一人の女性の叫びが一本の樹に影響を与えた。
それによって、本来交わることのない世界が、今交わる……。






〜Symphony The World〜








「うっ……」

ルークが目を覚ましたときと同じ頃、アッシュも目を覚ました。

「ここは……?」

アッシュは辺りを見渡した。
先程までいたはずのチーグルの森とは明らかに場所が違う。
辺りは平地だった。
よく見る景色だが、何かが違っていた。
強いて言えば、空気が違う。

(ここは、俺がいた世界とは違うのか?)

あのとき、赤い光がルークを包み込んだ。
それによって、俺は違う世界に飛ばされたのか?

(そういえば、ルークはどうなったんだ?)
辺りを見回しても、ルークの姿は何処にもなかった。
あの美しい夕焼けのような赤は何処にも……。
どうやら、飛ばされたときに、はぐれてしまったようだ。
俺がもっとルークをしっかり捕まえておけば、離れてしまうことはなかっただろう。
すると、アッシュの視線に街が入ってきた。
この世界での王都的な場所だろうか。
ここからかなりの距離があるのによく見える。

(とりあえず、あそこにいくか……)

ここで、突っ立っていても何も変わらない。
ルークを探さなければ……。
あれくらいの都市だったら、何か情報が得られるかもしれない。
アッシュはそう思い、その都市へと向かって歩き出した。
















王都メルトキオ

「あ〜あ。なんか暇だなぁ〜」

その都市のある屋敷からその声は聞こえてきた。
彼は赤毛の長髪に青い瞳をしていた。

「こうも退屈だと、いやになるな〜」

何か面白いことはないだろうか?

「しゃあねぇ、外に出て女の子たちとでも遊ぶか〜」

彼はそう言うと、自分の部屋から出て屋敷の外へと歩き出した。
















「きゃあ♪ ゼロス様よ〜!!」
「はぁ〜い♪ ハニーたち、元気かい?」

屋敷を出ると早速女の子たちを見つけた彼、ゼロスは笑顔でそう言った。

「きゃあ! ゼロス様に会えたので、今とても幸せですわ〜」

ゼロスの言葉に彼女たちは本当に嬉しそうに言った。

「……ところで、なんか下が騒がしいようだけど、なんかあったのか?」

一体なんだろうか?

「ええ。さっき、ちょっと見たんですけど、とってもいい男が歩いてたんですよ♪」

彼女たちの一人がうっとりとした表情でそう言った。

「いい男? 俺様よりもか?」
「それは、ゼロス様のいい男ですけど……」

彼女たちの反応にゼロスはムッとした表情を浮かべた。

「へぇ〜。そんなにいい男なら、俺様もその顔を拝ませてもらいますかな」
「ち、ちょっと、待ってください。ゼロス様!」

彼女たちの言葉を無視して、ゼロスは下の階へと向かった。
















下の階に行くにつれてその声は大きくなっていった。

(一体どんな奴なんだ?)

世界中の女性のハートは、俺様のものなのに!
そんなことを考えているうちにその人物がいる階に着いたようだ。

「ねぇ、私たちと遊びましょうよ〜」
「……うぜぇ」

黄色い声の中に一つだけ男の声が聞こえてきた。

「きゃぁ〜。照れちゃって、可愛い♪」
「人の話を聞け!!」

その彼の声が響き渡った。

「ダメだよ。女の子には優しくしないと」

ゼロスがそう言うと、彼を取り囲んでいた彼女たちが一斉にゼロスを見た。

「きゃあ! ゼロス様よ///」
「やぁ、ハニーたち。今日も素敵だぜ☆」

ゼロスがそう言うと再び黄色い悲鳴が上がった。
そして、彼もゼロスへと視線を向けた。
彼は自分とは違う、燃えるような紅の長髪に翡翠の瞳をしていた。
顔立ちは男の自分でも綺麗だと思うくらい、整った顔立ちだ。

「……誰だ? おまえ」

彼は眉間に皺を寄せて自分にそう言った。

「俺様のこと知らないのかよ〜。俺様もまだまだ未熟者だな〜」
「…………」

ゼロスの反応に彼は呆れたのか、ゼロスに背を向け別の方向へと歩き出した。

「お、おい; 何処に行くんだよ」
「うるさい。俺はおまえを相手している――」
「きゃあ!!」

彼の言葉は、女性の悲鳴で遮られた。
その声が聞こえたほうへ視線を向けると、そこには巨大な魔物の姿があった。
あんな巨大な魔物を見たのは初めてだ。

「仕方ねぇな。俺様の華麗な剣術で……」

ゼロスがそう言いながら剣を抜くと、その横を誰かが通り抜けた。

(なに……?)

ゼロスは後ろを見ると、そこにいたはずの彼の姿はなかった。
そして――。

「――――双牙斬!」

彼の声が響き渡った。
彼は立った一撃で、あの巨大な魔物を倒した。

「ふん……屑が」

彼はそう言い放つと剣についた血を振るい落とし、剣を鞘へと収めた。
そして、何事もなかったかのように再び歩き出す。

「おい、何処に行くんだよ?」

ゼロスの横を通った彼にゼロスは言った。
すると、彼は足を止めた。

「……おまえには関係ない」
「何処か行く宛なんてあるのかよ。……異世界から来たあんたに」
「!?」

ゼロスが言った言葉に彼は驚いたような表情を浮かべた。

「……おまえ何者だ? 何故、俺が異世界から来たとわかる?」
「俺様の名前は、ゼロス。ゼロス・ワイルダーだ。この『テセアラ』の神子(みこ)だぜ」
「『テセアラ』?」
「この世界の名前だよ。あと、さっきの質問だ、あんたから微かにこの世界とは違うものを感じたから」

ゼロスは彼に問いにそう答えた。

「あんたさぁ、俺様の護衛しない?」
「はぁ?」
「俺様、あんたみたいに腕の立つやつ探してたんだよ。だから……」
「断る!!」

彼はキッパリとそう言った。

「俺はおまえの相手をしている暇なんてないと言ったはずだ! 俺は人を捜してるんだ!!」
「だったら、俺様が協力してやるよ。大体、この世界のことをよく知らないのに、どうやって人探しするつもりなんだよ?」
「そ、それは……」

ゼロスの言葉に彼は言葉につまった。

「俺様があんたの協力をする代わりに、あんたは俺様の護衛をする。悪い話じゃないぜ?」

彼は少し考えた後、溜息をついた。

「……わかった」
「決まりだな。……ところで、あんたの名前は?」

まだ、彼の名前を聞いていなかったことに気付いたゼロスは彼に効いた。

「……アッシュだ」














こうして、アッシュとゼロスは共に行動することになった。
自分の半身が別の世界にいるとは知らずに……。
























Symphonyシリーズ第1章第2話でした!!
ハイ、と言うわけでアッシュはゼロスのいる世界テセアラに落ちちゃいました!!
絶対、ゼロスとアッシュのコンビはおもしろいと思いますww
でも、一応ルーク中心で書いているのでアッシュは出番が少ないかも;
アッシュが好きな人ごめんなさい!!


H.19 2/3



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