俺がやってきたシルヴァラントという世界。
俺たちの世界とは全く異なる世界。
でも、同じなんだ。
この世界にも、人は生きている。
世界が違っても、それだけは決して変わらないのだ。






〜Symphony The World〜








「……たらい……だよな?」
「たらいだ」
「たらい、か」
「……たらい?」
「うわぁ、面白そう!」

ソダ島遊覧船乗り場へとやってきたルークたちは、口々にそう言った。
彼らの目の前に広がる海に浮かぶそれは、何処からどう見てもたらいだった。

「わっ、私はここで待ってます。さぁ、行ってらっしゃい」

少し、引き攣ったような声でリフィルは、一歩下がりながらそう言った。

「? どうしたんですか? リフィルさん?」

その様子を見てルークは、不思議そうに首を傾げた。

「別に……何でもありません。よくって、私は乗りません」
「面白そうですよ! 乗りましょうよ、先生!!」
「そうだよ、姉さん!!」

リフィルの言葉を聞いたコレットとジーニアスはそう言った。
そして、ジーニアスがリフィルの腕を掴んだそのときだった。

「……きゃぁ!」
「「「「「!?」」」」」

リフィルの発した声にルークたちは、目を丸くした。

「………きゃぁ?」
「きゃぁ楽しみ、と言いかけただけです!」

ロイドがそう聞き返すと、リフィルは頬を赤らめてそう言った。

「……リフィルさん。もしかして、水が……怖いんですか?」
「そっ、そんな訳ありません! 決して!!」

ルークの問いにリフィルは、ムキになってそう言った。

(……やっぱり、怖いんだ;)
「……意地っ張りだなぁ」

横でロイドが呆れたように呟いたのが聞こえた。

「で、どうするか? 見たところ、たらいは三つしかないし……」

ロイドの言うとおり、今遊覧船乗り場にあるたらいは三つしかなかった。
全員で六人だから、二人三組に分かれるのが妥当であると思う。

「私、ルークと乗りたい♪」
「あっ! ズルイよ、コレット!! 僕もルークと乗りたいのに!!」
「そうだぞ! 俺だって……」

と、何故かコレット、ジーニアス、ロイドが言い合いを始めてしまった。
この光景、何処かで見たことがあるなぁ、とルークは思った。

「ねぇ! ルークは誰と乗りたいの?」
「えっ? ええっ!!?」

そんなことを考えているときに突然ジーニアスに話を振られ、ルークは焦った。

(何か、この状況も見たことあるなぁ;)
「お、俺は誰とでも……?」

ルークがそう言いかけると、誰かに裾を引っ張られたような気がした。
ルークは、ゆっくりと視線を動かすと、そこには何かを訴えるような眼差しでルークを見つめるリフィルの姿があった。
「…………俺、リフィルさんと乗るね;」
「「え〜〜〜っ!?」」
「なんで、姉さんな訳!?」

ルークの言葉にロイドたちは、思わず叫ぶ。

「お黙りなさい! 誰と乗ったって同じです! さっさと、行きますよ!!」

それをリフィルが怒鳴って一喝した。
それをルークは、ただ苦笑して見ていた。

















「…………あの……リフィルさん。大丈夫……ですか?」

それぞれ分かれてたらいに乗ってソダ島を目指して漕ぎ出してから数分が経過した。
慣れない作業にルークは、悪戦苦闘しながら漕ぐ。
あっちの世界では、音機関を利用した船があったのでこんな苦労はしなかった。
それを考えると少しあっちの世界が、懐かしく感じてしまう。

「え、ええ……大丈夫よ」

ルークの問いにリフィルは、そう答えた。
だが、リフィルの顔色は言葉とは裏腹に真っ青になっていた。

(……本当に水が怖いんだ)

リフィルのそんな姿を見たルークは、改めてそれを実感した。
そのとき、波でたらいが大きく揺れた。

「きゃぁ!!」
「うわぁ! リフィルさん!?」

それに驚いたりフィルは、ルークの胸へと飛び込んだ。
ルークは、それにどうしたらいいのかわからず、ただ慌てた。
無理矢理、自分からリフィルは離すのもどうも気が引けて、リフィルの気が落ち着くまでルークは待つことにした。
だが、いくら待ってもその気配が一向に感じられない。

(と、とにかく、ソダ島へ急ごう!!)

焦る気持ちを抑えながら、必死にルークはソダ島へ向かって漕いだのだった。

















ソダ島に着く頃には、リフィルの気持ちも落ち着き、俺から離れてくれた。
それから顔を赤らめずっと謝っていた。
俺は大丈夫だって言ったのに、何度も。
そして、先にソダ島に辿り着いたロイドたちと無事に合流し、水の封印へと繋がる扉を探し始めた。

「これ、何とかって石版じゃないか?」

すると、ロイドがある方向を指差しそう言った。
その方向へ視線を向けると、何かの紋章の刻まれた石版があった。

「神託の石版だな」

それを見たクラトスが、少し呆れたようにそう言った。
ロイドは、それに対して「うるさいなぁ」と、恥ずかしそうに小さく呟いていた。

「そうか! ここが水の封印なのだな!! 素晴らしい!!!」
「!?」

突然、豹変したりフィルにルークは驚いた。
先程までいたお淑やかな女性の姿はそこにはなく、男口調へと変わり、目をキラキラと輝かせる子供のような姿があった。
ルークは、これに似た者を知っている。
(ガイだ!)

ガイも譜業(ふごう)を目の前にすると、子供のようにはしゃぐ。
今のリフィルは、まさにそんな状態だった。

「お、驚いたよな? まぁ、俺も初めて、こんな先生を見たときも驚いたしなぁ;」

そんなことを考えていると、ロイドが苦笑してそう言った。

「……いや、ちょっと驚いただけだよ; 俺、リフィルさんにそっくりな人知ってるから、そっちに驚いた」
「えっ? そうなのか? ルークの世界にも先生みたいな奴がいるのか?」
「う、うん。俺たちの世界には音素(フォニム)を原動力とした機械があって、それを音機関って言うだけど、それを見ると……ね」

ルークはロイドの問いに苦笑した。

「さぁ! コレットよ!! 早く石版に手を!!」

ロイドとそんな話をしている間もリフィルは、興奮したようにそう叫んだ。

「あっ、はい!」

それにコレットは、素直に頷いて石版に近づく。

「あれでね。神子(みこ)かどうか識別するんだよ」

不思議そうにルークがそれを見ていたら、ジーニアスがそう教えてくれた。

「じゃぁ、いきま〜す♪ せ〜の!」

掛け声と共にコレットは、石版に手をのせた。
すると、ルークたちから離れた向こう側の岩が突然崩れ、穴が開いた。
そして、そこから今いる場所へと続く光の橋が出現した。

「……すごい」

その光景を見たルークは、思わずそう呟いた。

「くくく……。早速、調査に向かおう!」
「調査じゃなぇだろ。調査じゃ……;」

リフィルの言葉にロイドは、呆れたようにそう言った。
そして、ルークたちは水の封印の元へと向かった。
そのとき、光の橋を渡るときに下のほうでノイシュが誰かに唸っている姿が見えたのだった。
























Symphonyシリーズ第2章第1話でした!!
今回は、リフィルの登場率が高めになってしまいましたww
だって、どうしても遺跡モードが書きたかったし、水に怖がるリフィルの書きたかったので;
遺跡モードのリフィルは絶対ガイに似ていると思うww譜業と戯れるガイにww
この二人、話し合いそうだなぁ。後、ジェイドとかもww


H.19 6/27



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