「ありがとうございます! あなたのおかげでお母さんは助かりました!」

少女は涙を浮かべながら、ルークにお礼を言った。

「いっ、いや、俺は何もしてないよ! それに、ロープを切ったのは……」

ルークは、そう言って視線をコレットへと向ける。

「あそこにいるコレットっていう彼女なんだ」

ずっと、ディザイアンの話を聞いていたルークは、とても我慢が出来なかった。
その時、コレットがチャクラムというものを投げたのが目に入り、それと同時に絞首台へと飛び出しただけなのだ。

「ううん、私はただロープを切っただけだよ」

それにコレットは笑って答えた。
少女はコレットの姿を捉えると、驚いたように目を見開く。

「……もしかして、……神子(みこ)様ですか?」
「はい!」

コレットの返事に再び広場は歓喜の声が上がった。






〜Symphony The World〜








神子(みこ)様に助けていただけるなんて……。きっとこれは女神マーテル様のお導きだわ」
神子(みこ)様、本当にありがとうございます。お母さんまで殺されたら私……」
「お母さんまでって!?」

少女の言葉にジーニアスは驚きの声を出す。

「私の夫は、パルマコスタの義勇軍に参加してディザイアンと戦い、戦死したのです。その上、母……この子、ショコラの祖母も、何処かの牧場に連行されて……」

カカオは、ショコラという少女が言った意味を説明してくれた。

「奴らは悪魔よ! もし、お婆ちゃんまで死んでたら……私、ディザイアンを絶対に許さない! 絶対にこの手で復讐してやるんだから! どうせ、マーテル様は眠ったままで何もしてくれないもの!!」

ショコラは怒りに任せて叫んだ。

「ショコラ! 神子(みこ)様の前でなんてことを……」

カカオの言葉にショコラはハッとした表情になる。

「あっ! ……ごっ、ごめんなさい……」

「申し訳ありません。この子はお婆ちゃん子だったものですから……」

それにコレットは優しく微笑んで首を振った。

「私がきっと、この旅を成功させて、ディザイアンを封印します。そうしたらきっとお婆さんも帰ってくるわ。……だから、祈ってください」

コレットの力強い瞳にショコラは頷いた。
すると、

「これは、何事だ!」

数人の男達を引き連れた男が広場に入ってきた。
男の傍には、ブロンドの髪をツインテールにした小さな少女がいた。

「ドア総督! あの方々が神子(みこ)様とその御一行様です!」

誰かがルークたちのことをその男に紹介した。
どうやら、この男がドア総督らしい。
ドアはコレットの胸元にある赤い宝石を見ると、おおと声を上げ、頭を深々と下げた。

「それはまさしく、《クルシスの輝石》。神子(みこ)様、よくぞこのパルマコスタにおいでくださいました。≪救いの塔≫の出現に続いて、神子(みこ)様のご来訪……民も勇気付けられております。このようなところで立ち話など恐れ多いこと。ともかく総督府へおいでください」

ドアは、コレットにそう言うと、頭を上げ、人々に顔を向けた。

「皆! よくぞディザイアンに屈しなかった! 神子(みこ)様がこうしてパルマコスタを訪れてくれたからには、いずれ世界再生の日も近いだろう! それまでの辛抱だ!」

ドアの言葉に人々はさらに活気付く。

「さぁ、どうぞこちらへ。……おいで、キリア」
「はい、お父様」

ドアは娘キリアと手を繋ぎ歩き出す。
ルークたちは、それに続き歩き出す。
だが、ロイドはふと、カカオとショコラの姿が目に入り、足を止める。
あの二人とは今日初めて会ったはずなのに、何処かで会った気がする。

「ロイド、何してるのさ? 置いてっちゃうよ?」
「あ、ああ……」

ジーニアスの言葉にロイドは頷き、ロイドは仲間のところへと走り出した。

















パルマコスタの人間牧場

「マグニス様! 起きてください!!」

あれからずっと、気を失ったままのマグニスに部下のディザイアンは、必死に呼びかけていた。

「ぐっ……」

それが聞こえたのか、マグニスはやっと目を覚ました。

「マグニス様! ……ご無事で何よりです!」

それを見たディザイアンは安堵の声を上げた。

「俺は……」

マグニスはパルマコスタでのことを思い出す。
見せしめの為に公開処刑を執り行おうとして誰かに邪魔された。
あの、夕焼けのような赤い長髪の少年に……。
それを思い出したマグニスはあのとき感じた怒りが再び込み上げてきた。

「あ、あの……マグニス様……」

それを感じ取ったのか、ディザイアンは恐る恐る話し掛ける。

「なんだ!!」
「ひっ! あ、あの、パルマコスタの広場で赤い服来た少年、手配ナンバー0074のロイド・アーヴィングを見たという情報が……」
「何っ!?」
「し、しかも、そこには神子(みこ)の姿も見られまして、ロイド・アーヴィングはそのお供をしています。そして、マグニス様を倒して赤髪の少年もそうです!」

マグニスの形相に少し怯えながら、言葉を紡いだ。

「…………そうか。ふふ……」

部下の言葉にマグニスは不敵な笑みを浮かべた。

「マグニス様?」
「すぐにパルマコスタに戻るぞ! あの小僧……ロイド・アーヴィングと神子(みこ)と共に俺が倒してくれるわ!!」

マグニスはそう吠えて、パルマコスタへと向かった。
























Symphony第1章第5話でした!!
ルークがロープを切ったと思ったのに、本当はコレットでしたww
いいよね、二人とも息がピッタリでwwそして、マグニスはバカです。
あんたなんかが、ルークを倒せると思ってるの!!
次回、ルークの天然さにロイドたちビックリの巻き♪(なんだそりゃ!!)


H.19 3/4



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