゃったのかな? じゃぁ、早く行かないと!」 おそらく、管制室までには譜歌の効果は届いていないだろう。 そう思ったルークは急いで転送装置へと飛び乗った。 〜Symphony The World〜 「くそ! 退け!!」 複数の護衛ロボットをロイドは、一気に薙ぎ払う。 護衛ロボットが邪魔して、クヴァルの許までなかなか辿り着けない。 「……御許に使えることを許したまえ。響け、壮麗たる歌声よ! ――――ホーリーソング!」 コレットの声が響くと辺りに歌声が響き渡る。 身体の奥から力が湧きあがってくる。 それによって、ロイドはさっきより多くの護衛ロボットを破壊することが出来るようになった。 そして、クヴァルまでの道筋を確保し、ロイドは一気に駆け寄ろうとした。 「甘いですね!」 が、それはクヴァルの作戦だった。 そのときには、クヴァルの詠唱は、完成していたのだ。 「死になさい! ――――降雷撃!!」 天井から激しい稲妻がロイドたち目掛けて襲い掛かる。 (しまった!!) ロイドは咄嗟に受身を取ろうとしたが間に合わなかった。 そのとき――。 「堅固たる護り手の調べ。 クロア リュオ ツェ トゥエ リュオ レィ ネゥ リュオ ツェ」 何処からともなく美しい旋律が流れ出すと、ロイドたちを光のドームが覆う。 稲妻がロイドたちに落ちたのは、そのすぐ後だった。 激しい稲妻がロイドたちを襲ったはずなのに、ロイドたちは傷一つ出来ていなかった。 「な、何っ、馬鹿な! 私の降雷撃を受けて無傷だと!?」 その光景にクヴァルは、驚きで目を思いっきり見開く。 ロイドは、すぐに視線を転送装置へと向けた。 「ルーク!!」 そこには予想通り、夕焼けのように赤い長髪の少年の姿があった。 ロイドがそう叫ぶと、ルークは笑みを浮かべて、こちらへと走ってきた。 「なんとか、間に合ったね♪ もう、三人とも冷や冷やさせないでよね!」 「……じゃぁ、今のはやっぱり……」 やっぱり、ルークが譜歌を歌ったんだ。 だから、俺たちは助かったのだ。 「こっちは俺に任せて、ロイドはクヴァルに専念して!」 ルークの言葉にロイドは素直に頷く。 「ああ! サンキューな、ルーク!!」 ロイドは、クヴァルの許へと走り出す。 ルークは瞳を閉じて、深く息を吸った。 「深淵へといざなう旋律。 トゥエ レィ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ」 あのとき聞こえた美しい旋律を聞きながらロイドは走る。 「くっ……!」 ルークの譜歌によって、クヴァルの足元が覚束無くなった。 さすがに、クヴァルほどの奴となるとルークの譜歌でも眠ることはなかったようだ。 だが、動きは先程までと比べたら、格段に遅くなっている。 「クヴァル!」 今度こそ、ロイドはクヴァルとの間合いを捉えた。 「虎牙破斬!」 双剣を上下に思いっきり振るった。 だが、クヴァルはそれを避ける。 その顔には笑みさえ浮かんでいた。 が、 「……何処を見ている」 背後から聞こえる静かなまでに低い声にクヴァルの笑みは消えた。 気付いたときにはもう遅かった。 クヴァルの背中から胸にクラトスの剣が突き刺さる。 「ロイド!」 クラトスの言葉にロイドは頷くと、ロイドは躊躇うことなくクヴァルを貫いた。 「ぐわぁ! ば、馬鹿な……後一歩であったものを……!?」 ロイドとクラトスが剣を引き抜くと、クヴァルはその場に倒れ込んだ。 床はクヴァルの血で赤く染まっていく。 「……やったぞ。母さんの仇を倒したんだ!!」 「ロイド!」 すると、転送装置からジーニアスたちの姿が現れ、ロイドたちの許へと駆け寄ってきた。 「ショコラの居場所がわかってよ!」 「本当か!」 ロイドの言葉にリフィルは頷く。 「ええ。ショコラは今、イセリアの牧場にいるわ」 「……イセリア……か」 そうロイドが呟き、クヴァルから背を向けたそのときだった。 「! ロイド、危ない!!」 コレットの叫び声が聞こえたときには遅かった。 ロイドを狙ったクヴァルの杖の円刃が、ロイドに抱きつくような形で盾となったコレットの背中を切り裂いた。 「コレット……!?」 「ロイド……大丈夫?」 「あ……あぁ。……だけど、おまえ……!?」 「私なら、大丈夫」 言葉を失うロイドに対して、コレットは優しく微笑む。 コレットを傷付けたクヴァルは、その場から逃げようとしたが、突然現れてしいなによって道を塞がれる。 「……ゆるさねぇ!」 ロイドは再び剣を抜き、クヴァルを斬る。 それに続いてクラトスも斬った。 「クラトス……この劣悪種があっ……!」 「その劣悪種の痛み……。存分に味わえ!」 剣を突き立て、それを横へと動かした。 奇声が響き、それが止むとクヴァルは動かなくなった。 クラトスは剣をついた血を振るい落とすと鞘へと収めた。 「……地獄の業火でな!!」 「コレット! あなた、この傷……!?」 コレットの背中に傷を見て、リフィルは息を呑んだ。 「コレット、しっかり!」 「コレット! 傷は……」 ルークとロイドがすぐにコレットの下へと駆け寄ると、コレットは微笑んだ。 「心配してくれて、ありがとう。でも、本当に大丈夫だから。なんかね、痛くないんだ。エヘヘ、おかしいよね?」 「無事なわけないよ! 先生! アンタ癒しの術、使えるんだろ!?」 コレットの言葉を聞いたしいなは、堪らず声を上げた。 「ええ……。だけど……!!」 しいなの言葉にリフィルは頷いたが戸惑った。 自分の癒しの術では、コレットの傷を完治できそうになかったからだ。 「……ルーク?」 すると、ルークが突然大きく息を吸った。 「女神の慈悲たる癒しの旋律。 リュオ レィ クロア リュオ ツェ レィ ヴァ ツェ レィ」 ルークの口から美しい旋律が流れ出すと、足元の譜陣が出現した。 その譜陣はとても大きく、ロイドたち全員を余裕で入るほどのものだった。 譜陣から優しい光が広がる。 その光がロイドたちの身体を癒していき、コレットの背中の傷も見る見るうちに消えていった。 譜陣が消える頃にはコレットの背中の傷は完治していた。 「うっ……」 すると、ルークは小さく呻くと、体勢を崩した。 「「「「「「ルーク!!」」」」」」 それを一番ルークの近くにいたクラトスが支えた。 「あ……ありがとう、クラトス。もう、大丈夫だから……」 ルークは、クラトスの手から離れて自力で立とうとした。 「だが……」 「本当に大丈夫だよ。ちょっと、眩暈がしただけだから」 戸惑うクラトスにルークは、笑いかけた。 それを見たクラトスは、ルークを解放するしかなかった。 「ルーク。大丈夫?」 心配そうな瞳でコレットは、ルークを見つめた。 それにルークは、笑って答えた。 「大丈夫だよ。コレットの傷に比べたら、こんな眩暈なんて全然大したことなんてないよ」 「あっ……」 ルークの言葉を聞いたこれとは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにそれは哀しそうなものへと変わり俯いた。 「! どうしたの、コレット!? まだ、傷が痛むの? やっぱり、俺の譜歌じゃダメだったのかな?」 そんなコレットの姿を見たルークは慌てふためいた。 「ち、違うの! ……ルークは何も悪くないの。悪いのは……私だから」 コレットは泣きそうな顔でそう言い、胸元にある赤い宝石に手を添えた。 「? それって……どういうこと……?」 コレットの言っている意味がわからず、ルークは首を傾げた。 すると、ロイドは何かを決心したような瞳でコレットを見つめた。 「……コレット。俺はもう我慢できないからな」 ロイドは、そう静かに言った。 「みんな、聞いてくれ! コレットには今、感覚がないんだ」 「! ロイド、ダメ!!」 コレットの声をロイドは無視した。 「な、何? どういうこと?」 「コレットは天使に近づいている。でも、眠ることもできない。暑さも寒さも痛みも何も感じられない。涙だって出なくなって……! 天使になるって、人間じゃなくなるってことだったんだよ!!」 「そっ、そんな……!?」 ロイドに真実を聞かされたルークは、言葉を失った。 「ロイド、いいよ。私なら、大丈夫だから……」 コレットは、ロイドに微笑みかけた。 「それより、今はこの牧場を何とかしないと。そうでしょ、ロイド?」 「……ああ、わかった」 ロイドは、コレットから視線を外した。 「わかったから、もう俺を庇ったりするな。神子のおまえが死んだら、世界は再生できなくなるんだからな」 「……うん。ロイドがそう言うなら、そうする」 ロイドの言葉にコレットは少し躊躇ったが、小さく頷いた。 それを聞いたロイドは、リフィルへと視線を向けた。 「先生、前みたいにここを爆破できないかな?」 「……やってみるわ」 ロイドの頼みにリフィルは少し考え込むと、文字盤を操作し始めた。 「……過激だね。まぁ、それが一番だろうけど」 「セット完了したわ。みんな、急いで脱出するわよ」 文字盤を操作し終わったりフィルは、ルークたちへと振り返るとそう言った。 こうして、ルークたちは牧場を後にした。 Symphonyシリーズ第2章第13話でした!! ルーク、ついにロイドと合流!! そして、ここでも譜歌が大活躍ww そのせいでルークの体調がぁ!!(°□°;) あぁ!ついにコレットの真実を知ってしまったよ!! これからどうなるだろう? H.19 11/29 次へ |