「そろそろ、行きましょう」

翌日の早朝、リフィルは静かにそう言った。
昨日の話し合いに結果、ルークはパルマコスタに置いて行くことが決まった。
別室で寝ているルークに気付かれないように、ロイドたちは静かに宿屋を出た。






〜Symphony The World〜








「ん? なんだ?」

宿屋を出ると、馬小屋の方がどうも騒がしかった。
そこにノイシュを置いていたロイドは、まさかと思い馬小屋を覗いた。

「ははっ、やめろよ。くすぐったいってば!」

そこには、馬より一回り小さくしたほどの大きさの、巨大な耳を除けば犬か狐といったような獣と美しい夕焼けのような赤い長髪の少年の姿があった。

「ル、ルーク!?」

ロイドの声を聞いて、コレットたちも馬小屋へと入ってきた。

「あっ! ロイド、みんな。おはよう!!」

ロイドたちに気付いたルークは、満面の笑みを浮かべてそう言った。

「おはよう、ルーク♪」

それに対して、コレットはニッコリ微笑んで答えた。

「あ、おはよう。……って、そうじゃなくて! なんで、起きてるんだよ! 寝てないとダメじゃねぇか!」
「えっ? 俺はもう大丈夫だよ? それより、さっさとショコラを助けに行こうよ?」
「駄目よ、ルーク。あなたはここに残りなさい」

リフィルは、ハッキリとそう言った。
「でも、俺もマグニスに狙われています。もし、マグニスが俺一人パルマコスタにいる知ったら、ここを襲ってくるかもしれません。そうしたら、その街の人たちを危険にさらすことになります」
「そっ、それは、そうかもしれないけど……」

さすがのリフィルのそこまで考えていなかったようだ。
体調の優れないルークのことばかり考えていた。
「俺はみんなの足手まといにはなりたくない。それに……」
――――……ここにいると、馬鹿な発言でイライラさせられる。
――――変わってしまいましたね。記憶を失ってからのあなたは、まるで別人ですわ……。
――――イオン様! こんなサイテーな奴はほっといたほうがいいです!
――――ルーク。……あまり幻滅させないでくれ。
――――少しはいいところもあるって思ったのに……。私が馬鹿だった……。
一人になると思い出してしまう。
アクゼリュスのことを……。
仲間から見放され、一人になってしまったことを。
その時間は、とても短かったが、とても長く感じた。
もう、このままずっと一人ではないかと思ってしまう。
「……お願いです。俺も連れてってください」
「…………」

その言葉にリフィルは、何も言えなくなった。
自分へと向けられる翡翠の瞳は、とても強い意思が込められている。
なのに、何故だろう。
その瞳は、とても哀しそうにも見えるのだ。

「……いいだろう」
「「「「!?」」」」

クラトスが発した言葉にロイドたちは驚いた。

「……なんだ、その反応は?」

ロイドたちの反応を見たクラトスは怪訝そうに眉を顰めた。

「だっ、だって、クラトスが一番反対しそうだからさ」

この中で一番反対しそうなクラトスが承諾したのだ。
驚かないほうがおかしい。

「足手まといにならないと言っているなら連れてってもいいだろう」
「……ありがとう、クラトス!」

クラトスの言葉を聞いてルークは嬉しくなり、笑みを浮かべた。

「! べっ、別に、お礼を言われるほどのものではない」

ルークの笑みを見たクラトスは、思わず目を逸らした。

「……わかったわ。でも、絶対無理はしてはいけなくてよ」
「はい!」
「じゃあ、さっさとパルマコスタの人間牧場に向かおうぜ!」
「うん!!」

















「あれ? あれは……」

パルマコスタの入り口に行くと、そこには多くの義勇兵がいた。
そこには、ドアとクララの姿もあった。

「クララさん!」

ルークはクララの姿を見ると、彼女の元へと駆け寄った。

「お身体のほうは大丈夫ですか? 何かおかしいことはないですか?」
「大丈夫よ。もう、何処も痛くないし、おかしなところもないわ」

ルークの言葉にクララは、優しくそう言った。

「よかった……」

その様子を見たルークは安堵した。

「……ごめんなさいね」
「えっ?」

ルークは、何故クララが謝るのかがわからず、キョトンとした表情を浮かべた。

「あのとき、あなたのことを殴ってしまって。……本当に、ごめんなさい」
「俺は、大丈夫です。あれくらいだったら、慣れてますし」

クララの暗い表情を吹き飛ばそうと、ルークは笑みを浮かべたそう言った。
その笑みを見て、クララの表情は少し和らいだ。

「……ルークさん、これを持っていきなさい」

すると、ドアはルークに一枚のカードのようなものを手渡した。

「? これは?」
「これはパルマコスタの人間牧場の裏口の鍵だ。認証番号は3341だ。ディザイアンは正面入り口に兵を集中させているはずだ」

ドアは今までにないくらい優しく、穏やかにそう言った。

「……妻を、クララを助けてくれてありがとう。どうか、ショコラも助けてたやってくれ。ルークさんたちを誘き出す為に利用された彼女を」
「はい! 必ず」

ドアの言葉にルークは力強く頷いた。
そして、ルークたちはパルマコスタの人間牧場を目指して、街を出た。
























Symphony第1章第11話でした!!
ノイシュと戯れるルーク。最高です!!
絶対、ルークは動物には懐かれると思うしwwコリンも懐くと思うww
一番最初に承諾してくれたのがロイドじゃなく、クラトスだったところがまたいいですよねwwww


H.19 4/17



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